政治の究極目標は「将来の世代を含めた一人ひとりの生命などを守ること」であると考えています。そしてその目的を達成するためには「ミクロ」「マクロ」、「過去」「未来」、「メリット(プラス)」「デメリット(マイナス)」などという複数の視点によって目の前の深刻な問題を相対化することが必要だと考えています。
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編集・発行:http://www.jchiba.net/、基本方針 筆者:千葉 潤、ご意見など:jchiba@tokyo.email.ne.jp 基本方針
<「止める政治」か「つくる政治」か>
「先の参議院議員通常選挙は、与党にとって大変厳しい結果となりました。今回示された国民の皆さまの思いや怒りに対し、これまで十分応えきれていなかったこと、政治と行政に対する不信を招いたことについての深い反省の上に立って、今後、国政に当たっていきたいと考えております。『ここまで厳しい民意が示されたのだから退陣すべき』とのご意見もあることは十分承知をしております。しかし、人口減少や地球規模の競争の激化、学校や家庭における教育力の低下、日本を取り巻く安全保障の環境変化、こうした時代の大きな変化に直面しているわが国が豊かな国民生活と明るい未来を手にするためには、経済・行財政の構造改革はもとより、教育再生や安全保障体制の再構築を含め、戦後長きに渡り続いてきた諸制度を原点にさかのぼって大胆に見直す改革、すなわち、『戦後レジームからの脱却』がどうしても必要です。わが国の将来のため、子どもたちのために、この改革を止めてはならない。私はこの一心で続投を決意しました。初心に戻り、厳しい選挙結果を踏まえた反省と、国民のために闘うとの覚悟を持って、引き続き、改革に取り組むことにより、国民の皆さまに対する責任を果たしてまいりたいと思います」
「しかし、改革にはどうしても痛みが伴います。これまでも必要な対策を講じることに努めてまいりましたが、まだまだ十分ではないと思います。今後、改革を進める一方、改革の影の部分にきちんと光を当てる、優しさと温もりを感じられる政策に全力で取り組んでまいります」
「このたび新しい国創りを再スタートさせるため内閣改造を行いました。極めて遺憾なことではありますが、補助金の不正受給の問題で閣僚の一人が辞任しました。今後こうしたことが二度と起きないよう、内閣として補助金などの厳正な執行に万全を期してまいります。自由民主党及び公明党の連立政権の下、『政策実行内閣』として一丸となり、地に足のついた政策を着実に進めてまいります。将来に渡り国民の皆さまが安心して暮らせるよう、堂々と政策論を展開し、野党の皆様とも建設的な議論を深め、一つ一つ丁寧に答えを出していくことに最善を尽くします」
「世界の平和と安定なくして日本の安全と繁栄はありません。米国同時多発テロで24名もの日本人の尊い命が奪われたことを忘れてはなりません。テロとの闘いは続いています。テロ特措法に基づく海上自衛隊の活動は、諸外国が団結して行っている海上阻止活動の不可欠な基盤となっており、国際社会から高い評価を受けています。灼熱のインド洋で黙々と勤務に従事する自衛隊員こそ世界から期待される日本の国際貢献の姿です。ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して本当にいいのでしょうか。引き続き活動が継続できるよう是非ともご理解いただきたいと思います」
「北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題の解決に向け、国際社会との連携を一層強化してまいります。すべての拉致被害者が帰国を果たすまで鉄の意志で取り組んでまいります」
「本日、私は自らの信条、思うところを率直に述べさせていただきました。これからも国民の皆さまからのご意見を十分受け止め、政策をしっかりと説明しながら国政に邁進してまいります。私の目指す政治とは、我が国を取り巻く厳しい環境変化に対応しながら、日本が本来持っていて、今も生活の中に息づいている、自律の精神、他者への思いやり、温かさといった価値を守り、伸ばしていくこと。そして、国民一人ひとりが、日々の生活において、真の豊かさ、潤いを実感できるようにすること。すなわち、『美しい国創り』を進めていこうとするものであります。50年後、100年後のあるべき日本の姿を見据え、原点を決して忘れることなく、全身全霊をかけて内閣総理大臣の職責を果たしていくことをお誓い申し上げます。国民の皆さま並びに議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。ありがとうございました」
(以上、2007/9/10の衆院本会議などでの安倍首相の所信表明演説から。全文:http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/09/10syosin.html)
唐突に辞意表明(2007/9/12)して宙に浮いてしまった安倍首相の所信表明演説(2007/9/10)からの引用である。代表質問されることなく「宙に浮いてしまった所信表明演説」に筆者があえて「代表質問」するならば、「いくら力強く『すなわち』と言っても『戦後レジームからの脱却』や『美しい国』について理解が深まる人たちの数は増えていかないと思うが、総理はいったいどう考えているのか」などと質問してみたいものである。
「本日、総理の職を辞するべきと決意を致しました。7月の29日、参議院の選挙が…、結果が出たわけでありますが、大変厳しい結果でございました。しかし厳しい結果を受けて、この改革を止めてはならない、また、戦後レジームからの脱却…、その方向性を変えてはならないと…、その決意で続投を決意をしたわけであります。ま、今日(こんにち)まで全力で取り組んできたところであります。そしてまた先般、シドニーにおきまして、テロとの戦い、国際社会から期待されているこの活動を、そして高い評価をされているこの活動を中断することがあってはならない、何としても継続をしていかなければならない、このように申し上げました。国際社会への貢献、これは私が申し上げている主張する外交の中核でございます。この政策は何としてもやり遂げていく責任が私にはある。この思いの中で、私は…、中断しないために全力を尽くしていく、職を賭していく、とお話を致しました。そして私は職に決してしがみつくものでもないと…、申し上げたわけであります。そしてそのためにはあらゆる努力をしなければいけない。環境づくりについても、努力をしなければいけない。一身を投げ打つ覚悟で、全力で、努力すべきだと考えてまいりました。ま、本日、小沢党首(筆者注:小沢一郎民主党代表)に党首会談を申し入れ、私の率直な思いと考えを伝えようと…。残念ながら…、党首会談については、ま、実質的に…、断られてしまったわけであります。先般、小沢代表は、民意を受けていないと…、ま、このような批判もしたわけでございますが、大変残念でございました。今後、このテロとの戦いを継続をさせる上において私はどうすべきか…。むしろこれは…、局面を転換しなければならない…。新たな…、総理の下で…、テロとの戦いを継続をしていく、それを目指すべきではないだろうか。来(きた)る国連総会にも新しい総理が行くことがむしろ局面を変えていくためには、ま、いいのではないか…。また、改革を進めていく…、ま、その決意で続投し、そして内閣改造を行ったわけでございますが…。今の状況でなかなか…、国民の支持、信頼の上において、力強く政策を前に進めていくことは困難な状況であると。ここは自らが…、けじめをつけることによって局面を打開をしなければいけないと…。そう判断するに至ったわけでございます。先程、党の五役に対しまして、私の考え…、決意をお伝えを致しました。そしてこの上は…、政治の空白を生まないように、なるべく早く次の総裁を決めてもらいたいと、本日からその作業に入ってもらいたいと指示を致しました。私と致しましても、私自身の決断が先に延びることによってですね…、国会において混乱が大きくなると…。その判断から決断はなるべく早く行わなければならないと、ま、そう判断したところでございます。私からは以上であります」
「(なぜ参院選大敗直後ではなく今なのか、などに)ま、参議院選挙、ま、大変厳しい選挙の結果でありました。しかし、あの中でですね、やはり反省すべきは反省しながら、ま、しかし今進めている、この改革を止めてはならないとの思いで…、そして私が進めている国づくりは何としても進めなければならないとの思いで、続投を決意し、そして内閣の改造を行い、所信も思うところを述べさせていただきました。ま、しかし…、テロとの戦いを継続をしていくということは極めて重要なことであり、そしてそれはまた私の…、約束でもありますし、国際公約でもございます。それを果たしていく上においては、むしろここは私が辞することによって、局面を転換をした方が、その方が…、むしろ良いだろうと判断を致しました」
「(自ら国際公約をして辞めるのは無責任ではないか、に)あのー、もちろん私もそのために全力を尽くさなければならないと考えておりました。その中において、むしろこの約束を果たしていく上においてですね、どういう環境をつくっていくかということも考えていたわけでありまして、その環境をつくる上においては、私が職を辞した方が、これはそうした環境ができるのではないだろうかと。私がいることによってですね、残念ながら…、成立することにマイナスになっているという判断を致しました」
「(所信表明後に辞意表明した最大の理由と決断のタイミングは、などに)あの、ま、総理としては常に職責を果たしていかなければいけないということは日々考えているわけでございます。そして私が…。ここは…、職を辞することによって局面を変えていかなければいけないと判断を致しましたのはですね…、そこは…、きょう…、ま、残念ながら、党首会談も実現しないという状況の中でですね、私がお約束をしたことができないと。むしろ障害になって…、私が残ることが障害になっていると、こう判断したからであります」
「(政策を実行するのに困難な状況に至った原因などをどう考えるか、反省点などは、に)もちろん反省点は多々ございます。(改造)前の内閣、また新しい内閣においてですね…、安倍内閣として、国民の信頼を得ることができなかった。これは私の責任であろうと思います。それを原動力に政策を前に進めていくということが残念ながらできなかったということになる…」
「(党首会談なしでもテロとの戦いを継続するための法案成立は衆院の2/3で再び可決すれば可能だったのではないか、辞意表明の本当の心境は、などに)ま、私は、いわばこのテロとの戦いにおいては中断されてもならないと、こう考えて先般シドニーで『職を賭す』という話をしたわけでございます。新法で継続を図っていくという考え方も党にあるわけでありますが、ま、日程的な関係で、ま、新法ですと、この…、一時的に中断という可能性は高いわけでございまして、そうであるならば、ま、事実上そういう状況が出てくるわけでありまして…、そう判断せざるを得ないと考えました。そこでそのときに判断するよりも、むしろ今、判断した方が…、党が新たなスタートをする上においては、むしろその方がいいだろうと。ま、国民の皆さまに対しましてもですね、混乱を招かない上においては、なるべく早い判断の方が良かったと…、決断がいいだろうというふうに判断を致しました」
(以上、2007/9/12午後(14:00-)の安倍晋三首相が辞意表明した緊急記者会見から。参照:http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/09/12press.html)
「(安倍首相は辞意表明で小沢代表に党首会談を断られたことを理由に挙げていたが、に)(前略)…党首会談の申し入れについては…、(民主党の山岡賢次)国対委員長からその報告を聞きました。きょう昼前に自民党の大島(理森)国対委員長から申し入れがあったそうです。それで…、ま、党首会談そのものは、いつでも結構ですよ、と。ただし今日(こんにち)のこの状況の中だから…、総理はいったいどういうお考えで、どういう…、党首会談でお話をしたいのか、もう少し…、(首相)官邸と話をして、きちんとした申し入れをしてもらいたいと…、そういう趣旨をお話ししたら、いや、ごあいさつだと…、いうことだったそうでございます。今この時点でごあいさつの党首会談を…、やるっちゅうのは、それはちょっとという…、首をかしげるような提案だったそうであります。まあ、それならば、クエスチョンタイムで、党首討論という方法もあるんじゃないでしょうかと。これは国民の皆さんによく分かりやすい…、いうことも申し上げたそうです。そしたらそれも含めて、じゃああの、官邸で総理にもう一度お伺いをしてまた参りますという話だったそうでありまして…、まあ、それを大島国対委員長、自民党国対委員長がどう官邸に伝えたか、あるいは、どう総理が判断したかは…、分かりませんけれども、国対委員長から受けた報告はそういうことでありまして、私はきょうのこの申し入れ以前に一度も私も我が党も党首会談の申し入れは受けておりませんし、従ってイエスもノーも言う機会もなかったというのが事実であります…(後略)」(2007/9/12の安倍首相辞意表明後の民主党の小沢一郎代表の記者会見(15:00頃)から)
「(前略)…総理が記者会見でたった一つ自分の口から言われなかった問題というのは、やはり健康状態だろうと思います。私どもも心配しておりましたし…、常に安倍総理は、自分の健康は、総理大臣の、非常にその…、厳しい日程、精神的な重圧に耐えられるかどうかということを吟味しながら今まで進んでこられたと私は思います。特に東南アジアに旅行された以降…、の健康状態というのは…、ご本人はなかなか自ら告白されませんけども、大変厳しいものがあって、これを誰にも言わないでじっと耐えてきたという部分も、ぜひ…、長い目ではご理解を頂きたいと思っております…(後略)」(2007/9/12の安倍首相辞意表明後の与謝野馨官房長官の記者会見から)
「(安倍首相の辞意表明について問われて)うーん。正直申し上げてこのタイミングはいかがなものかと申し上げました。それが率直なところです…(後略)」「(前略)…先程の与謝野官房長官の記者会見のいろいろ理由うちの一つに健康が挙がっておりましたんで、あの、それは、私は薄々感じてはおったところでもありますので、あの…、大きな理由かなと…、一つだったろうなとは思います」「(いつ総理の辞意を知ったのか、に)あれ…、(自民党)役員会ですから、月曜日(9/10)の日の午後でしたかね。役員会終わった後だったと思います。それが…、最初だと。(そのときの説明はテロ特措法などか、に)それが大きな理由でしたね。はい。で、私どもとしてはテロ特というのはまだまだこれからの話なんでということも申し上げたと記憶しています。(役員会後の説明は幹事長を含めた何人かにということか、に)役員会が終わった後の説明を聞いたのは私一人だと思います。あのときは。月曜日の日ですね。はい。(そのときどう答えたのか、などに)あの、タイミングっていうものは、今の状況ではないのではないかというお話を申し上げました…(後略)」(2007/9/12の安倍首相辞意表明後の自民党の麻生太郎幹事長の記者会見から)
「こんにちは、安倍晋三です。内閣総理大臣の職を辞することを決意いたしました。7月29日の参議院選挙の結果は、大変厳しいものでしたが、改革を止めてはいけない、戦後レジームからの脱却の方向性を変えてはならない、との思いから続投の決意をし、これまで全力で取り組んできました…(中略)…決断が先に延びることで困難が大きくなる、決断はなるべく早く行わなければならない、と判断いたしました。無責任と言われるかもしれません。しかし、国家のため、国民のみなさんのためには、私は、今、身を引くことが最善だと判断しました。約1年間、メルマガの読者のみなさん、国民のみなさん、ありがとうございました。この間にいただいた、みなさんの忌憚のないご意見、心温まる激励を、私は決して忘れません。私は官邸を去りますが、改革、そしてテロとの闘いは続きます。これからも、みなさんのご支援をお願いします。(晋)」(安倍内閣メールマガジン第46号(2007/09/13)から。参照:http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2007/0913.html)
安倍首相の後継の自民党総裁を決める総裁選には、麻生太郎幹事長と福田康夫元官房長官が立候補した(→2007/9/14告示。9/15に立候補の受付。9/23投・開票)。新しい自民党総裁が選出され、国会で新しい首相が指名され、そして新しい内閣が発足するまでは「自然休会」が続くことになるのだろう。
いずれにしてもこれからの国会審議で「つくる政治」になる可能性が出てくるのは、与党側が自分たちが圧倒的多数を占める衆院ではなく、自分たちが少数派である参院の方で「見せ場」をつくろうとした場合、あるいは、野党側が自分たちが多数を占める参院ではなく、自分たちが少数派である衆院の方を「主戦場」にしようとした場合だけだろう。
政府・与党側は、自分たちの思い通りになる衆院では全く「見せ場」をつくらず、自分たちの思い通りにはならない参院に多くの与党議員たちを引き連れて乗り込み、断固反対の野党議員たちにも「重要法案」の重要性が理解できるように分かりやすく徹底的に訴えようとする。逆に野党側は、自分たちだけで好き勝手なことができる参院を「主戦場」にはせず、野党提出法案をスピード審議して自分たちが少数派である衆院にすぐに持ち込み、反対している与党議員たちにも法案の意義が理解できるように分かりやすく訴えようとする。そういう状況になるのならばもしかすると「つくる政治」の分かりやすい具体例が生まれることになるのかもしれない。どうやって衆院から参院(あるいは参院から衆院)に多くの議員たちを連れて行くかについてのアイディアは何種類もあるはずである。
筆者の言う「止める政治」とは何か。「何かの流れを止める政治的な動き」とか「思考を止める政治的な動き」とは別の表現を使えば、「何かの悪いところ、ダメなところ、弱いところを探し出してそこを狙い撃ちにする政治」と説明することができるかもしれない。
それでは筆者の言う「つくる政治」とは何か。「創意工夫の政治」とはあえて別の表現を使えば、「何かの良いところを探し出してそこをより良くしようとする政治」と説明することができるのかもしれない。もちろん悪いところなどを全く見ようともしないというわけではないが、基本的には良いところを探し出してそこをより良くしようとするということになる。そう考えれば、政治も子育てや教育と同じようなものだと考えることができるのかもしれない。
繰り返しになるが、民主主義とは創造することだと筆者は考えている。民主主義というものは基本的には何かを止めたり、壊したり、あるいはでっち上げたりするものではないと筆者は考えている。これから日本の政治で主に見られるのは「止める政治」になるのだろうか、それとも「つくる政治」になるのだろうか。またそのときにはどのような「空気」が生み出されるのか。いわゆる「世論」のような「つかみどころのない非常に移り気な空気」は確かに大事だが、「世論」は「空気」以上のものでも「空気」以下のものでもないということをあえて最後に強調してまたしばらく沈黙を守ることにしよう。
今は安倍首相が「レームダック」「死に体」のままでいるうちにとりあえずこの「長文」を書き上げることができてホッとしている。また長い沈黙になるかもしれない。
正しい「要約」と正しい「比較」のススメ(→2006年以前へ) (ほぼ同一内容をメールマガジン版「永田町ワイドショー」として配信済)
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