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 最近の日本の政治情勢について(2005/10/18更新)

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 政治の究極目標は「将来の世代を含めた一人ひとりの生命などを守ること」であると考えています。そしてその目的を達成するためには「ミクロ」「マクロ」、「過去」「未来」、「メリット(プラス)」「デメリット(マイナス)」などという複数の視点によって目の前の深刻な問題を相対化することが必要だと考えています。

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事実はテレビや新聞よりも奇なり -「小泉新党」から政局が見えてくる- (2005/10/18)

  
▽事実はテレビや新聞よりも奇なり(2005/10/18) (7/8) 「こんにちは前原誠司」で良かったのか

<民主党の「人材不足」は深刻>
 
 今回の総選挙で大敗して議員数だけではなく、新人数も大幅に減少させて一足早く「少子高齢化社会」の到来を実感している民主党は実は深刻な「人材不足」に陥っているのである。前原代表が「戦(闘)う民主党」などと言ってみても実は「戦力」になる「政治家として優秀な新しい人材」はあまり見当たらないのである。「デマゴーク(demagog)」(→扇動政治家)らによって間違った方向に教育されてきたということもあるのだろうが、とにかくここ数年の民主党は多くの新人が誕生しても「政治家として優秀な新しい人材」はあまり育ってこなかったのである。現有の「戦力」のままならば民主党は「小泉新党」という「戦略上の要衝」の攻防戦でかなり不利な状況に追い込まれる可能性が高いと筆者は見ている。
 
 「最小限の金融機能は、全国民に対して提供されるのが…、これが国民の権利であると。国民の権利というのは裏を返せば政府の義務ということであります。ですから、そこについてですね、全国民に対して最低限の金融サービスは提供するんだということを決めた以上はですね、万が一、本当にですね、長短金利策が逆転するようなことがあって、赤字になるようなことがあったら、これは最終的にはですね、税金を投入せざるを得ないということは私たちもですね、否定はしていないんです」(2005/10/7の衆院郵政民営化特別委での民主党の永田寿康代議士(2000年初当選、比例南関東ブロック選出)による自民党の片山さつき代議士(2005年初当選、静岡7区選出)の質問に対する答弁から)
 
 この「問題発言」にひっくり返りそうになった民主党議員は本当にいなかったのだろうか。隣に座って聞かされていたら思わず目を丸く大きくしてしまいそうな「問題発言」である。権利と義務の問題は実はなかなか簡単には説明できないものなのだが、あえて大雑把に説明することにする。まず権利と義務は表裏一体(→参考:2005/8/26号)だから、「国民の権利」を裏返すと普通は「国民の義務」になる。また仮に「国民の権利」を裏返すと「政府の義務」になっているとしても、「政府の義務」だから法律にするのではなく、法律があるから「政府の義務」になっているはずである。要するに因果関係が逆転しているのである。日本のような法治国家で「国民の権利」と「政府の義務」をあえて結び付けるためには法律などの根拠が必要なのである。
 
 さらに言えば、「国民の権利」ならば保障するのは「政府の義務」であるという発想自体が「小さな政府」を目指している民主党議員としては非常に不適切である。もしかしたら「最低限の金融サービス」ではなく「最低限の医療サービス」だったらあまり問題はなかったのかもしれない。だが、もしも「国民の権利」ならばすべて「政府の義務」であるということになってしまうのならば「大きな政府」どころか、「非常に大きな政府」を通り越して「官僚統制国家」になってしまうだろう。この「問題発言」にひっくり返りそうになった民主党議員は本当にいなかったのだろうか。
 
 「民の力を最大限に生かす構造改革。それも一つの方向性です。そしてもう一つ、小さな政府とセットならば大きな市民社会です。市民社会とは、ボランティア活動、地域社会の活動、地域社会の相互扶助、あるいはNPO活動、そういった市民の力で、民間の自発的な市民の活動で、政府が小さくなった穴を埋めることができると思います…(中略)…小さくなった政府を補うために大きな市民社会が必要です。市民の自発的な活動、NPOの活動…、そういった活動をしやすい環境を整備していく。それも自民党の役割の一つです」(2005/8/30の自民党の山内康一代議士(2005年初当選、神奈川9区選出)の川崎市多摩区での街頭演説から)。
 
 「公務員制度でもう一つ申し上げたいのは…(中略)…民でできることは民に、そして地方でできることは地方に、あるいは、あまりよく言われないんですが、NPOとかNGOにできることは…、行政がやるんじゃなくて、公の仕事をNPO(非営利組織)、NGO(非政府組織)にやらせるということは私はあっていいと思うんですね。そういうことをやっていく上で私は相当、自分の意志で公務員を辞める方もおられるけれども、やはり移ってもらうということも必要になってくると思うんですね。その意味では私は公務員制度改革の一つの柱として、私が代表にならせていただく前に申し上げたのは、労働三権を付与して、身分保障をはずすと。公務員の。それぐらいのことをやらなければ、まさに、その小さな…。『より』、『より』ですよ。『より』無駄のない行政機構の改革っていうものはできないじゃないかと私は思うんですが、総理の見解を聞かせてください」(2005/9/30の衆院予算委での前原誠司民主党代表(1993年初当選)の質問から)
 
 おそらく前原代表は「小泉新党」という「戦略上の要衝」の攻防戦の重要性とそこで必要とされる「戦力」や「戦術」を正しく理解することができるのだろう。だが、民主党には「戦力」になる「政治家として優秀な新しい人材」がなかなか見当たらないのである。「戦(闘)う民主党」などとは言っていても、民主党の「人材不足」はかなり深刻な状態なのである。
 
<「こんにちは前原誠司」で良かったのか>
 
 日本の民主主義をレベルアップするための「自動安定化装置」の導入を視野に入れる場合には、「自民党が『公募・予備選制度』を導入するかどうか」の次に、「民主党が対案提出・改革競争路線を定着させることができるかどうか」が問題になってくる。民主党にとって対案提出・改革競争路線の定着は、政権交代の可能性を維持するための「自動安定化装置」のようなものにもなっているのである。野党の民主党が不利な条件下でもあえて与党と同じ「土俵」で戦い、そして「与党に厳しく批判させてもまだ残るもの」だけを国民に示すことによって自分たちの真の実力を説得力のある形で示すことができるはずである。そうすれば「絵に描いた餅」のような主張、胡散臭い論外な主張などと自分たちの主張を明確に差別化できるという大きなメリットが出てくるはずである。そして言うまでもなくもしも民主党が与党になれば対案提出・改革競争路線は自然休止状態になって日常的に政権運営を行うことになるが、やはり野党に転落すればまた対案提出・改革競争路線を意識せざるを得なくなるのである。そういう意味で対案提出・改革競争路線は民主党にとって「自動安定化装置」のようなものになっているのである。
 
 民主党に対案提出・改革競争路線を定着させることができるかどうかという問題は指導者に大きく依存している。そしてそのことは前原代表が今回の総選挙での民主党の敗因を正しく認識し、賢明な国民を重視したような岡田前代表の正しかった部分を間違いなく継承した上で「古い民主党」と決別し、総選挙で見えてきた「壁」を打ち破って新たに支持を拡大することができるかどうかという問題とも非常に密接に関連しているのである。「さようなら菅直人」は間違いなかったとしても、本当に「こんにちは前原誠司」で良かったのかという問題をいよいよ検討していくことになる。
 
 「(労働組合との関係は見直していくのか、に)結論から言うと見直していかざるを得ないと思います。特にやはり官公労との関係ですね。もちろん我々は支援していただいた方々に対しては、これは礼を尽くして感謝しなければいけませんが、支援をしてくださる方と考えが合わなかったときにどういう態度を取るかということは、これはもう政党というか、政治家の、私は…、存在に関わる問題だと思うんですね。そこを妥協してまで支援してくださる方におもねるということがあっては、政治家の自殺であるし、政党の自殺であると私は思っておりまして…、そこらへんの意見対立、もちろん議論はしますけれども…、合わなかったらその点についてはやはり…、決別をするというか、そのところについてはやはり袂を分かつぐらいの決意が私は必要だと思います」(前原民主党代表が2005/9/18放送のNHK「日曜討論」で)、「われわれ政治家っていうのは、支援者の方々、神様みたいなもんですね。票入れてくださる方々は神様…。ですから労働組合の方々も我々は大事にしなきゃいけません。しかし、応援しているから言うことを全部聞くのかということになると、全くそうではない。支援者であっても考え方の違う人とはやはり、それは私は政治信条に則ってできませんということはびっしり言わなければいけないし…。そういった凛とした姿勢っていうのは必要なんだだろうと思いますね」(前原民主党代表が2005/9/18放送のフジテレビ「報道2001」で)
 
 「私は今回の郵政の問題で民主党にやはり失望した…、もちろん中にいる人間ですけれども、岡田(克也前代表)さんに申し上げたのは、審議拒否は古いと。100%なくすと私は言っておりません。これは国民がどう見ても与党の横暴でね、数の横暴でこれは物理的抵抗すべきだという国民の世論があれば私はそれは封印はしませんが、やはり審議拒否じゃなく国会でしっかり議論する。(今度は審議拒否はしない、に)基本的にはしない」(前原民主党代表が2005/9/18放送のテレビ朝日「サンデープロジェクト」で)、「今回の郵政の国会対応で一つ私が失望したことがあったのは審議拒否だったんですね。なんで審議拒否をするんだということを私は岡田(克也前)代表には申し上げたんですね。しかも議論に入る前に審議拒否をしたわけですね。まあ確かにそれは言い分はありますよ。我々、もちろん…(中略)…国会の中で議論してくれというのが我々に与えられた使命で…、特にこれから2/3以上の与党になるわけですから、質問時間もかなり減るかもしれない。そういう中にあって審議拒否っていうのは自ら首を絞めるような話だと思いますので…。私は審議拒否は全くしないとは言っていません。この間の記者会見で全くしないとは言っていないけれども、やはりおかしいと。2/3の横暴の中でこれはどうしても…。国民も了解してくれて、与党の横暴を止めるためにはやむを得ないとき、そういうものにやはり限るべきなんだろうと思いますね」(前原民主党代表が2005/9/18放送のフジテレビ「報道2001」で)、
 
 「(党内がゴタゴタすることはないのか、に)ないように努力したいと思いますし、岡田(克也)前代表がとにかく自分の遺言だということをおっしゃっていただいたんですが、自分たちで選んだリーダーは仮に意見が違っても議論してまとまったことは支えていく、そういうカルチャーをつくっていくべきだということをおっしゃっていまして…。ぜひ、本当にこの…、私を支えるんではなくて、民主党がダメになればですね、日本の民主主義の危機だと。つまりは与党しか選ぶところがないということになるわけですから。そういう大所高所の、まあ、歴史観っていますか、使命感を共に共有しながらやっていきたいというふうに思います。そうすれば私はまとまりが自ずと出てくると思っております」(前原民主党代表が2005/9/18放送のNHK「日曜討論」で)
 
 「質問に先立ち2つの点で国民の皆さま方にお詫びを申し上げなければなりません。1点は我が党に所属をしていた小林憲司前衆議院議員が覚せい剤の所持・使用で逮捕されたことであります。国会議員以前、国民の一人として絶対にあってはならない反社会的行為であり、言語道断…。党として即刻除籍し、比例名簿から即刻削除をいたしました。政治への信頼を著しく傷つけたことに対し、国民の皆様方に深くお詫び申し上げます。もう1点は民主党が今回の総選挙で大きく議席を減らしたことであります。政権交代を期待し、2480万人もの方々が民主党の小選挙区候補者に投票してくださったにもかかわらず期待にお応えすることができませんでした。今回の結果を真摯に受け止め、強烈な反省に立って必ずや次の総選挙で政権交代を実現するために新体制での反転攻勢をお誓いいたします」「民主党は国民全体の利益になることであれば政府・与党に協力します。反対のための反対はしません。しかし政府・与党の間違った政策、問題先送り、看板倒れの改革に対しては厳しく対峙してまいります。主要な政策課題については、常に対案を示し、常に自らが政権与党であればどういう対応をするか、そういう視点に立って真の改革を競い合いたいと思います」「道路公団、年金、郵政、そして三位一体と検証してきましたが、小泉改革なるものがいかに看板倒れで内容を伴わないものかは明らかです。良い改革は止めてはなりませんが、悪い改革は止めなければなりません。我が党は今後、重要政策課題では対案を出してまいります。ぜひ良い改革の中身でお互い競い合おうじゃありませんか。霞ヶ関という既得権益の殻を破れない自民党政治に真の改革を行えるはずがありません。政権交代でなければ日本は変わらない。今度こそ真の改革の御旗を取り戻し、すべては国民のための政治を行うために全身全霊を傾けて、政権交代に向けて努力を続けることを国民の皆様方にお約束をし、答弁が不十分であれば再質問させていただくことを申し上げ、私の質問を終わります」(以上、2005/9/28の衆院本会議での前原民主党代表の代表質問から)
 
 「審議拒否」などを行う「古い民主党」と決別し、民主党に対案提出・改革競争路線を定着させることができるかどうかという問題では、前原代表の最初の一歩は「とりあえず合格点」である。だが、最終的な評価はもうしばらく実績を積み重ねた段階になるまでは保留しておくことにする。また前原代表は岡田前代表が「政権準備政党」である民主党の新戦術として「発明」した再質問(→参考:2005/6/27号)についてもその意味を正しく理解した上で継承しているのである。
 
 「今回の総選挙ですべての課題について負託を受けたと考えるかとのお尋ねでございます。今回の総選挙の結果については、郵政民営化、進めよ、賛成であるという…、審判を国民が下したと思います。同時に、私が総理大臣に就任以来進めてきた、金融、税制、規制、歳出に渡る広範囲な構造改革の方針とその成果について広く国民の支持をいただいたものと受け止めております(→議場内拍手)。私はこの国民の声を厳粛に受け止め、責任を持って郵政民営化を実現すると共に、今後、構造改革路線をしっかりとした軌道に乗せていきたいと考えております。民主党は…、大幅に議席を減らしましたけども、日本をあきらめずに、前原新代表の下で、政権交代ができる政党として今後発展されることを期待しております」「自民党と公明党の協力のあり方についてでございますが、私は総理大臣に就任以来、自民党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って構造改革を進めてまいりました。今回の総選挙においても自民党と公明党は協力してまいりましたが、各選挙区において、個別の候補者が具体的にどのような協力方法を取るかについては、それぞれの事情を勘案しながら、各候補者が適切に判断して対応してきたものと考えております。今後とも、自民党、公明党が互いにその政策について尊重しながら、連立関係を維持し、引き続き構造改革を断行していく考えであります」(以上、2005/9/28の衆院本会議での前原民主党代表の代表質問への小泉首相の答弁(再質問前)から)
 
 前原代表の「2点の質問、そして1つの意見を申し上げたいと思います。1つについては、今回の国民投票的な解散・総選挙について、これからの諸施策について白紙委任を受けたのではないかという質問をいたしました。しかし、総理の答弁は今までの改革が評価されて選挙に勝ったんだということで、これからの内容について国民がどう判断したかについては全く答弁がありませんでした…(中略)…もう1つの質問は、自公の選挙協力についてであります。それぞれの選挙区で判断をするということは…、明確にお答えをいただきたいのは、自民党の公認候補が公明党に投票依頼してもいいということを認めたということかどうか。これはもう一度ハッキリ答弁をしてもらいたい。これを認めたということになれば、議会制民主主義はガタガタに壊れますよ、皆さん。そんなことを国民が許すはずがない。もし自民党公認候補が他党へ、公明党へ投票してくれということがいいのであれば明確にお答えをいただきたいと思います。最後に意見だけ申し上げて私の再質問を終わりたいと思いますが、天下り規制というものが小泉さんは甘すぎる。改革、改革ということを言うんであれば、こういったことをしっかりと国民の目線で閉めていくのが本当の改革ではありませんか…(後略)」に
 
 小泉首相は「(筆者注:最初に水をゆっくりと飲んでから)前原議員の再質問に対し再答弁いたします。今回の総選挙ですべての課題について負託を受けたと考えるかというお尋ねに対する再質問だと思うんであります。郵政民営化が最大の争点であります。しかしそれと同時に国民の皆さんはこの4年余り、私が政権を担当してきたその実績、そして構造改革路線を進めてきた方針、それも十分勘案して判断を下されたと思っております(→議場内拍手)。この国民の声、支持を厳粛に受け止めまして、今後、郵政民営化のみならず、構造改革路線をしっかりと軌道に乗せていきたいと考えております…(中略)…また自民党と公明党の協力のあり方につきましては、各選挙区において、個別の候補者が具体的にどのような協力方法を取るかについては、それぞれの事情を勘案しながら、各候補者が判断すべき問題であります。既に自民党と公明党は連立政権を組んでおり、お互いの信頼関係を醸成しながら、今まで安定した政権運営をやってまいりました。そういうことを踏まえて、それぞれが互いに協力して、切磋琢磨をして、連立関係を維持して、引き続き構造改革を進めていくことが連立政権の責務であると考えております」などと答弁している(以上、2005/9/28の衆院本会議での前原民主党代表の代表質問への小泉首相の答弁から)
 
 そして残るのは、前原代表が今回の総選挙での民主党の敗因を正しく認識して総選挙で見えてきた「壁」を打ち破って新たに支持を拡大することができるかどうかという問題になる。「壁」を打ち破って新たに支持を拡大することができるかどうかという問題は、当面は筆者が仮定した「小泉新党」の攻防戦の重要性を正しく理解し、そのために必要な「戦術」と「戦力」を用意して実際に攻防戦で自民党に勝てるのかという問題に置き換えて考えることができるだろう。ここであえて「過去」から前原代表の興味深い事実を引っ張り出して考えてみることにする。
 
 「皆さんご承知のように、国会議員の役割というのは、とにかく、自分が出ている地方自治体に対して予算を持って帰る、そして、自分がこの橋を造ったとか、自分がこの道路を造ったとか、あるいは、この下水道工事にこれだけ予算をつけたとか、それが活動のメインになるわけですね。で、何とかそういう構造を打破して、地方のことは地方でやってもらおう、そして国のことはですね、私が思ってますのは、外交・防衛、マクロ経済、そして、教育に限定する。そういう制度改革を、是非実現したい。そういうことで、当初は私は政治家になるかどうか確証なしに、強い意志なしに、松下政経塾というところに入りました」「自民党も、規制緩和、地方分権というお題目は唱えているんです。しかしながら、自らが、応援をして貰(もら)ってお金を貰っているその利権の巣を、自ら断ち切るということは出来ないわけですね。しようとしない。また、行政改革にしたって、官僚出身の議員が多すぎる。そして、出る時に、自分が出ている省庁の規制というふうなものがある。認可というものがある業界から応援して貰っている訳です。お金も貰う、票も貰う。そういう出で立ちのところが、行政改革とか、規制緩和とかいうことが、頭でやらなきゃいけないということが、分かっていてもなかなか出来ない。だからこそ、組織も何もない、政治キャリアもない、こういう日本新党みたいなところが大きくなることが本当に日本の政治を良くすることだということを、日本新党から出たときには本気で思っていましたし、今でも、日本新党の旗というものが、大分イメージが悪くなってきましたけれども、求めていたもの、或いは、方向性としては間違っていなかったと私は思っています」(以上、「衆議院議員 前原誠司氏に聞く−立候補の動機と後援会組織の実態− 聞き手 大嶽秀夫」、「レヴァイアサン」17号(1995/10/15発行)、p84-90 、木鐸社から)
 
 日本の政治の基本的な問題点が約10年前からほとんど何も変わっていないということが多くの読者にもよく分かるのではないかと思う。筆者が仮定する「小泉新党」をめぐる攻防戦の重要性を正しく理解し、そのために必要な「戦術」と「戦力」を用意して実際に攻防戦で自民党に勝てるのかという問題は、前原誠司という政治家が日本新党の挫折という経験から何を学び、その後に政治家として何を積み重ねてきたのかということがすべて問われる問題なのである。そして前原代表を支える民主党議員の中には前原代表とほとんど同じ経験と責任を持っている議員が何人もいるのである。前原代表が「新しい民主党」に旧日本新党出身者を多く起用していることが単なる偶然ではないのならば賢明な選択だと言えるのかもしれない。
 
<国民は鳩山由紀夫という政治家を信じることができるのか>
 
 さて、前原代表が「新しい民主党」の幹事長として「中古品」とも陰口をたたかれている鳩山由紀夫幹事長(元代表)をあえて起用したことが正しい選択であったかどうかについても触れておくことにする。そのことを読者がそれぞれの立場から判断する際に役立つように筆者はいくつかの「事実」を時間軸上に並べて示すことにする。
 
 「私が日本人であることに誇りを覚えるのは、皆さま方が私たちの提示した具体的な一つひとつの政策に対して理解を示していただいたからでございます」「(森善朗首相(当時)は)関心のない方には投票に行かないでくれ、『寝てて欲しい』と発言をされた。まさに本音じゃないでしょうか。その組織型選挙だと、もう自分たちの得票の数は分かった。あとは4割の方は行かないでもらいたい。それが彼の本音であったと思う。でも、時の総理として…、というよりも政治家として、国民の審判を受けるものにとってみれば、絶対にその発言は、冗談であっても許してはならない発言でございます」「たとえ、たとえ、民主党に入れてくださらなくとも、皆さま方が投票に行っていただくことを期待をします。なぜならそれが民主主義の原点と思うからでございます。一人ひとりが投票に行っていただいて、例えば、現政権、森・自公保政権をどのように評価をしているか、すべての方々の意見を聞かせていただきたいのであります。民主党に対してどれだけの期待があるのか。また、民主党に対して一人ひとりがどんなお考えなのかをぜひ私どもに聞かせていただきたいのでございます。だから『ぜひ民主党に投票を』とお願いしたいのでありますが、当然それは民主党の代表として期待を申し上げますが、少なくとも投票所に行っていただきたい。そのことは国会議員として、政治家として、政治家を志すものとして、必ず主張しなければならないことだと私は思います。そうでなければ民主国家が成り立つはずがない。私たちは、自民党が決してあなた方を信頼しないのであれば、私たちは、徹底的に皆さま方を信頼申し上げる政権をつくる覚悟があります」「皆さま方の、例えば、教育の話題を聞かせていただきたい。皆さま方の、それこそご家庭の中で、おじいちゃん、おばあちゃん、介護の問題でお悩みがあれば、そのお悩みを逐一聞かせていただきたい。いろんな喜びもあれば、喜びも併せて聞かせていただきたい。私たちも政治家の持っているすべての情報を皆さま方に提供いたします…(中略)…皆さま方と私たちの間との信頼関係が情報の共有の中で生まれてくると確信をするからでございます。私たちはそのような政治を通じて皆さま方との信頼関係の回復を図りながら、友愛精神を基調とする民主主義国家を今、日本の政治にしっかりと植えつけていかなければならないと本気で思っています。そうでなければ『苦い薬』を皆さまが飲んでいただけるはずがない。もし政治家があなたを信じないで、いいかげんな厳しいことを言っても、あなた方が私たちを信じるはずがない」「それぞれの小選挙区で激しく戦っている、デットヒートを演じている小選挙区の民主党の候補に投票していただきたい。そのことによって、あなたの、あなたの未来が見えてくるんです。決して民主党のためではありません。鳩山のためでもありません。皆さま方の未来のために、鳩山に、あなた方の未来を託していただきたい」(以上、2000/6/24の渋谷ハチ公前での鳩山由紀夫代表(当時)の総選挙の最終街頭演説から)
 
 「私は、民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の所信に対し質問をするとともに、私の所信を表明し、私たちが政権を担うためこれまで積み上げてきた構造改革の姿を明らかにしていきたいと考えます…(中略)…言うまでもなく、この国民を包む暗い空気をつくり出した責任の多くは、あなたが総裁となった自由民主党そのものにあります。だからこそ、いや、今度こそ、あなたの力であなたの所属するあの古い自民党を変えることができるのではないかと、あなたに期待が寄せられているのでしょう。私たち民主党が党是として主張してきた日本の構造改革にあなたがうそ偽りなく取り組むというのであれば、あなたの内閣と真摯に議論を積み重ねていき、改革のスピードを競い合うことはやぶさかではありません。しかし、あなたが目前に迫った参議院選挙のための単なる偽善的改革者であるとすれば、私は、徹底的にそのことを白日のもとにさらす決意でございます…(後略)」(2001/5/9の鳩山民主党代表(当時)の小泉首相の所信表明演説に対する代表質問から)
 
 小泉首相の「私は、民主党の鳩山さんよりも、どの野党よりも、一番本格的なことをやろうとしているのですよ。なぜ、特殊法人、公益法人ばかり言って郵政3事業のことを言わないんですか。30万人の役人に振り回されて、今まで本格的に手をつけられなかったんじゃないですか。選挙で応援してくれる、いまだに郵政民営化を言えないでしょう、皆さん。私だけですよ、言っているのは。だから、これは、特殊法人を本格的に改革するんだったら、公益法人を本格的に見直すんだったらば、郵政3事業という本丸に手を入れない限りできないんだと言っていたのは私じゃないですか。いまだにはっきり言えないでしょう。私みたいにハッキリ言えない。どの野党も言えないじゃないですか。民間にできることは民間に任せよう、財政投融資制度から特殊法人についても、今、石原(伸晃)行革担当大臣にハッキリ言っています、徹底的に、中途半端なことはしないでくれと。思い切りやってくれと。民間にできることは全部民間に任せると。その趣旨で野党が賛成するかどうか、私は注目していますよ。私は選挙で応援してくれるから黙っちゃう、そんな態度とりませんから…(中略)…特殊法人改革が大事であり、公益法人の見直しが大事だと言っているんですから。私は他の誰よりも、この問題について今まで熱心に語りかけていたし、本格的にやるということを御理解いただきたい。誰も言えないことを言ってきた。ようやく、小泉内閣だからこういう議論がオープンに議論されて、そして、皆さんが真剣にこの問題に取り組もうという機運が出てきたんだと思います」に、鳩山代表(当時)は「天下りのことに関しては一切お触れになりませんでした。なさる気がないのかなと残念に思います。郵政の事業の民営化の問題に関しては、一言申し上げれば、小泉総理の立場と私の立場は何ら変わっていません。全然変わっていません。そこだけはご理解ください」(小泉首相と鳩山民主党代表(当時)による2001/6/20の党首討論(国家基本政策委合同審査会)から)
 
 「私たち民主党は、国民のためになることならば、小泉総理、いくら与党側が阻害勢力になっても、私どもが改革に対して、国民のためになるなら応援したい、そんな思いも持っていることを最後に申し上げ、私の討論といたします」(鳩山民主党代表(当時)が2001/11/21の党首討論(国家基本政策委合同審査会)で)
 
 鳩山代表(当時)の「小泉首相、久しぶりの党首討論であります。最初に申し上げます。小泉総理、初心に戻りなさい。その一言でございます。小泉内閣が発足をしてほぼ1年、国民の支持率が半減以下になりました。何も国民が変わったわけじゃありません。私どもが変わったわけではありません。小泉さん、あなたが変わったんです。今まで国民の視線を受けていたはず、あるいは国民の方を向いて仕事をされていたはずの総理がいつの間にか永田町ばかり向いている。総理、是非初心に戻りなさい」に、小泉首相は「私は就任以来全く変わっておりません。初心を忘れておりません。支持率が変わろうが、私の改革への決意は全く変わっておりません(→与党、拍手)。現に今まで自由民主党が反対してきたようなことも、今や私の内閣の方針に自由民主党は賛成してくれているじゃありませんか。それは私の改革への決意を支持してくれて、実際の具体的な政策も、当時、皆さん方が自民党は抵抗するであろう、反対するであろうと思われたことも、一部には反対がありましたけれども、最終的には私の方針に従って構造改革への必要性を感じて支持してくれているんです。一部の野党の皆さんは、私と自民党が対立したりけんかしたりしてくれることを期待しているようでありますが、むしろ自由民主党の方が私の改革に、異論はあるけれども、最終的に、議論をしていくうちに、やはり小泉内閣の示す構造改革を支持していこうというふうに…、むしろ私が変わったんじゃなくて自民党が変わってきているんですよ。それをご理解いただきたい。私は決して初心を忘れておりませんし、これからも就任以来の改革方針を堅持していきます」(小泉首相と鳩山民主党代表(当時)による2002/4/10の党首討論(国家基本政策委合同審査会)から)
 
 鳩山代表(当時)の「(前略)…族議員と一緒に行動しなければ政権もたない。だから、族議員と一緒に発言がどんどん族化してしまっている。こういう状況で、国民の皆さんはどう考えているのか。やっぱり支持率がどんどんどんどん下がってしまっているでしょう。国民はよく見抜いているんです。私は、その意味で、政治一新、もし総理に改革の志がわずかでも残っているんであれば政治一新をされなきゃならない。その政治一新とは何か。解散ですよ、解散。解散・総選挙を行って、国民の皆さんにもう1回信頼を回復させる、そういう政治を作り出すこと、それができなければ駄目だ。解散すらできないんですか、総理。解散をする勇気を今こそ持つべきじゃありませんか」に、小泉首相は「野党だから私のことを批判するのは仕方ありませんけれども、わずか1年足らずでこれほど着実に改革進んでいるというのはありませんよ…(中略)…私は、鳩山代表は政権の延命を考えていると言っていましたけれども、それは鳩山さんは考えているかもしれませんが、私はそんなことちっとも考えておりません。いかに改革を実現するかなんです。現に鳩山代表を始め、今まで、昨年からもう、正月危機が来る…、1月危機、2月危機、3月危機、3月には小泉政権行き詰まって投げ出す、金融不安が起こると言っていたじゃないですか。現在どうですか。私は今までなし得なかったような、自民党も与党も反対して当然と思われたような改革が今、自民党も変わってきている、賛成して進んでいるんですよ…(中略)…族議員政治も排除している。変わったのは支持率だけれども、私の改革の決意、全く変わっていないんです。解散、解散と言いますけれども、私は実績を残して、時期が来れば国民に信を問う。それは私の判断なんです。全般の状況を考えて私はしかるべきときに国民に信を問う。それは私が判断します」(小泉首相と鳩山民主党代表(当時)による2002/6/12の党首討論(国家基本政策委合同審査会)から)
 
 「国民の皆さん、鳩山由紀夫です(→議場内笑)。私は民主党・無所属クラブを代表して先の小泉総理の所信に対して質問をいたします。質問に先立ちまして、前原代表も触れられましたが、今は亡き後藤田正晴先生に対して心からなる弔意をささげます。後藤田先生は常日頃、権力の独善に対して強い戒めの気持ちを表しておられました…(後略)」(2005/9/28の衆院本会議での鳩山幹事長の代表質問から)
 
 「国民の皆さん、鳩山由紀夫です」などという相変わらずの「宇宙人」的感覚が理解できなかった読者も鳩山新幹事長の過去の発言を読んでいくつかおもしろいことに気づいたのかもしれない。いずれにしても国民に聞いてみた結果、民主党に期待する人たちはなかなか増えなくなって目の前に「壁」が迫り、逆に小泉自民党ならいいと思ってわざわざ起きてまで投票所に行く人たちがかなりいるということも明らかになったというのが現状である。ここまでにあえて取り上げてきた「過去」の発言からだけでも「鳩山由紀夫元代表から岡田克也前代表へ」、そして「岡田前代表から前原誠司代表へ」という流れが「民主党のごく自然な流れ」であったし、「時代の流れ」とも合致しているということに多くの読者は気づいたかもしれない。選挙で選んだ代表の足を引っ張って途中で引きずりおろすなどという異常事態が発生し、さらに「時計の針を戻すという異常な流れ」が出てこなければ、少なくとも「少子高齢化社会」のような現状、そして反自民党票独占による「二大政党制ファシズム」の破たんとその後遺症などに苦しむようなことはなかったのかもしれない。
 
 そして今から考えれば鳩山幹事長が代表から引きずりおろされた主な原因の旧自由党との合併問題は、結局その後に合併が実現されているわけだから、ほぼ完全な「冤罪」になっているのである(→参考:2002/12/2号2002/12/11号etc.)。もしも足を引っ張られる代表の痛みもよく知っている鳩山幹事長が過去と主張を全く変えず、しかも「代表」のときと「幹事長」のときで自己中心的に物の見方を変えるようなことがないのならば、新しい民主党の幹事長として最適の人材なのかもしれない。国民は鳩山由紀夫という政治家を本当に信じることができるのだろうか。
 
 以上のように前原代表は自民党と改革競争をしていく方針を示し、実際に民主党は郵政民営化関連法案に対する対案(→郵政改革法案)などを時間的制約がある中で何とか提出することはできたのである。民主党に対案提出・改革競争路線を定着させることができるかどうかという問題、そして前原代表が賢明な国民を重視したような岡田前代表の正しかった部分を間違いなく継承しているのかという問題、さらには新しく支持を拡大していくことができるのかという問題についても最初の一歩としては「とりあえず合格点」という状態である。旧日本新党出身者の起用にしても、鳩山幹事長の起用にしても、前原代表は様々な意味で実に面白い人事を行ったものだと筆者は受け止めている。繰り返しになるが、筆者が仮定する「小泉新党」をめぐる攻防戦の重要性を正しく理解し、そのために必要な「戦術」と「戦力」を用意して実際に攻防戦で自民党に勝てるのかという問題は、前原誠司という政治家が日本新党の挫折という経験から何を学び、その後に政治家として何を積み重ねてきたのかということがすべて問われる問題なのである。そして前原代表を支える民主党議員の中には前原代表とほとんど同じ経験と責任を持っている議員が何人もいるのである。いずれにしても最終的な評価は現時点では保留であり、どんなに遅くともこの1年以内に結果は出ることになるのだろう。

 事実はテレビや新聞よりも奇なり(2005/10/18) (8/8) 「自動安定化装置」としての「大連立」構想


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