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 最近の日本の政治情勢について(2005/8/26更新)

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 政治の究極目標は「将来の世代を含めた一人ひとりの生命などを守ること」であると考えています。そしてその目的を達成するためには「ミクロ」「マクロ」、「過去」「未来」、「メリット(プラス)」「デメリット(マイナス)」などという複数の視点によって目の前の深刻な問題を相対化することが必要だと考えています。

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この選挙はどのような意味を持つことになるのか(2005/8/26)

 (参考)前回からの動き(2005/6/27-8/26)


日本は「民主主義立国」になることができるのか(2005/6/27)

 (参考)前回からの動き(2005/5/12-6/26)

「新しい公共財」の創造(2005/5/17)

「泥仕合」や「茶番劇」のあと(2005/5/11)

 (参考)前回からの動き(2005/2/9-5/11)


「カルトからの自由」の実現に必要不可欠な挙証責任(2005/2/9)

 (参考)前回からの動き(2004/12/25-2005/2/9)


複数の視点は「連鎖」の理解にも必要不可欠(2004/12/25)

  (参考)主な動き(2004/9/21-2004/12/24)


現実政治の問題解決に必要不可欠な複数の視点(2004/9/21)


永田町も国際社会も相変わらず「異常なし」(2004/6/22)


正しい判断のために必要な最低限の能力や知識とは何か(2004/3/23)


「今という時代の本質」を探し求める共同作業(2004/1/5) (補足(2004/1/12))

「今という時代の本質」を探し求める共同作業(2004/1/5)

(参考) 2003年後半の海外の動き


(2003年総選挙特集)

「壁」を打ち破るためには(2003/12/8)


 最近の日本の政治情勢について(2003年)

 最近の日本の政治情勢について(2002年)

▽参考:日本の政治


この選挙はどのような意味を持つことになるのか(2005/8/26)

 小泉純一郎首相は衆院で可決(7/5)された郵政民営化関連法案が参院で否決(8/8)されたことを受けて衆院を解散(8/8)した。自民党(8/19)や民主党(8/16)などの主要政党が政権公約(マニフェスト)を発表し、もうすぐ総選挙(8/30公示、9/11投・開票)になる。ちなみによく分からない「刺客」や新党などの騒動は投票率の上昇には全くつながりそうにない。そしていつものように選挙運動が大好きな勘違いした人間たちが公示前から選挙カーやビラ配布などのためにウロチョロし、暑い夏をさらに暑くして投票率の引き下げに貢献している。
 
 今回の文章は筆者にとっては非常に不本意な形での「第二幕」の予告編(Part2)(→参考:2005/5/17号etc.)ということになる。教育関連の様々な改革を総選挙の最大の争点にすべきだと考えていた筆者としてはとても満足できる展開にはなっていない(→参考:2005/6/27号etc.)。だが、現実には対応しなければならない。永田町周辺も、筆者も、そしておそらく多くの国民も、今年の夏はクールビズ姿がよく似合う「変人」の「楽しい夏休みのイベント」に巻き込まれてしまったのである。このまま多くの人たちが膨大な時間と費用を費やして「変人」に付き合うことになるのだろう。膨大な時間と費用を費やすことが変わらないのならば、この機会に国民を欺く「正義の味方」や「弱者の味方」気取りの政治家たち(→参考2005/6/27号)や「公約」を守らない政治家たちなどのような「偽者の政治家」(→参考2005/5/17号)、あるいは「デマゴーク(demagog)」(→扇動政治家)を一人でも多く落選させ、間違ってもどさくさに紛れて復活させたり新しく誕生させたりしないようにする方法を考えるしかない。解散・総選挙によって永田町から国民を欺く「偽者の政治家」を大量追放することができるのならば多くの国民にとってもそう悪い話にはならないはずである。
 
 民主主義国家における選挙では「候補者が有権者に政策を訴えて支持や投票を求めること」が基本中の基本である。よって「社長」や「経済人」が「どこかで聞いたようなこと」ばかりを繰り返し訴えて有権者ではなく「カネ」や「お客様」に支持を求めたり、あるいは「話題の候補者」が既存のマスコミに訴えて「無料のCM枠や広告枠」を求めたり、「元政治家」が政策ではなく「復権」や「名誉回復」を訴えたり、「デマゴーク」(扇動政治家)が「他人に厳しく自分たちに非常に甘いデマ」を訴えたりするような選挙はとても民主主義国家の選挙と呼ぶことはできない。日本が「民主主義立国」(→参考:2005/6/27号)になるためには賢明な国民が必要不可欠である。日本は「民主主義立国」になることができるのだろうか? その答えは最も早ければ今回の総選挙直後に出てしまうのかもしれない。できるだけ多くの有権者が投票に参加して賢明さを示してくれることを期待している。
 
<郵政民営化という「霧」>
 
 どうやら郵政民営化茶番劇の「結末」は解散、そして「茶番劇の主人公」は郵政民営化反対派と民主党ということになったようである。郵政民営化反対派がどれだけ法案に強く反対して否決したとしても小泉首相に解散されてしまえば見苦しい状態になっただけだったし、民主党も審議拒否と反対派に拍手喝さいしたぐらいでしか存在感を示せなかった。だからこそ民主党は「郵政民営化法案に反対しても自分たちは反対派とは全く違う」などと投票日まで何度も繰り返し説明し続けなければならなくなったのだろう。現時点(8/26)では選挙結果はもちろん、投票率が上昇しそうかどうかも予想することは難しいが、一つだけほぼ確実なことは選挙後に小泉首相か岡田克也民主党代表のどちらかが辞任することになるということである。ちなみに選挙前の今はあえて深入りしないでおくことにするが、もしも小泉首相が総選挙で勝利した場合には、総選挙という国民の意思よりも2006年9月の自民党総裁の任期という自民党側の勝手な事情を優先させることができるのかという大きな問題が浮上してくることになる。
 
 郵政民営化問題は永田町周辺を覆った「霧」のようなものである。現状では郵政民営化という「霧」をまず解消しなければ一歩も前に進むことはできないのである。小泉首相の主張するように郵政民営化の実現によって「霧」を解消するのか、それとも郵政民営化は優先順位が非常に低い問題だという結論を出して「霧」を解消するのかという方法の違いはともかくとしても、とにかく「霧」を解消しなければ一歩も前に進むことができないことだけは間違いないのである。そして総選挙の結果、郵政民営化の実現をきっかけに各種構造改革が大きく進展することになるのか、それとも郵政民営化以外の別の問題が優先されるようになるのかなどということも現時点(8/26)ではよく分からないが、茶番劇の繰り返しになりかねない中途半端な結果に終わらせることだけは絶対に避けなくてはならない。どんなに少なくとも今度の総選挙では郵政民営化問題に明確な形で決着を付けなければならないのである。
 
 最近の日本はいつでも内政・外交共に課題山積である。最近の日本を取り巻く国際問題をざっと振り返ってみただけでも、グレンイーグルズ・サミット(7/6-7/8)中のロンドン同時テロ(7/7、なお7/21にも再度同時テロ)などを含むテロの問題、国連安保理改革問題、13日目で休会になった北朝鮮の核問題などの6カ国協議(7/26-8/7。8/29の週に再開?)、そして自爆テロや襲撃などが相次ぐイラクの問題など…、日本が積極的に取り組まなければならない課題は山ほどある。もちろん国内問題でも郵政民営化問題以外に重要問題はいくらでもある。繰り返すが、どんなに課題が山積していようとも、現状では郵政民営化という「霧」をまず解消しなければ一歩も前に進むことはできないのである。
 
 ちなみにドイツでも総選挙(9/18投票)が行われるが、このままならば日本の総選挙の方が国際社会にずっと大きなインパクトを与えることになりそうである。そして投票率が大きく上昇すれば日本の総選挙結果が国際社会に与えるインパクトはさらに大きなものになっていくが、逆に投票率が低迷すればせっかくのインパクトも小さなものになってしまうだろう。
 
<総選挙の大きな争点は「郵政民営化」と「公約」>
 
 やはり総選挙の最大の争点は「郵政民営化」にならざるを得ない。もしも「郵政民営化」が争点にならなかったとしたらそもそも「なぜ解散なのか」が全く分からなくなってしまうだろう。そしてなぜ郵政民営化が茶番劇になったのかということを考えていけば「公約」とは何かということも大きな争点になってくるはずである。どの政党も茶番劇を何度も繰り返さないようにするために政権公約(マニフェスト)の実現を約束できない候補者だけは少なくとも公認してはならないのである。そして選挙後の連携を考える場合にも政権公約(マニフェスト)を白紙に戻すことはできず、その内容に非常に大きく拘束されることになるのである。言うまでもなく選挙後の「追加公認」も政権公約(マニフェスト)の実現を約束することが必要不可欠な条件である。今度の総選挙では各党とも「郵政民営化」と「公約」というまず目の前にある主要な争点に明確な形で決着を付け、次のステップに進む大きな流れを積極的に作り出していかなければならないのである。さもないと全くかみ合わない無意味な議論の繰り返しのために投票率が低迷してすべての政党が敗北という結果に終わることになる。
 
 さて、現実政治の問題としては参院での否決を受けて即座に衆院を解散し、郵政民営化を最大の争点に掲げて国民に真を問うという選択肢しか小泉首相にはなかったということはよく分かっている。だが、教育的な効果を考えたならば、なかなか現実味を持って読むことのできない日本国憲法第59条2項・3項の最近の具体例を作るためにも、解散する前にあえて再度の衆院本会議での採決とか両院協議会などをやってもらいたかったところではある。なお解散直後は「参院で法案が否決されたのになぜ衆院解散なのか」という素朴な疑問を持つ人たちの数も多かったのだろうが、選挙後は「郵政民営化反対」という国民の意思が誰の目にも明らかな形で示されない限り、「どうして衆院の2軍のような参院が存在しなければならないのか」などといった素朴な疑問が急浮上してくることになる。
 
 また今回やればできることが実証された自民党の新人候補者のヘッドハンティングと緊急公募は、最終的に政治家として最もふさわしい人物を擁立したのかなどという点を含めてまだまだ多くの問題点を抱えてはいるものの、少なくとも将来のための確実な一歩にはなったようである。このまま候補者公募が主要政党の公式制度として定着していくことになるのならば、いよいよ公募制度が日本の政治家の新しい人材供給源の主流になっていくのかもしれない。だが、せっかくの制度が実際には将来の「正義の味方」や「弱者の味方」気取りの政治家たち(→参考:2005/6/27号)や「公約」を守らない政治家たちなどのような「偽者の政治家」(→参考2005/5/17号)、あるいは「デマゴーク(demagog)」(→扇動政治家)を大量に政界に送り込む新しいパイプとして機能するようになってしまうのならば国民はますます不幸になってしまう。自民党に限らず民主党も選挙後の公募の総括・見直しは必要不可欠である。
 
 繰り返しになるが、今回の文章は筆者にとっては非常に不本意な形での「第二幕」の予告編(Part2)(→参考:2005/5/17号etc.)ということになる。教育関連の様々な改革を総選挙の最大の争点にすべきだと考えていた筆者としては現時点では満足できる展開にはなっていない(→参考:2005/6/27号etc.)。だが、現実には対応しなければならない。現実政治に真正面から向き合うことによって今回の総選挙を通じてできるだけ多くの候補者たちにさまざまな形で教育について語らせることを引き続き目指していくことになる。「あの選挙はいったい何だったのか」などを追究することに熱中する人たちはたくさんいるが、「この選挙はどのような意味を持つことになるのかもしれないのか」などということを「デマゴーク(扇動政治家)」やいわゆる「ポピュリスト(大衆迎合主義者?)」の悪質な妨害を排除しながら時宜にかなう説得力のある形で多くの人たちに示すようなことは政治ジャーナリズムにしかできないはずである。「デマゴーク(扇動政治家)」やいわゆる「ポピュリスト(大衆迎合主義者?)」を含めた「偽者の政治家」が都合の悪いことも含まれている「文脈」から切り離してあたかも「真実」であるかのように掲げている主張などに対して、今回も筆者は「ミクロ」「マクロ」、「過去」「未来」、「メリット」「デメリット」などという複数の視点を導入して故意に抹消された本来の「文脈」を「再生」しようと試みる。筆者にとっては非常に不本意な形で示す今回の文章が一人でも多くの人たちにとっての有用な「公共財」(→参考:2005/5/17号etc.)になることを希望している。
 
<複数の視点から見た郵政民営化茶番劇とその後の動き>
 
 いつものように郵政民営化茶番劇とその後の動きを「ミクロ」「マクロ」、「過去」「未来」、「メリット」「デメリット」などという複数の視点を導入して考えてみることにする。ここで郵政民営化茶番劇とその後の動きを多少強引でもひとことで表現するならば、「権力闘争」(→「政局」)ということになる。
 
 「ミクロ」の視点から郵政民営化茶番劇とその後の動き、つまり「権力闘争」を見ると、「刺客」がいてもいなくても、単なるケンカとか、ヤクザ映画のような「仁義なき戦い」ぐらいにしか見えないのかもしれない。だが、「マクロ」の視点から見てみると、これが単なる「権力闘争」ではなく2003年から続いている「マニフェスト(政権公約)選挙」(→2003/12/8 (6/8)号etc.)の一環でもあるということに気づくだろう。たとえ不十分で問題の残る形であったとしても、小泉首相は前回2003年の総選挙の政権公約と各地の街頭演説の中で郵政民営化を間違いなく公約し(→2003/12/8 (4/8)号etc.)、さらに2004年の参院選でも重ねて公約したのである。そして今回、その公約した郵政民営化が実現できなかったと思ったからこそ解散・総選挙に踏み切ったわけである。郵政民営化茶番劇とその後の動きは「マニフェスト(政権公約)選挙」の一環であるということを見落とすべきではない。
 
 郵政民営化茶番劇とその後の動き、つまり「権力闘争」を「過去」と「未来」の視点からも考えてみることにする。「権力闘争」というものは、おそらく人類が誕生したころの遠い「過去」からずっと存在し続けてきたのだろうし、おそらくはるか先の「未来」になったとしても存在し続けているのかもしれない。だが、「権力闘争」の中身は「過去」から「未来」へと進むにつれて少しずつ変化してきているのである。多少の誤解を恐れずにあえてひとことで表現するならば、「暴力や武器を使った権力闘争」から「民主主義のルールに基づいた権力闘争」への変化というのが「人類の歴史的文脈」である。言うまでもなく、郵政民営化茶番劇とその後の動きは「民主主義のルールに基づいた権力闘争」である。「民主主義のルールに基づいた権力闘争」は暴力や武器を使わずに選挙を含めた様々な民主主義のルールに基づいて邪魔者に消えてもらう戦いであるという本質を決して見失ってはならないのである。
 
 郵政民営化茶番劇とその後の動き、つまり総選挙の「メリット」「デメリット」はそれぞれ何種類も考えられる。例えば、郵政民営化茶番劇とその後の動きが「民主主義のルールに基づいた権力闘争」であるという点に着目すれば、日本の民主主義をさらにレベルアップする絶好の機会になり得るという「メリット」を考えることができるし、「郵政民営化」と「権力闘争」だけにスポットライトが当たることになるという点に着目すれば、他の重要課題がすべて先送りにされてしまうという「デメリット」を考えることができるだろう。いずれにしても実際にどのような「メリット」や「デメリット」がどの程度出てくることになるのかは、選挙結果、つまり有権者の選択によって大きく変わってくることになる。
 
<「郵政民営化」という最大の争点>
 
 今回の総選挙の最大の争点は確かに郵政民営化であるが、郵政民営化が唯一の争点になるようなことがあってはならない。残念ながら現時点(8/26)までの郵政民営化問題の議論はあまりにも狭い視野から捉えられた主張に偏っており、これからの選挙期間中に大幅に修正することが求められる。さもないと賢明な有権者も郵政民営化問題を正しく判断することはできなくなってしまう。
 
 小泉首相を中心とした自民党などが強調する「郵政民営化に賛成か反対か」という最も基本的な争点ではほぼ結論が出つつある。これからの選挙期間中に小泉首相などの与党の政治家たちは郵政民営化実現後にどのような改革がどのように進んでいくのかなどという話に重点を移していく必要がある。郵政民営化実現後に政府・与党として具体的に何にどのように取り組んでいくのかという話を中心にする必要がある。さもないと「郵政民営化以外は白紙委任することになる」などという有識者たちの警告が「ボディーブロー」のように効いてきて、既にほぼ勝利が見えている「郵政民営化に賛成か反対か」という最も基本的な争点までもが「リバウンド」で覆されてしまうことになるかもしれない。
 
 民主党は、総選挙の争点を「郵政民営化に賛成か反対か」という非常に狭い「土俵」に限定しているなどと小泉首相を厳しく非難しているが、自分たちの批判が自分たち自身に跳ね返ってくる可能性が非常に高いのである。民主党は「郵政改革の最大の目的は、郵便貯金・簡易保険に集められた国民(民間部門)の資金が、国債や財政投融資制度を介して公的部門に流れ、ムダづかいされている実情を是正することだと考えています。そのため、郵便貯金・簡易保険の規模を徹底的に縮小し、公的部門に流れている国民の資金を民間部門に取り戻すことに第一に取り組みます」(2005年総選挙の民主党マニフェストより)などと郵政民営化問題を郵便貯金・簡易保険の資金問題に「限定」しようとしているようである。言うまでもなく、郵便局には「本業」の郵便事業もあればそこで働く従業員もいる。携帯メールや画像ファイルを添付した電子メールなども普及して郵便事業が「ジリ貧」の状態であるということに既に気づいている賢明な国民が民主党の郵政改革に説得力を感じているのかは大いに疑問である。もしかしたら約7年前の金融危機時の「Too little too late」という表現が最もよく現状を表しているのかもしれない。
 
 確かに民主党の主張のように郵貯の預入限度額を1000万円から700万円、500万円と引き下げていった場合には、単純に考えるならばそれぞれ30%、50%の資金が「官から民に」流れるということになるのだろう。だが、小泉首相らの主張する郵政民営化ならば最初から100%の郵貯・簡保資金が「官から民に」移ることになる。もしかしたら問題になるのは「民営化」という形ではなく実際の資金の流れであり、小泉首相の郵政民営化では資金が国債などに流れることは変わらないから「官から官」のままだが、民主案では郵貯の預入限度額を引き下げた分は確実に「官から民に」流れることになるなどと主張するのかもしれない。だが、そういうことになるのならば民主案も「官から民に」流れた後の資金の流れを考慮に入れる必要があるはずである。もしも民間金融機関が現在も大量の国債を購入しておらず、郵貯などから流れてくる新たな資金を集めた場合でも国債以外の安全で有利な運用先に全く不自由しないという状況であるのならば民主案にもそれなりに説得力があるのだろう。だが、もしも国債以外の安全で有利な運用先がなかなか見つからないという状況であるのならば、郵貯・簡保資金に限定した民主党の郵政改革では、資金は「官から民を通ってまた官に」戻ってくるだけだし、「ジリ貧」の郵便事業には有効な対策を打ち出さないから、もしも「官から民に」本当に流れるものがあるとしたら「失業者」だけ、などと逆に与党側から厳しく批判されることにもなりかねないのである。
 
 民主党は「Too little too late」の状況を打開するために郵政民営化問題についての方針を大転換する必要があるのかもしれない。ただし、そういう重要な決定は「いいですか、いいですか」などと無理やり議論に割り込み、「つまりは○○ということ」「結局のところは○○ということ」などと論理的に非常に大きな飛躍のある「結論」を唐突に押し付けたり、あるいは「これはこの前の議論で正しいことが証明された」などと全く事実に反することをどういうわけか「真実」であるかのように繰り返し唱えたりするような「デマゴーク(demagog)」(→扇動政治家)のいない真面目で落ち着いた環境の中で行われる必要がある。そしてあくまでも念のために言っておくが、もしも方針を大転換する場合でも2003年総選挙時に民主党が実際に行ったような「追加マニフェスト」(→参考:2003/12/8 (6/8)号)などという形でいくつかの政策をこっそり追加したことにしてしまうような国民を欺くようなやり方を用いることは二度と許されない。
 
 最大の争点である郵政民営化の議論の現状をあえて数学などの集合で使われる「ベン図」(→参考2004/3/23号etc.)にしてみるならば、大きな「Aの円」の中に「Bの円」が完全に入っており、さらに「Bの円」の中に「Cの円」が完全に入っているような状態である。つまり「郵政民営化以外の改革も含む様々な改革」を示す「Aの円」の中に、小泉首相が熱中している「郵政民営化問題」という「Bの円」がきれいにすっぽりと入っていて、さらにその「Bの円」の中に民主党が主張している「郵貯・簡保の資金問題」という「Cの円」が入っているような状態なのである。筆者に言わせれば、議論は「Bの円」から始めても「Cの円」から始めてもどちらでも結構だが、一刻も早く「Aの円」全体の議論に発展させてもらいたいということになる。
 
<もう一つの大きな争点は「公約」>
 
 今回の総選挙のもう一つの大きな争点は「公約」である。今回の総選挙は小泉首相が「何らかの意図」を持ってあえて民主党の「土俵」に乗った前回2003年総選挙から始まった「マニフェスト(政権公約)選挙」の一環であり、そして小泉首相が前回総選挙と2004年参院選で公約した郵政民営化が国会で阻止されたことを受けての解散・総選挙であるということを踏まえ、政権公約(マニフェスト)の定義あるいは位置付けを見直すべきであると筆者は考えている。つまり、現在の政治情勢を意識するならば、政権公約(マニフェスト)とは「その政党に所属する国会議員の任期中の政治行動をほぼ確実に予想することができるもの」として定義もしくは位置付けられるべきであると筆者は考えているのである。ちなみに政権公約(マニフェスト)をこのように定義付けるのならば、政権を担当する可能性が事実上全くない小政党であっても政権公約(マニフェスト)を発表することを正当化することができるようになるし、結果的に政権与党になれなかった政党でも選挙後に政権公約(マニフェスト)を「白紙」に戻すことも認められなくなるから選挙目当ての無責任な政策は激減することになり、国会議員が有権者の「代表」(→参考:2005/2/9号)であるということを現実政治の中でさらに明確にすることもできるようになる。
 
 確かに多くの有権者にとっては政権公約(マニフェスト)はほぼ全ての政策分野を対象にした体系的で詳細な内容になっていた方が望ましい。だが、いくら政権公約(マニフェスト)が「達成率」を即座に計算することができるくらい具体的な「数値」と「期限」を含んだ詳細な内容になっていたとしても、その政党に所属する国会議員の選挙後の具体的な行動をほとんど予想することができないのならばあまり意味がなくなってしまう。もちろん具体的にどんな政治課題が浮上してきた場合でも政権公約(マニフェスト)の該当する部分を読めばその政党に所属する国会議員の行動を簡単に予想できるくらい詳細に記述しようと思ったとしても、理論的に考えられるすべての状況を詳細に記述することはまず不可能である。そして当たり前すぎるくらい当たり前の話だが、もしもその政党が政権を担当することができたとしても政権を担当していられる時間は限られているのである。限られた時間の中でできるだけ多くの成果を上げるためには「優先順位」というものが非常に重要になってくる。政治家には「政策立案能力」だけではなく「政策を実現していく能力」も同時に求められているのである。政治家の「政策を実現していく能力」とは、例えば、現実政治における現状認識能力と対処能力などといったものを含む総合的な能力ということになるが、あえて一言で表現するならば「政治センス」ということになるだろう。
 
 ちなみに今回はあえて深入りしないが、政権公約(マニフェスト)の「達成率」などを問題にしていく場合には、「数値」と「期限」だけではなく、何をもって達成したと判断するのかという基準や各種用語の定義などを事前に明確にしておかなければならないし、「数値」や「期限」を明示することは困難ではあっても各党があえて公約として掲げたい政策をどのように扱うのか、さらには同じ政権公約(マニフェスト)の中に矛盾する政策が混在していないかなどといったことも問題にされなければならないはずである。
 
 政権公約(マニフェスト)が「その政党に所属する国会議員の任期中の政治行動をほぼ確実に予想することができるもの」と位置付けられるのならば、各党は政権公約(マニフェスト) を作成する場合に(1)任期中に実際に何が具体的な政治課題として浮上してくることになるのか、(2)長期的な視点から見てこれからの日本をどうするのか、そのために任期中に具体的に何を政治課題として浮上させたいと考えているのか、などということをそれらの「優先順位」と共に明確に意識せざるを得なくなる。つまり有権者が政権公約(マニフェスト)からその政党が掲げる政策だけではなく「政策を実現していく能力」あるいは「政治センス」をも同時に知ることができるようになるかもしれないのである。そうなっていけば今後は総選挙のたびに前回選挙時の各党の政権公約(マニフェスト)を改めて眺めて「賞味期限」が切れていない政権公約(マニフェスト)を掲げた政党にそのまま政権を維持させたり、あるいは新しく政権を担当させたりしてみようと考える有権者も増えてくるのかもしれない。逆に言えば、前回選挙時の政権公約(マニフェスト)に今から考えてみてみると全くどうでもいい政策を目玉政策として掲げていたり、任期中に「政局オンチ」と見なされる行動を何度も繰り返したりしている政党には全く期待しなくなっていく有権者も増えていくかもしれないということである。
 
 残念ながら現時点(8/26)では各党の政権公約(マニフェスト)は「その政党に所属する国会議員の任期中の政治行動をほぼ確実に予想することができるもの」にはなっていない。例えば、自民党は郵政民営化関連法案を次期国会で成立させて郵政民営化を必ず実現させるというところまではハッキリしているが、その次に何に取り組むのかがよく分からないし、民主党も政権交代が実現したら「岡田政権500日プラン」などに従って政権運営を進めていくことになるのだろうということはよく分かるが、政権交代が実現できなかった場合には民主党がどうなっていくのかもよく分からない。
 
 ちなみに「伝統的自民党型政策決定システム」と政権公約(マニフェスト)は基本的には両立しないものである。どんな政策でも選挙後に実際に政治課題として浮上してきたときに「部会」などで内容をゼロから積み上げていくことになるから、選挙ではとにかく自分たちの「代表」を当選させて議論への参加資格を得なければ何も始まらないなどというような「伝統的自民党型政策決定システム」は郵政民営化茶番劇の大きな原因の1つであったのである。自民党がどの程度「新しい自民党」に変わったのかということはどんなに少なくとも選挙後には明らかになるのだろう。
 
ガリレオというよりもコロンブス>
 
 解散直後からの小泉首相のいくつかの言動についても簡単に触れておく必要がある。
 「本日、衆議院を解散いたしました。それは私が改革の本丸と位置付けてきました郵政民営化法案…、参議院で否決されました。いわば、国会は郵政民営化必要ないという判断を下したわけであります。私は今年の通常国会冒頭におきましても、施政方針演説で郵政民営化の必要性を説いてまいりました。そして今国会でこの郵政民営化法案を成立させると言ってまいりました。しかし残念ながらこの法案は否決され、廃案となりました。国会の結論が郵政民営化必要ないという判断を下された。私は本当に国民の皆さんがこの郵政民営化必要ないのか…、国民の皆さんに聞いてみたいと思います。いわば今回の解散は『郵政解散』であります。郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか。これをはっきりと国民の皆さまに問いたいと思います。私は4年前の自民党総裁選挙において『自民党を変える。変わらなければぶっ壊す』と言ったんです。その変えるという趣旨は、今まで全政党が郵政民営化に反対してまいりました。なぜ民間にできることは民間にと言いながら、この郵政3事業だけは民営化してはならないと。私はこれが不思議でなりませんでした…(後略)」「約400年前、ガリレオ・ガリレイは天動説の中で地球は動くという地動説を発表して有罪判決を受けました。そのときガリレオは、それでも地球は動くと言ったそうです。私は、今、国会で郵政民営化は必要ないという結論を出されましたけれども、もう一度国民に聞いてみたいと思います。本当に郵便局の仕事は国家公務員でなければできないのかと。民間人ではやってはいけないのか。これができないで、どんな公務員削減ができるんでしょうか。どういう行政改革ができるんでしょうか。これができなくて、もっと大事なこと、最も大事なこと、公務員の特権を守ろうとしているんじゃないですか。国家公務員の身分を守ろうとしているんじゃないですか。反対勢力は。そういう既得権を守る、現状維持がいい…。そういう勢力と戦って、本当に改革政党になる、自民党はなったんだということから、この選挙、国民に聞いてみたいと思います。自由民主党は郵政民営化に賛成する候補者しか公認しません。いわば、はっきりと改革政党になった自民党が民営化に反対の民主党と戦って国民はどういう審判を下すか聞いてみたいと思います。だから解散をしました。そしてこの郵政民営化に賛成する自由民主党、公明党が国民の支持を得て過半数の勢力を得ることができれば、再度、選挙終了後、国会を開いてこれ(郵政民営化法案)を成立させるよう努力していきたいと思います」「(記者の質問に答えて)(前略)…私も率直に言って、選挙はやってみなきゃ分からないと思います。しかし、この選挙後…、私はこの郵政民営化賛成の勢力と協力していかなければならないと思っています。郵政民営化反対の勢力と協力することはありません。だからこそこの郵政民営化に賛成の自民党と公明党が衆議院の議席の過半数を得ることができるように全力を尽くします。自民党、公明党、両(党の)議席を合わせても、過半数を取ることができなかった、と言って、郵政民営化に反対の勢力と協力することはありません。自民党と公明党が国民の審判によって過半数の議席を獲得することができなかったら私は退陣します」(2005/8/8の衆院解散を受けての小泉首相の記者会見から)。
 
 小泉首相は孤独な状態で郵政民営化を唱え続けてきた自分自身をガリレオ・ガリレイの姿に重ね合わせているのかもしれないが、筆者に言わせればガリレオというよりもコロンブスである。確かに「今なぜあえて郵政民営化なのか」(→参考:2005/6/27号)という最も基本的な疑問に対する答えも「国民に聞いてみたい」などと言えば最も説得力のある答えが返ってくるのかもしれない。あえて解散・総選挙をやって「郵政民営化に賛成か反対か」を「国民に聞いてみたら郵政民営化に賛成してくれた」から「今」(=次期国会)「あえて」郵政民営化である、などと。こういう常識にとらわれない答えの出し方に事前に気づいた人たちはほとんどいなかったのではないか。まさに卵の底をつぶしてテーブルに立てる「コロンブスの卵」のような小泉首相らしい斬新な発想である。だが、「コロンブスの卵」はやはり「コロンブスの卵」である。それ以上のものでもそれ以下のものでもない。小泉首相は「今なぜあえて郵政民営化なのか」という問いには、郵政民営化の実現をきっかけに各種構造改革が大きく進展することになるなどという「文脈」から答えるべきだろう。もしも小泉首相がこれからの選挙期間中に郵政民営化の次に何をやるのかをあまり熱心に訴えなかった場合には「郵政民営化燃え尽き症候群」になる可能性が高いと判断せざるを得ない。もしも小泉首相がガリレオ・ガリレイ、あるいは地動説を最初に唱えたコペルニクスのようになりたいのならば、これからの選挙期間中に郵政民営化の実現をきっかけに各種構造改革が大きく進展することになるということを国民に説得力のある形で示さなければならない。小泉首相は「コロンブスの卵」で十分なのだろうか? 何にしても郵政民営化が唯一の争点になるようなことがあってはならないのである。
 
郵政民営化の次は?
 
 「私は、終戦60年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と我が国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。先の大戦では、300万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。戦後我が国は、国民の不断の努力と多くの国々の支援により廃墟から立ち上がり、サンフランシスコ平和条約を受け入れて国際社会への復帰の第一歩を踏み出しました。いかなる問題も武力によらず平和的に解決するとの立場を貫き、ODAや国連平和維持活動などを通じて世界の平和と繁栄のため物的・人的両面から積極的に貢献してまいりました。我が国の戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の60年であります。我が国にあっては、戦後生まれの世代が人口の7割を超えています。日本国民はひとしく、自らの体験や平和を志向する教育を通じて、国際平和を心から希求しています。今世界各地で青年海外協力隊などの多くの日本人が平和と人道支援のために活躍し、現地の人々から信頼と高い評価を受けています。また、アジア諸国との間でもかつてないほど経済、文化等幅広い分野での交流が深まっています。とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全、大量破壊兵器不拡散、テロの防止・根絶などかつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。我が国は、世界平和に貢献するために、不戦の誓いを堅持し、唯一の被爆国としての体験や戦後60年の歩みを踏まえ、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしていく考えです。戦後60年という節目のこの年に、平和を愛する我が国は、志を同じくするすべての国々とともに人類全体の平和と繁栄を実現するため全力を尽くすことを改めて表明いたします」(2005/8/15の小泉首相談話)。
 
 戦後60年の小泉首相談話(8/15)は「過去」ばかりでなく「将来」の比重が高い点に大きな特徴があり、その内容は高く評価できるものであると筆者は考えている。おそらく中国や韓国などの人たちから見てもそれなりに評価できる内容になっているのではないか。首相談話が解散・総選挙に向けた動きの中であまり大きく問題にされなかったのは実に「もったいない」と筆者は思っている。小泉首相はこれからの選挙期間中には「これからの日本は国際社会の責任ある一員として何をするべきなのか」などということについても国民に説得力のある説明をするべきである。いくら高く評価される談話を発表したとしても、直後の総選挙は郵政民営化一色で談話には一切言及なしということになると国際社会に向けた談話の説得力というものがほとんどなくなってしまうかもしれない。そういう意味でも郵政民営化が唯一の争点になるようなことがあってはならないのである。
 
 ちなみに総選挙で小泉首相の自民党が「勝利」した場合に郵政民営化の次に何が優先課題になるのかを予想するためのヒントのいくつかは、総選挙後の自民党内の勢力分布、与党内の勢力分布、つまり総選挙後の自民党内あるいは自民党と公明党の間のパワー・バランスに隠されているのかもしれない。公明党が実現を強く目指している「児童手当などの拡充」、自民党と公明党が正式発表した「連立与党重点政策」(8/26)に盛り込まれた内容も具体的にどのように実現されることになるのかは総選挙後の自民党と公明党の間のパワー・バランスに大きく依存することになるのだろう。もしも総選挙で「大きな政府か小さな政府か」も争点にするのならば、少子化対策とその財源などについても、すべてを総選挙後のパワー・バランスにゆだねてしまうのではなく、選挙期間中に各党間でしっかりと議論しておく必要がある。
 
 年金などの社会保障制度改革が郵政民営化の次の優先課題になる可能性もある。特に民主党は国民の関心の高い年金などの社会保障制度改革を総選挙の主な争点にすることを狙っている。年金などの社会保障制度改革を争点にすることは民主党の自由だし、確かに自民党よりも民主党の方が年金制度の抜本改革に意欲的ではある。だが、グローバリゼーションの影響を考慮に入れない相変わらずの議論のままならば、自民党も民主党も共に年金制度などの抜本改革を実現することはできずに「茶番劇」に終わるだけであると筆者は判断している(→参考:2005/6/27号)。
 
 ちなみにもしも自民党が「勝利」して郵政民営化反対派の壊滅的な打撃が確定した場合には、小泉首相にまだ意欲が残っていれば、中途半端に終わった道路公団民営化のリベンジが郵政民営化の次の有力な選択肢として浮上してくることになる。あえて集合の「ベン図」を書いて見なくても分かるとは思うが、実に面白いことに「郵政民営化反対派の円(集合)」といわゆる「道路族の円(集合)」は大きく重なっているのである(→参考2004/3/23号、2つの円が交わる「パターン2」のケース)。小泉首相はせっかくクールビズ姿で街頭演説をやるのだから選挙期間中に地球温暖化対策の推進の具体策をいくつか有権者に強く訴えてみるべきではないのか。例えば、道路特定財源を廃止して炭素税を導入するなどという地球環境問題と絡めた形(→参考:2004/1/5号)でリベンジを図るならば、公明党もおそらく反対はしないだろうし、民主党も「地球温暖化対策税」の導入をマニフェストに掲げているから実に面白い展開になるかもしれない。いずれにしても小泉首相にその気がなければ実現はしないし、その前に選挙で敗北すればそれまでの話である。小泉首相が郵政民営化で燃え尽きてしまうのか、それとも郵政民営化の実現をきっかけに各種構造改革を大きく進展させていくつもりがあるのかということを国民はしっかりと見極める必要がある。
 
<赤信号 みんなで渡れば…>
 
 やはり民主党と並ぶ郵政民営化茶番劇の「主人公」である郵政民営化反対派についても触れておく必要があるだろう。郵政民営化反対派の発言や行動を理解するためには、現実問題としては「心理学的アプローチ」(→参考2004/9/21号etc.)を適用することが非常に有効である。もしかしたら同じ「強権政治」とか「独裁者」などという言葉も「心理学的アプローチ」を適用する前と後では全く違った意味に聞こえてくるようになるのかもしれない。
 
 まさか「赤信号 みんなで渡れば 怖くない?」などと思ったわけでもなかったのだろうが、衆院では51人(→反対37人(→綿貫民輔元衆院議長、堀内光雄前総務会長(派閥会長を辞任表明)、亀井静香元政調会長、平沼赳夫前経産相、藤井孝男元運輸相、野田聖子元郵政相ら)、欠席・棄権14人(→高村正彦元外相、古賀誠元幹事長ら)、参院では30人(→反対22人、棄権・欠席8人)が「造反」した。少し前までは自民党議員の圧倒的多数が「郵政民営化反対派」だったと言われていただけにずいぶんと少なくなったものだと思っていたのだが、解散後はさらにその数を減らし、「新党」結成にも苦労している。「赤信号」を実際に渡る前に賛成に転じた議員たち、反対ではなく棄権や欠席した議員たち、反対票を投じてもあくまでも「新党」に参加せずに無所属で立候補する代議士たちはおそらくこのまま進んでいくと「出口」は間違いなく「破滅」だということにある時点で気づいたのだろう。政治家たちの発言や行動が「心理学的アプローチ」だけで見事に説明できてしまうところに郵政民営化茶番劇の本質を見抜く鍵があるのではないかと筆者は考えている。
 
 現時点(8/26)でも既に確実になっていることは、少し前まではかなり強大・強力な勢力だった「郵政民営化反対派」が壊滅したとまでは言えないが、かなり大きな打撃を受けたということである。そして今回の総選挙を通じて「郵政民営化反対派」が勢力を回復する可能性はほとんどないし、たとえどんな結果になったとしても総選挙後もしばらくの間はかつてのような強大・強力な勢力として復活することだけはあり得ないということである。
 
中学社会・道徳のための生きた教材?
 
 現行(平成10年12月)の文部科学省の中学校学習指導要領(社会、公民的分野の目標)には「個人の尊厳と人権の尊重の意義、特に自由・権利と責任・義務の関係を広い視野から正しく認識させ、民主主義に関する理解を深めるとともに、国民主権を担う公民として必要な基礎的教養を培う」などと定められている。また中学校学習指導要領(道徳)には「自律の精神を重んじ、自主的に考え、誠実に実行してその結果に責任をもつ」「法やきまりの意義を理解し、遵守するとともに、自他の権利を重んじ義務を確実に果たして、社会の秩序と規律を高めるように努める」などと定められている。郵政民営化茶番劇とその後における郵政民営化反対派の発言と行動は、非常に分かりやすい中学社会・道徳のための生きた教材になるのではないかと筆者は考えている。
 
 社会の中では、ある個人の自由・権利は別の個人の責任・義務と「表と裏の関係」にある。そしてある個人は様々な自由・権利と責任・義務を同時に持っているのである。「なぜ人を殺してはいけないのか」を例に説明するならば、すべての個人の「生存する自由・権利」はその他のすべての個人による「生存を認める責任・義務」によって裏付けられている。つまり「ある個人の生存する自由・権利」はその他すべての個人による「ある個人の生存を認める責任・義務」によって、「別のある個人の生存する自由・権利」もその他すべての個人による「別のある個人の生存を認める責任・義務」によって…という「連鎖」によって支えられていると考えることができる。だからもしも誰かが誰かを殺すということになれば、権利と義務などの「連鎖」が断ち切られて最悪の事態に陥ってしまうことになる。それが「なぜ人を殺してはいけないのか」という質問に対する一つの解答になる。そして人類は今ある「連鎖」の上にさらに高度の自由・権利と責任・義務の関係を積み重ねて国家や社会をより良いものに変え続けようとしているのである。中学生向けの社会の授業ならばそのように権利と義務などの関係を説明していくだろう。ちなみに権利と義務などの「連鎖」による「なぜ人を殺してはいけないのか」についての説明は、「心理学的アプローチ」(→参考2004/9/21号etc.)とは少し違う角度からの「テロが認められない理由」の説明にもなっているのである。
 
 人間は弱いものだから、してはいけないと分かっていてもついルールを破ってしまうこともある。ルール違反の数が少なければ大したことはないのかもしれない。だが、ルールを破る人たちの数があまりにも多くなってくれば「してはいけないこと」だと分かっている人の数もどんどん減っていく。そうなってくるとルールに基づいた「社会秩序」というすべての人たちにとって最も大事なものもやがてはなくなってしまうかもしれない。例えば、何人かがたまに赤信号を無視するようなことがあったとしても事故は起きないかもしれないが、社会の10%の人たち、20%の人たち、あるいはもっとずっと多くの人たちが「赤信号 みんなで渡れば 怖くない?」などといつも赤信号を無視するようになったら道路交通はいったいどうなってしまうのだろうか? 最初に失うのは非常に小さなことかもしれないが、最後には最も大事なものも簡単に失われてしまうようになるかもしれないのである。自分自身の行動が及ぼす影響をいつまでも正しく理解できずに小さなものだと思い込んで行動を改めなければ、やがてルールに基づいた「社会秩序」というすべての人たちにとって最も大事なものまでもが失われてしまうようになるかもしれない。日本が地球上にいまだに残されている人間の生命すらも全く保障されない無法地帯の一つになってしまうこともあり得ない話ではないのである。そうなってしまってから後悔しても遅い。あなたはいったいどう考えますか? 中学生向けの道徳の授業ならばそのようにまとめてみるだろう。
 
 中学校の社会や道徳の授業を思い出したり想像したりしてみれば、例えば「きのうまでずっと自民党の一員だったのに党議拘束というルールを破って法案に反対しただけで急に選挙で公認しない、対立候補を擁立するなんて本当にそんなことをやってもいいのか」「確かに党議拘束というルールを破ったのかもしれないが、郵政民営化関連法案という1つの法案にたった1回反対しただけなのに選挙で公認しないなんてあまりにも処分が厳しすぎる。だいたい過去にルール違反をしても処分されなかった人たちもいるじゃないか」などという主張がいかに説得力がないものかということにすぐに気づくことになるだろう。
 
 自民党という組織の一員になることによって得られる様々な「権利」を持っている人間には自民党という組織のルールを守る「義務」があるのである。そして自民党という組織のルールを守る「義務」を果たさない人間から「公認」などの自民党という組織の一員になることによって得られる様々な「権利」を剥奪し、新しく「義務」を果たすと約束した別の人間に「公認」などの「権利」を与えることは全く何も不思議なことではない。当たり前と言えば当たり前の話だが、永田町周辺でも一般社会と同じように「権利」と「義務」は「表と裏の関係」にあるのである。確かに感情的には割り切れないものがあるのだろうし、「あれはミスジャッジだ」などと「判定」にも大いに不満があるのだろう。だが、郵政民営化反対派は自民党という組織の中でのルールに基づいた戦いに敗れ、その結果として公認されなかったのである。そして自民党の場合には、最終的なルールの解釈・適用などを組織の上層部にゆだねることを含めてルールなのである。確かに感情的には割り切れないものがあるのだろうが、いつまでも激しい自民党(執行部)批判ばかりを繰り返していると、そのうち子供たちからも冷やかな目で見られることになるかもしれない。教育についてできるだけ多くのことを政治家に語らせてみると政治家の能力を含めた様々なことがほとんどの国民にもよく分かるようになるという筆者の主張(→参考:2005/6/27号)にもそれなりに説得力を感じてもらえることだろう。
 
 ちなみに国際社会でも一般社会と同じように「権利」と「義務」は「表と裏の関係」にあることは変わらないはずである。「義務」を全く果たさないくせに核の平和利用の「権利」だけを繰り返し声高に唱える北朝鮮、あるいは「権利」ばかりを一方的に強調するイランなどの主張の説得力のなさ、そして国際社会がそうした国々を説得するためのヒントなどは意外なほど身近なところにあるかもしれないのである。
 
「郵政民営化」と「政局」だけで本当にいいのか
 
 ここで少し話を変えることにしたい。「筆者が知っている小泉純一郎という政治家の『琴線』は昔から『郵政民営化』と『政局』である。だから郵政民営化断固反対派などが『郵政民営化』で『政局』にしようものなら『変人』は目を輝かせて受けて立つだろうと筆者は思っている」と前回(2005/6/27号)書き、結果的にその通りに解散(8/8)になったわけだが、政治家が「郵政民営化」と「政局」にしか(?)関心を持たないなどということが本当に許されることなのかと強く疑問に思っている読者も少なくはないだろう。ここからしばらくの間は小泉首相が「郵政民営化」と「政局」に多くの関心を集中させるようなことは許されることなのか、それとも許されないことなのかなどということを考えるために役立ついくつかの材料を読者に提供することにする。
 
 ある人が自分の得意分野に集中することは一般的には悪いことではない。「人類の歴史的文脈」から考えるならば、自分の得意分野に集中することはむしろに望ましいことなのかもしれない。大昔の人間は自分が生きるために必要な全ての物を自分自身の力で用意しなければならなかったから、狩猟・採取や農耕などの生きていくために必要不可欠なことだけにほとんどすべての時間を費やしていたのである。そしてやがて他人と協力して自分の得意分野に集中することによって自由な時間と富を得ることができるようになり、得られた自由な時間と富を使って科学・技術などを含む「人類の生きるための工夫」などという広い意味での「文化」(→参考:2005/2/9号)を発達させてどんどん豊かになってきたのである。そういう非常に大雑把な人類の発展の歴史も「人類の歴史的文脈」の一つである。自分自身の日常生活を思い浮かべてみればすぐに分かるように、現代社会では必ずしも自分の得意分野とは限らないが、とにかく一人ひとりが社会の中で細分化された何らかの役割を分担しており、大昔のように自給自足の生活をしている人はほとんどいないのである。そういう「人類の歴史的文脈」から考えるならば、自分の得意分野に集中することは望ましいことなのかもしれない。
 
 ここで他人と協力して自分の得意分野に集中するとなぜ自由な時間と富を得ることができるようになるのかについてもう少しだけ具体的に説明しておくことにする。例えば、1日あたり「小麦」(→Xとする)1kgと「肉」(→Yとする)1kgを食べないと生きていくことができない「農耕は得意だが狩猟は苦手な人」(→Aとする)と「農耕は苦手だが狩猟は得意な人」(→Bとする)がいたとする。そして「農耕は得意だが狩猟は苦手な人」(A)は1kgの「小麦」(X)を得るために1日4時間、1kgの「肉」(Y)を得るために1日6時間、合計で10時間働かなければならず、「農耕は苦手だが狩猟は得意な人」(B)は1kgの「小麦」(X)を得るために1日8時間、1kgの「肉」(Y)を得るために1日2時間、合計で10時間働かなければならなかったとしよう。もしもこの場合にAとBが協力してそれぞれ得意な仕事だけに集中したとすると、2人の合計で比べれば、共に8時間働くだけで協力せずにそれぞれ10時間働いた場合よりも多くの量を得ることができるということが分かる(→農耕に集中するAは8時間労働で「小麦」(X)2kg、狩猟に集中するBは8時間労働で「肉」(Y)4kgをそれぞれ得るから合計では「小麦」(X)2kgと「肉」(Y)4kg。協力しなかったときはA、Bはそれぞれ10時間労働でXとY1kgずつを得るから合計では「小麦」(X)2kgと「肉」(Y)2kg)。例えば、AとBが「小麦」(X)1kgと「肉」(Y)2kgを交換すれば、AもBも協力することでそれぞれ「自由な時間」2時間と貯蔵用の「肉」(Y)1kgを得ることができるようになるわけである。もちろん現実の世界はこんなに単純で分かり易くはないし、この説明は様々なことを前提にした非常に特殊な条件の上に成り立っているわけではあるが、とりあえず他人と協力することによって新たに利益が得られる場合もあるということぐらいは十分に説明することができるだろう。このような説明を協力の「経済学的アプローチからの説明」とでも呼んでおくことにする。
 
 ちなみにA、Bをそれぞれ「国家」、Xを「工業製品」、Yを「農産物」などとすれば、国際経済学、あるいは高校の現代社会や政治・経済の教科書にも載っている有名な国際貿易の「リカードの比較生産費説」と基本的に同じ話になる。なおA、Bをそれぞれ「政治家」としてXを「政策を実現していく能力」、Yを「政策」などとすれば、政治家が政党をつくる理由の一つを説明することができるようになるかもしれない。
 
<人間は一人ひとり違っている>
 
 もしも2人とも同じように農耕が得意で狩猟が苦手だったとしたら、協力の「経済学的アプローチからの説明」は全く成り立たないことになるが、幸いなことに人間には個性がある。人間は一人ひとり違っているのである。あることをすれば必ず得意な人と苦手な人の間で差がつくものだし、得意な人と苦手な人が入れ替わる別の種類のことを見つけるのはそれほど難しいことではない。また、ほとんど誰もできないような非常に難しいことであっても、広い世の中を探せば簡単にやってのけてしまう才能のある人が1人や2人は出てくることもある。人間には個性があって一人ひとり違っているから、創意工夫をすれば協力によって共に利益を得ることができるようになる可能性が高いのである。
 
 ここで一人ひとりの人間に個性があるということはどういうことを意味しているのかについてもう少し考えてみることにする。一人ひとりの人間が違っているということは、ある個人の完璧な代役はどの個人にも務まらない、つまり、ある個人は他のどの個人によっても置き換えることはできないということであり、さらに言い換えれば、一人ひとりの個人は値段を付けることができないほど貴重な存在であるということである。いくらカネを用意しても経済市場で手に入れることができないものは値段を付けることはできない(→価値無限大)。経済市場で手に入れることができるものならば壊してしまっても同種の製品を用意して償うことはできるのかもしれないが、人を殺してしまったらいくらカネを用意しても絶対に元に戻すことはできない。取り返しがつかないのである。だから人を殺してはいけないのである。それが「なぜ人を殺してはいけないのか」という疑問に対する倫理などによる一般的な説明とは全く別の「経済学的アプローチからの説明」ということになる。また、そんな値段を付けることができない貴重な存在である個人には、他人であっても自分自身であっても勝手に値段を付けて安売りするようなことは許されない。だから「人身売買」や「売買春」などをしてはならないのである。それが倫理などによる一般的な説明とは全く別の「人身売買」や「売買春」などをしてはならない理由の「経済学的アプローチからの説明」ということになる。
 
<「対立」ではなく「共存」、「共存」よりも「協力」>
 
 以前から何度も繰り返しているが(→参考:2004/9/21号etc.)、筆者は、政治とは「一人ひとりの自立した個人を含めた様々な主体が共存・協力関係を構築していく過程であり、共存・協力の実績とより良く共存・協力していくための技術を積み重ねながら絶えず現実にフィードバックしていく作業」であると定義し、共存・協力のための必要不可欠な最低限の条件を「将来の世代を含む一人ひとりの生命などの利益を守ること」であると考えている。また「将来の世代を含む一人ひとりの生命などを守ること」などとあえて「将来の世代を含む」を強調するのは、「将来の世代」が本当の意味での弱者であると考えているからである(→参考:2005/2/9号)。
 
 さて、少し前に用いた「農耕は得意だが狩猟は苦手な人」(A)と「農耕は苦手だが狩猟は得意な人」(B)の例に再び戻ることにする。もしもAもBも共に機会があれば相手の生命や財産を奪ってやろうなどと思っていたとしたらいったいどういうことになるのだろうか? その場合にはAもBも相手からの襲撃に備えるために余計な労力が必要になるから、農耕や狩猟に十分な時間を費やすことができず、生存のために必要な量の「小麦」(X)と「肉」(Y)を得ることができなくなり、さらに夜も安心して眠れなくなるという生存の危機に陥ってしまうことになるだろう。そしてあくまでもAとBが対立を続けるのならば、このような生存の危機はAかBのどちらかが相手に抹殺されてしまうか、あるいはAもBも共に破滅するまで続くことになるだろう。つまり、AもBも互いに相手の存在を認め合い、相手の生命・財産などを尊重しなければ共に不幸になってしまうのである。別の言い方をすれば、互いに相手の生命・財産などを尊重し合うような者同士ならば共存することができるが、どうしても他者の生命・財産などを尊重しようとしない相手とは絶対に共存することができないのである。そのことが共存・協力のための必要不可欠な最低限の条件を「将来の世代を含む一人ひとりの生命などの利益を守ること」であると筆者が考えている主な理由である。そしてそのことは同時に「将来の世代を含む一人ひとりの生命などの利益を守ること」が政治の究極目標であると筆者が考えている主な理由にもなっているのである。
 
 AとBが互いにいくら相手を嫌っていたとしても、互いに相手の生命・財産などを尊重し合うことができさえすればAとBは「共存」することができるのである。AとBが「共存」することができるのならば、先の例ではAもBもそれぞれ10時間働けば生存することができるようになる。そしてAとBの「共存」が長期間続いて信頼関係が深まっていけば、AとBは「協力」することができるようになるかもしれない。AとBが「協力」することができるのならば、先の例ではAもBもそれぞれ8時間働くだけで生存することができるようになって生活は豊かになる。冷静に考えることができさえすれば、相手を抹殺しなければ自分が抹殺されてしまうような状態は誰にとっても不幸であるということにすぐに気づくことができるだろう。そして一般的には「対立」ではなく「共存」し、「共存」よりも「協力」した方がずっと望ましいのである。「対立」ではなく「共存」すれば互いに生存することが容易になるし、「共存」よりも「協力」を選べば互いに新たな利益が得られることもあるのである。このことはテロに走る人間たちにも、地球上にいまだに残されている人間の生命すらも全く保障されていない無法地帯で生活している人たちにもあてはまるはずだということをあえてここで強調しておくことにする。
 
 ここで当たり前すぎるくらい当たり前のことをあえて念のために確認しておくことにする。まずは一人ひとりに個性があるからこそ「協力」することによって互いに新たな利益を得ることができることもあるということである。そして互いに新たに利益を得ることができるのは他者もその価値を認めて交換することができるような種類の利益が新たに作り出されたからである。これらのことをしっかりと確認しておく必要がある。実はこれらのことが以前から何度も取り上げている「カルト」(→ここでのカルトとは「事実との真正の結合とは全く無関係な強い思い込み」またはそういう強い思い込みをする人たちのこと)、あるいは大学・大学院で「教員」や「研究者と称する人物」が行っている俗に言う「金魚のフン」のような海外有名研究愛好会レベルや「穴を掘ってすぐにまた埋める」だけの古典愛好会レベルの「研究と称するもの」を筆者が厳しく批判していることとも大いに関係しているのである(→参考:2005/2/9号2005/6/27号etc.)。
 
 「カルト的なもの」ばかりをどんなに一生懸命に作っていたとしても誰もそんなものの価値を認めて何か価値のある別のものと交換してくれるようにはならないだろう。また、ほとんど価値のない「金魚のフン」や「穴を掘ってすぐにまた埋める」ようなものばかりをどんなに一生懸命に作っていたとしても誰も交換してはくれないだろう。仮に交換することができたとしても似たような価値のないもの同士を交換しても新たな利益を生み出すことはできない。それが「カルト的なもの」、「金魚のフン」や「穴を掘ってすぐにまた埋める」類のものを生み出すような「人類共通の知的生産活動」とは全く無縁の非生産的活動の愚かさや無意味さについての「経済学的アプローチからの説明」ということになる。いずれにしても、ある個人があることに集中して何らかのものを作り出したとしても、それが他者にとっても価値のあるものでなければ全く意味がないということがここまでの話の絶対に見落としてはならない非常に重要なポイントなのである。
 
「郵政民営化」「政局」から交換可能なものを創造したのか?
 
 ここで再び小泉首相が「郵政民営化」と「政局」に多くの関心を集中させるようなことは本当に許されることなのかという話に戻ることにする。経済学部出身の小泉首相が意識的に得意分野に特化したのかどうかは定かではないが、いずれにしても小泉純一郎という政治家は結果的に永田町において「郵政民営化」と「政局」に特化したと考えることができるのである。そして小泉首相は「郵政民営化」と「政局」に特化していったい何を作り出したのか、交換可能なものを創造したのかなどということが問題になってくるのである。もしも小泉首相が「郵政民営化」と「政局」から非常に価値の高い交換可能なものを創造したのであれば、「郵政民営化」と「政局」に多くの関心を集中させたことも正当化することができるのかもしれないし、逆に何ら価値のある交換可能なものを作り出すことができなかったのならば「郵政民営化」と「政局」への特化は全く許されるものではないということになるのだろう。
 
 率直に言わせてもらうのならば、現時点(8/26)では小泉首相が自ら特化した「郵政民営化」から「解散・総選挙」以外のいったい何を作り出したのかがよく分からない。そして作り出した「解散・総選挙」の価値は選挙結果によって完全に変わってくるから現時点ではその価値を正しく評価することは不可能である。また「今なぜあえて郵政民営化なのか」とか「本当に郵政民営化の実現をきっかけに各種構造改革が大きく進展することになるのか」ということも現時点(8/26)ではかなり説明不足であるから、「郵政民営化」から作り出されるであろうその他のものの価値を正しく評価することも不可能である。これからの選挙期間中に小泉首相は「郵政民営化に賛成か反対か」から「郵政民営化実現によってどのような改革がどのように進んでいくのか」などという話に重点を移していく必要がある。さもないと小泉首相は特化した「郵政民営化」から交換不可能なほとんど価値のない「カルト的なもの」しか作り出すことができなかったという批判を甘んじて受けなければならなくなるだろう。それが「郵政民営化」とそこから生み出されるものの価値の「経済学的アプローチ」からの評価ということになる。
 
 次に小泉首相が特化したもう一方の「政局」とそこから生み出されるものの価値を評価することにする。確かに表面的に見えているのは「権力闘争」だけだが、実は小泉首相が「政局」に特化して創造したものは「権力闘争に勝ち抜く能力」、より正確に言い換えるならば「民主主義のルールに基づいた権力闘争を勝ち抜く能力」である。今回の文章の前半部分で政治家には「政策立案能力」だけではなく「政策を実現していく能力」も同時に求められているなどと書いたが、この「民主主義のルールに基づいた権力闘争を勝ち抜く能力」には「政策を実現していく能力」が含まれており、少なくとも永田町周辺の人間たちにとっては非常に高い価値を持つことは明らかである。ちなみに「民主主義のルールに基づいた権力闘争を勝ち抜く能力」などは政治学などのいわゆる「パワー(power)」と同じものだと考えておいてもとりあえず問題はないだろう。小泉首相は「政局」に特化して非常に高い価値を持つ「パワー(power)」を創造したと現時点でも判断することができる。もちろん「パワー(power)」は「支持」「政策立案能力」「人材」などの現実政治の場に必要なすべてのものとかなり有利な条件で交換することができるものである。そして一連の郵政民営化茶番劇と解散・総選挙などの動きを通じて小泉首相が非常に高い価値を持つ「パワー(power)」を多く持っているということが広く世界中に知れ渡ったということになる。
 
 ちなみに「権力闘争」は時代も国境も越えて存在するものであるから「権力闘争を勝ち抜く能力」、「パワー(power)」の価値も時代や国境を越えて評価されるということになる。つまり小泉首相の「パワー(power)」の価値を高く評価したり、うらやましく思ったりするような人たちは、隣国の大統領以外にも、実は世界中にかなり多くいるだろうということである。もしも小泉首相が今回の総選挙で勝利したならば、国際社会の中での小泉首相の評価と日本の民主主義に対する評価が同時に高まる可能性も高いのである。もっともその場合でも日本のソフト・パワー(→2005/2/9号etc.)を一時的ではなく恒久的に高めることができるかどうかは定かではない。
 
 もちろん小泉首相がどんな高い価値を持つ「パワー(power)」をどれだけ持っていたとしても、「パワー(power)」を有効に使うことができないと見なされてしまうことになれば評価は一転暴落することになる。数年前には日本でも珍しくなかった「バブル紳士」のようにあり余るカネのほとんどをバブル的なことにしか使うことができない人間と実は同じではないかなどと見なされてしまったらせっかくの「パワー(power)」も全く何の役にも立たなくなってしまう。そういう意味でも小泉首相はこれからの選挙期間中も「パワー(power)」を有効に使いこなせることを示し続けなければならないのである。以上が小泉首相の特化した「政局」から生み出されるものの価値の「経済学的アプローチ」からの評価ということになる。
 
<民主党は「政権準備政党」に特化することはできるのか>
 
 民主党が自民党に自民・民主1対1の党首討論実施を提案したという(8/25)。言うまでもなく1対1の党首討論は典型的な「劇場型民主主義」である。小泉首相の「劇場型民主主義」に批判的な民主党も自分たちが主人公になることができる場合には「劇場型民主主義」を歓迎するということなのだろう。当たり前と言えば当たり前の話だが、自民党は各党と公平に討論するなどとして提案を拒否した(6/26)。あくまでも念のために言っておくが、民主党は「自民党が逃げた」などと選挙期間中に攻撃できるなどと喜ぶのはまだ早すぎる。民主党は郵政民営化問題で方針を大転換する覚悟を決めたのだろうか? もしも覚悟も決めずに1対1の党首討論を安易に提案したのだとすればあまりにも愚かだと言わざるを得ない。小泉首相がこのまま受け流してくれればいいが、もしもギリギリの段階になって「最大の争点である郵政民営化に絞って1対1で討論をやろう」などと逆提案してきたら大変なことになるはずである。「民主党の方から1対1で党首討論をやりたいと言ってきた。ところが、最大の争点である郵政民営化を議題にしようと言ったら急に逃げ出した」などと各地の街頭演説で繰り返されてしまったら民主党はさらに悲惨な状態に追い込まれてしまうかもしれない。民主党はいいかげんに自分たちが筋金入りの「政局オンチ」だということに気づいて目覚めるべきである。民主党は「デマゴーク」や「労組のしがらみ」を完全に切り捨てて真面目で地味な「政権準備政党」に特化するしか生き残る道はないと筆者は考えている。
 
 現時点(8/26)ではどのような選挙結果になるのかはよく分からないが、いくつの「核」ができるのかに注目していれば総選挙後の日本の政治をある程度予測することができるのかもしれない。小泉首相の「政策を実現していく能力」を含んだ「パワー(power)」が総選挙後も残るのならば「核」として「政策立案能力」「人材」などの様々なものを引き付けていくことになるのだろう。もしも民主党が「デマゴーク」や「労組のしがらみ」を完全に切り捨てて真面目で地味な「政権準備政党」に特化することができるのならば「政策立案能力」が高いもう一つの「核」になることができるのかもしれない。そして内部から強力な「パワー」や素晴らしい政治センスを持った新しい指導者が生まれるか、あるいは外部から強力な「パワー」や素晴らしい政治センスを持った新しい指導者をヘッドハンティングしてくることができるならば新しい大きな流れを作り出すことができるのかもしれない。
 
 ちなみにもしも「核」が2つある場合には2つの「核」の間の競争という展開だけではなく、2つの「核」が「融合」して新しい流れが生み出されるという可能性も出てくることになる。表面的なことだけにとらわれていると意外に感じるかもしれないが、「政策を実現していく能力」と「政策立案能力」が合体するというのはごく自然な流れである。実は多くの国民も「融合」の可能性が小さくはないことを感覚的に感じ取っているのかもしれない。いずれにしても現時点(8/26)では総選挙後に存在しそうな「核」の数は1つ以下である。「核」が1つの場合には1996年総選挙後の旧・新進党の分裂・解党劇がある程度参考になるのかもしれない。そしてもしも1つも「核」がなくなってしまえば日本の政治は大混乱状態に陥ってしまう危険性が出てくる。
 
総選挙の「敗因」
 
 総選挙(8/30公示、9/11投・開票)前という選挙結果が判明するかなり前からあえて「敗因」に言及しておくことにする。現時点(8/26)でも既にいくつかの「敗因」が明らかになっており、選挙後もそのままの形で残されることがほぼ確定している。自民党と民主党のどちらが勝利した場合であっても、それぞれの党の「敗因」は決してうやむやにされることなく選挙後に確実に総括されなければならないと筆者は考えている。
 
 もしも自民党が今回の総選挙で「敗北」した場合にはその最大の「敗因」は誰の目にも明らかである。言うまでもなく最大の「敗因」は「小泉純一郎首相(自民党総裁)が解散・総選挙に踏み切ったこと」と「『郵政民営化に賛成か反対か』を事実上の唯一の争点にしたこと」である。そしてその最大の「敗因」の責任については小泉首相の辞任という形で総括されることになる。だが、実はまだ他にも見過ごされてはならない大きな「敗因」があるのである。
 
 例えば、「人騒がせなITバブル紳士」のような「よく分からない刺客の擁立」の問題があるはずだと筆者は見ている。「よく分からない刺客の擁立」によって有権者から「郵政民営化賛成を唱えれば誰でもいいのか」などと小泉自民党の真剣さなどに大いに疑問を持たれてしまったということは間違いないのない事実である。もしも小泉首相の自民党がたくさんカネを持っていても意味のあるカネの使い方ができない「バブル紳士」と同類だと多くの有権者から思われてしまったら、たとえどんなに強大な「パワー(power)」を持っていたとしても誰一人として何とも交換してくれなくなってしまうはずである。「よく分からない刺客の擁立」の責任問題については「敗北」した場合にはもちろん、「勝利」した場合でも明確な形で追及されなくてはならないのである。
 
 もしも民主党が今回の総選挙で「敗北」した場合には最大の「敗因」は「政局オンチ」ということになるだろう。そして仮に「勝利」した場合であっても「政局オンチ」という最大の「敗因」の責任がうやむやにされるようなことはあってはならない。本来は政治でも歴史でも「もしも」は禁句だが、もしも民主党が郵政民営化賛成の立場だったならば少なくとも今のように与党内の対立に埋没するようなことは絶対になかっただろう。全く同じ主張をする場合でも、「郵政民営化法案には反対する。だが…」(→「No, but…」)などと言うよりも「法案には基本的に賛成する。ただし…」(→「Yes, but…」)などと言った方がずっと大きな説得力があったはずである。そして解散後にも民主党は状況を正しく認識できずにさらに致命的な大失敗を繰り返してしまったのである。解散直後からしばらくの間、民主党は避けることが不可能な郵政民営化問題をなんとか避けよう避けようとしてさらに事態を悪化させてしまったのである。やはり少なくとも政局的には民主党が郵政民営化関連法案に反対したのは致命的な大失敗だったのである(→参考:2005/6/27号)。民主党内のかなり多くの議員たちが実は郵政民営化に反対ではないという事情を踏まえると、「敗北」後には郵政民営化問題で亀裂が大きくなって分裂するか、あるいは不満が大爆発することになるのかもしれない。
 
 実は民主党の「政局オンチ」という「敗因」は「過去の負の遺産」とでも呼ぶべき根深い問題なのである。民主党は小選挙区比例代表並立制の下で事実上反自民党票を独占してきた。特に菅直人前代表の時代には自分たちを単なる「クタバレ自民党」程度のものに大安売りし、自民党を厳しく批判して「政権交代(=クタバレ自民党)」と叫んで多くの反自民党票を吸収するだけの選挙に堕落していった。ところが今回のように自民党からいくつか「新党」が分裂して厳しく自民党を批判し、小泉自民党までもが「古い自民党をぶっ壊す」と自己批判して民主党による事実上の独占が崩れてしまうと存在感がほとんどなくなってしまったのである。さらに新人獲得分野でも自民党はヘッドハンティングや緊急公募によって「若くて魅力的な候補」や「女性候補」を大量擁立し、民主党による事実上の独占を崩したのである。もしも民主党が「敗北」した場合には、「デマゴーク(扇動政治家)」などの「偽者の政治家」や「労組のしがらみ」をまとめて切り捨てて「政権準備政党」(→参考:2005/6/27号etc.)に新しく生まれ変わらない限り、存在感がますます希薄になってやがて分裂か消滅していくことになるのかもしれない。岡田代表が辞任したとしても民主党「敗北」の責任問題は終わらないのである。
 
<「政治家としての能力」を見抜くための2つの「道具」>
 
 繰り返しになるが、郵政民営化茶番劇とその後の動き、今回の総選挙に実際にどのような「メリット」や「デメリット」がどの程度出てくることになるのかは選挙結果、つまり有権者の選択によって大きく変わってくることになる。そして「選挙結果」は、(1)程度の差はあっても「数字」で表すことができるもの(→例えば、獲得議席数、与野党間の勢力分布、与党内と野党内それぞれの勢力分布、など)、(2)「数字」で表すことは困難だが、選挙期間中に誰でも見えたり聞こえたりする形で表すことができるもの(→例えば、政権公約(マニフェスト)本体、有力政治家の街頭演説や発言、各候補者のそれぞれの公約に対する考え方、など)、(3)誰にでも見えたり聞こえたりする形ではなかなか表すことができないもの(→それぞれの政治家の政治家としての能力、それぞれの政治家の本心・本音、など)の3種類に大別することができる。そして筆者がこれまで「特化」して取材してきたのは言うまでもなく(2)と(3)である。
 
 前回2003年の総選挙では、既存のマスコミも全く同じものを取材していたにもかかわらず、小泉首相の詰まらない街頭演説(→2003/12/8 (4/8)号)、民主党の「追加マニフェスト」の問題点を含む「マニフェスト(政権公約)選挙」なるものの実態(→2003/12/8 (6/8)号)、楽市・楽座と関所廃止の間の正しい関係(→2003/12/8 (5/8)号2004/3/23号)などについて筆者は「独占スクープ」を連発してきた。筆者は「カルト」(→参考:2005/2/9号etc. なおここでのカルトとは「事実との真正の結合とは全く無関係な強い思い込み」またはそういう強い思い込みをする人たちのこと)や「デマゴーク(demagog)」(→扇動政治家)を確実に見つけ出して打撃を加え、無駄な時間やカネを費やさないことなどについてはそれなりに実績と定評がある。国民を欺く「正義の味方」や「弱者の味方」気取りの政治家たち(→参考2005/6/27号)や「公約」を守らない政治家たちなどのような「偽者の政治家」(→参考2005/5/17号)、あるいは「デマゴーク」を一人でも多く落選させ、間違ってもどさくさに紛れて復活させたり新しく誕生させたりしないようにするために有用な様々な情報を収集することを今回の総選挙の最優先課題と位置付けて取材を行うことにしたい。最後に「政治家としての能力」を比較的簡単に見抜くために役立つ2つの「道具」を提供して筆者にとっては非常に不本意な形での「第二幕」の予告編(Part2)(→参考:2005/5/17号etc.)を締めくくることにする。
 
 1つ目の「政治家としての能力」を見抜くために役立つ「道具」は、前回取り上げた「教育」である(→参考:2005/6/27号)。日本ではどんな候補者も例外なく教育を受けた経験があるのだから、非常に専門的な内容にまで踏み込むことはできなかったとしても、どんな候補者でも教育について語ることぐらいはできるはずである。そして一般的には政治家の教育観にはそれまでのすべての経験が凝縮されていると考えることができる。しかも日本では有権者の側も例外なく教育を受けているから、非常に専門的な内容にまで踏み込む必要がないのならば、誰でも実体験を踏まえながら政治家の資質・能力を判断することも不可能ではないということになる。「教育」は政治家の資質・能力を判断する指標としても「公共財」になっているのである。
 
 2つ目の「政治家としての能力」を見抜くために役立つ「道具」は、「優先順位」である。当たり前と言えば当たり前の話だが、限られた時間の中でできるだけ多くの成果を上げるためには「優先順位」というものが非常に重要になってくる。政治家が一つひとつの政策を十分に理解していなければ説得力のある「優先順位」を示すことはできないし、限られた時間の中でできるだけ多くの成果を上げることができる順番に並べるためには少なくともある程度の「政策を実現していく能力」も必要になってくる。つまりそれぞれの候補者たちに実現しようとする政策の「優先順位」を語らせてあまり説得力が感じられなければ、候補者自身が熱心に訴えている政策を実は十分に理解していないか、「政策を実現していく能力」が欠けているか、あるいはその両方ということになるのである。そしてもしも候補者がすぐには正しいかどうかを判断することが困難なことをもっともらしく言い出した場合には、筆者を含めた正しいプロ意識を持った政治ジャーナリズムが彼らの化けの皮をはぐ役割を担うことになるのである。
 
 繰り返しになるが、筆者にとっては非常に不本意な形で示す今回の文章が一人でも多くの人たちにとっての有用な「公共財」(→参考:2005/5/17号etc.)になることを希望している。できるだけ多くの候補者たちに「教育」と「優先順位」について語らせてこれからの日本にふさわしい政治家たちを間違いなく選び出してもらいたいものである。日本が「民主主義立国」(→参考:2005/6/27号)になるためには賢明な国民が必要不可欠である。できるだけ多くの有権者が投票に参加して賢明さを示してくれることを期待している。


(参考)前回からの動き(2005/6/27-8/26)

<日本の政治>
 
(郵政民営化関連法案)
 
 自民党総務会で郵政民営化関連法案の修正案を賛成多数で了承した(→6/28。全会一致の総務会での多数決は異例。なお法案には党議拘束がかかるという。修正案は窓口会社の業務範囲に「銀行業、生命保険業の代理業務」も例示、持ち株会社が郵貯銀行・保険会社の株式を保有し続けることを可能にする事項を金融2社の定款に盛り込む?、などでは条文修正、その他は国会答弁など)。郵政民営化関連法案は衆院郵政民営化特別委で可決され(7/4)、衆院本会議でも可決された(→7/5。原案から一部修正。賛成233、反対228(合計461)。自民、公明の賛成多数だが、自民から37人が反対(→綿貫民輔元衆院議長、堀内光雄前総務会長(派閥会長を辞任表明)、亀井静香元政調会長、平沼赳夫前経産相、藤井孝男元運輸相、野田聖子元郵政相ら)、14人が欠席・棄権(→高村正彦元外相、古賀誠元幹事長ら))。
 
 参院本会議で郵政民営化関連法案の趣旨説明と質疑が行われた(7/13)。小泉首相は郵政民営化に関するシンポジウムなどに出席した(→7/20。郵政民営化関連法案の参院での採決では、自民から確実に反対するのは10人前後、反対の可能性があるのが20人前後、などと票読み)。自民党の永岡洋治代議士(衆院茨城7区選出)が自殺した(→8/1、遺書などはなく自殺の理由は不明。ちなみに自民党総務会では郵政民営化法案に反対したが、衆院本会議での採決では賛成していたという)。小泉首相は郵政民営化反対派の動きは倒閣運動などと述べた(8/1)。参院郵政民営化特別委(→8/2。小泉純一郎首相が出席。小泉首相は特別委終了後に青木幹雄参院議員会長らと会談)が開かれた。また衆院本会議で「国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり、更なる国際平和構築への貢献誓約決議」が採択された(→8/2。自民、民主、公明、社民などの賛成多数で)。
 
 郵政民営化関連法案が参院郵政民営化特別委で可決された(→8/5。小泉首相も出席する締めくくり総括質疑後に可決)。小泉首相は首相公邸で森喜朗前首相と会談した(→8/6。森前首相は「さじ投げた」「変人以上」などと。ちなみに小泉首相は「殺されてもいい」などと言ったらしい)。また小泉首相は全国都市再生まちづくり会議全国大会であいさつした(→8/7、あすを控えて私の胸中はそんなにさわやかじゃないんですよ、などと)。
 
 参院本会議で郵政民営化関連法案が否決され(→8/8。賛成108、反対125、合計233。自民から22人が反対、8人が棄権・欠席)、小泉純一郎首相は衆院解散・総選挙を決断した(→8/30公示、9/11投票へ。小泉首相は衆院本会議で造反して郵政民営化法案に反対した37人を公認せず、全選挙区に候補者を擁立する方針を示す。そして小泉首相は公明党の神崎武法代表との与党首脳会談後の臨時閣議で解散を閣議決定(→小泉首相は解散に反対して辞表を提出した島村宜伸農相を罷免・兼務。解散決定の臨時閣議での閣僚罷免は初)。同日夜(19:00頃)に衆院本会議(→なお民主は内閣不信任決議案を提出)で河野洋平議長が解散詔書を朗読(→「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」と)・万歳三唱など)。再度の臨時閣議で総選挙日程(8/30公示、9/11投票)を決定。そして小泉首相は記者会見(→20:30頃。小泉首相は自民と公明で過半数を獲得できなければ辞任する考えを明らかに)した)。
 
(総選挙に向けた動き)
 
 民主党の岡田克也代表が民主党への政権交代が実現しない場合には代表を辞任する考えを明らかにした(8/9)。また社民党の横光克彦副党首(代議士)が離党届を提出、民主党公認候補として立候補へ(8/9)、また小池百合子環境相(比例近畿ブロック選出)が郵政民営化法案に反対した小林興起代議士と同じ衆院東京10区から立候補へ(8/9)。自民党の小里貞利元総務会長(鹿児島4区選出、8/9)が引退表明。
 民主党は政権交代後の政権運営などを示す「岡田政権500日プラン」を発表した(8/13)。また民主の郵政改革案として日本郵政公社の経営形態を今後2年間維持し、現在1000万円の郵便貯金の預入限度額を500万円まで段階的に引き下げること(→政権交代直後は700万円に)などをマニフェスト(政権公約)に明記へ(8/13)。民主党と公明党がマニフェスト(政権公約)を発表した(8/16)。社民党公認で元代議士の辻元清美氏が大阪10区から立候補へ(8/16)。
 自民党に離党届を提出した綿貫民輔・元衆院議長、亀井静香・元自民党政調会長、亀井久興・元国土庁長官、長谷川憲正参院議員、そして民主党を離党した田村秀昭参院議員(比例選出)の郵政民営化関連法案に反対した国会議員5人が「国民新党」を結成した(→8/17、民主党は8/18に田村氏を除籍処分に)。田中康夫長野県知事と小林興起(前)代議士、青山丘(前)代議士、滝実(前)代議士、荒井広幸参院議員の郵政民営化反対派議員4人が新党「日本」を結成することを発表(8/21)した。長谷川憲正参院議員が国民新党を離党して新党日本に入党(8/24)した(→所属国会議員5人となった新党日本は公職選挙法上の政党に。なお国民新党には8/23に津島恭一(前)代議士が入党しているので所属国会議員は5人いる)。
 郵政民営化法案に反対した八代英太(前)代議士が東京12区からの立候補を断念(8/18)した。社民党もマニフェストを発表(8/18)した。元代議士の鈴木宗男氏が北海道地域政党「新党大地」を結成して総選挙立候補へ(8/18)。
 自民党は政権公約(マニフェスト)を発表した(8/19)。また小泉首相はIT企業・ライブドア社長の堀江貴文氏と会談、堀江氏は亀井静香・元自民党政調会長の地元の広島6区から無所属で立候補へ(8/19)。橋本龍太郎元首相が政界引退を正式に表明した(8/20)。
 宮城県の浅野史郎知事が10/23投・開票の知事選に4選を目指して立候補しない意向を明らかに(→8/21、なお総選挙にも立候補せず)。
 自民党は290人を公認、広島6区を除いたすべての小選挙区で立候補する郵政民営化反対派(32人中31人)に対抗して公認候補を擁立した(8/23)。
 民主党は自民党に自民・民主の1対1の党首討論実施を提案(8/25)した(→自民党は受け入れない方向、など)。
 自民党と公明党は「連立与党重点政策」を正式に発表した(8/26)。
 
(日本の政治・その他)
 
 東京都議選の投・開票(7/3。6/24告示)が行われた(→投票率は43.99%(前回比-6.09ポイント)。過去最低だった前々回の40.80%に次ぐ低投票率。自民48(現有51)、民主35(同19)、公明23(同21)、共産13(同15)、生活者ネット3(同6)、社民0(同0)、無所属・その他5(同5)の合計127議席。民主が公明に代わって第2党に、自民は微減で第1党を維持)。
 日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事を巡る談合事件で東京高検は元公団理事ら計5人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕(7/12)、道路公団副総裁の内田道雄容疑者を独占禁止法違反(不当な取引制限)のほう助と背任の疑いで逮捕(7/25)、公団理事を独占禁止法違反(不当な取引制限)のほう助と背任の疑いで逮捕(8/1)した。
 経済産業省は東シナ海の天然ガス田開発で帝国石油に試掘権設定を許可(→7/14。日本が主張する日中中間線付近の試掘権。中国側は日本側の中止要求にもかかわらず開発を進め、データの提供も拒んでいる)。
 参院本会議で改正自衛隊法が可決されて成立した(→7/22。事前に作成した「緊急対処要領」に基づいて現場指揮官の判断で弾道ミサイルを迎撃することを可能にする、など)。
 朝日新聞(1/12付朝刊)が報じたNHKの従軍慰安婦特集番組への政治圧力疑惑で朝日新聞が7/25付朝刊に「検証」記事を掲載した(→7/25、「最も重要な点は、安倍氏ら政治家と会ってきたばかりの国会担当局長が、番組の修正を細部にわたって指揮していたことです。その修正内容は、番組を問題視していた政治家たちの主張に重なるものでした」などと。NHK、自民党側は圧力の存在などを否定、反論)。
 仙台市長選の投・開票(7/31)が行われ、新人の梅原克彦氏が元民主党代議士の鎌田さゆり氏らを破って初当選した(投票率は43.67%(前回比-12.59ポイント))。
 
 小泉首相は広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式(8/6朝)、被爆60周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に出席(8/9)した。そして小泉首相は60回目の終戦記念日で談話を発表した(→8/15、また小泉首相は千鳥ケ淵戦没者墓苑に献花、全国戦没者追悼式に出席。靖国神社参拝は「見送り」)。また小泉首相は新農水相に岩永峯一農水副大臣を起用(8/11)した。2006年度一般会計予算の骨格となる概算要求基準(シーリング)が臨時閣議で了承(8/11)された。
 2005年4-6月期の国内総生産(GDP、実質)は+0.3%(対前期比)で3期連続プラス成長であることが明らかになった(8/12)。また2005年1-6月の死亡数が出生数を約3万1000人上回って予想よりも2年早く2005年から人口減少社会に突入する可能性があることが厚生労働省の人口動態統計(速報)で明らかになった(8/23)。
 
 東京都杉並区教育委員会は2006年度から使用する中学校歴史教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」メンバーが執筆した扶桑社の歴史教科書を採択した(8/12)。
 
 小泉首相は英国のブレア首相とテレビ電話で会談した(→6/27。主要国(G8)首脳会議(グレンイーグルズ・サミット、7/6-7/8予定)でアフリカ支援と気候変動問題などでの協力などを確認。ちなみに小泉首相は地球温暖化対策のためノーネクタイ、ブレア首相はネクタイ)。
 小泉首相はグレンイーグルズ・サミット出席のため英国に向けて出発(→7/6。同日夜にスコットランド・グレンイーグルズに到着、歓迎行事など。カナダのマーティン首相と会談)、7/7未明(日本時間)に主要国(G8)首脳会議(グレンイーグルズ・サミット、7/6-7/8)が開幕 (→ちなみにロンドン同時テロ(7/7)発生時に小泉首相はサミット出席中(→ロンドン同時テロを非難するコメント、プーチン大統領と日ロ首脳会談(→大統領訪日は韓国・釜山で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議後の11/20からの3日間に)。なお予定されていた日英首脳会談は中止に)、7/8に議長総括を発表して終了した(→サミットの主要議題はアフリカ支援と気候変動(地球温暖化)問題。G8は2010年までにアフリカ援助を年間250億ドル上積みして倍増(途上国援助全体では500億ドルに)。なお小泉首相は今後5年間で100億ドルの政府開発援助(ODA)増額、3年間でアフリカ支援倍増を表明している。また北朝鮮に6カ国協議への即時復帰・日本人拉致事件の早期解決を求めることなども明記。ロンドン同時多発テロを受けてテロ対策の声明も。なお中国、インドなどの新興国も招待された)。サミット終了を受けて小泉首相は7/9未明(日本時間)に記者会見(→小泉首相は北朝鮮が近く6カ国協議に復帰するのではないかという見方を示す。予定時間オーバー後も「まあいいじゃないか」「プリーズ」などと外国メディア記者の質問に応じる場面も)。小泉首相は7/9に帰国)。
 
 小泉首相はソロモン諸島のケマケザ首相(7/11)、米国のライス国務長官(7/12)、バングラデシュのカレダ・ジア首相(7/14)、米国のパウエル前国務長官(7/19)、ウクライナのユーシェンコ大統領(7/21)、パキスタンのアジズ首相(8/10)とそれぞれ会談した。また小泉首相は宇宙滞在中のスペースシャトル「ディスカバリー」の日本人宇宙飛行士・野口聡一さんらと交信(8/4)した。
 
 モスクワで開かれた国際熱核融合実験炉(ITER)計画に参加する5カ国・1地域の閣僚級会合でITER本体の建設地をフランスのカダラッシュに決定した(→6/28。日本は断念した見返りとして関連施設建設などで優遇措置)。
 太平洋戦争の戦没者慰霊のために天皇皇后両陛下がサイパン島を訪問した(→6/27-28。両陛下の海外での戦没者慰霊は初。多くの日本人が身を投げた「バンザイクリフ」などで黙とう。事前に公表された日程表になかった「おきなわの塔」「韓国平和記念塔」にも)。
 町村信孝外相がライス国務長官と会談した(→7/28、日本などの国連改革・安保理拡大案に米国は賛成できない立場を改めて示す)。
 日本とタイが自由貿易協定(FTA)で基本合意した(8/1)。
 
<韓国・北朝鮮関係>
 
 ニューヨークで行われた米シンクタンク主催のセミナーで米国と北朝鮮が接触した(→7/1。事実上の6カ国協議の非公式会談となったが再開などで成果なし。米国のデトラニ朝鮮半島担当特使、外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官ら関係国の政府高官などが出席。6/29-7/1)。北朝鮮が7/25の週に6カ国協議を再開することで米国と合意したことを発表した(→7/9。参考:中国・北京での北朝鮮の金桂寛(キム・ケグァン)外務次官と米国首席代表の米国のクリストファー・ヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が7/9に中国・北京で会談、合意。米国側は北朝鮮を「主権国家」と認め、侵攻する意思はなく、6カ国協議の枠組み内で二国間協議を行うとの立場を公式に表明、北朝鮮側は米国による北朝鮮に対する「圧政の拠点」発言などの撤回と理解して6カ国協議再開に応じることにしたらしい。なお米国のライス国務長官が中国訪問中。ちなみに中国は6カ国協議復帰説得などのために唐国務委員(前外相)を7/12-14まで北朝鮮を訪問させる予定だった)。
 韓国政府は北朝鮮が核放棄に合意すれば200万キロワット(KW)の電力を韓国から北朝鮮に直接供給する構想を「重大な提案」として北朝鮮に示していたことなどを発表した(7/12)。北朝鮮を訪問した中国の唐国務委員(前外相)が金正日総書記と会談(7/13)した。また韓国を訪問した米国のライス国務長官は潘基文・外交通商相と共同記者会見した(7/13)。北朝鮮の核問題などを協議する6カ国協議が7/26から北京で始まることを中国政府が正式に発表した(→7/19。閉幕日は未定?)。
 
 中国・北京で北朝鮮の核問題などを協議する6カ国協議が約1年1カ月ぶりに開幕したが(→7/26。初日は各国の冒頭発言。北朝鮮の金桂冠(キムゲグァン)外務次官は朝鮮半島の非核化に向けた「戦略的決断」の用意などと。米国のヒル国務次官補は北朝鮮の主権を事実と認め、北朝鮮に侵攻・攻撃する意図はないなどと。米朝二国間交渉も。北朝鮮は昨年6月の米国提案に回答したらしい。日本の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局は核・ミサイル・拉致などの包括的な解決を目指す方針を表明。北朝鮮との二国間協議のメドは立たず。なお中国、韓国、ロシアが拉致問題を議題に取り上げることに反対したという。協議は二国間協議が中心)、13日目(7/26-8/7)に合意文書なしに休会した(→8/7、再開は8/29の週か。なお外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長は北朝鮮の金桂冠外務次官と会談。日本人拉致問題などで誠意ある対応を求める日本側の主張を北朝鮮は本国に正確に報告するなどと)。
 北朝鮮を訪問(8/14-17)したロシアのプリコフスキー極東連邦管区大統領全権代表と金正日総書の会談内容などを明らかになった(→8/17、金総書記は6カ国協議で各国は問題への理解を深めたなどと。核の平和利用を進める考えも示したという)。
 
 韓国で永住外国人に地方選挙権を付与する改正公職選挙法が成立した(7/20)。日本による植民地支配からの解放60年を記念する韓国と北朝鮮の共同行事「民族大祝典」がソウルで開幕した(8/14)。
 
 米国のブッシュ大統領が北朝鮮の人権問題を担当する特使にジェイ・レフコウィッツ元大統領副補佐官を起用することが明らかになった(8/19)。
 米司法省が米国に偽ドル札や覚醒剤などを密輸しようとしたアジア系犯罪組織をおとり捜査などによって一斉検挙(→約60人を逮捕)、北朝鮮製と見られる偽100ドル札などを押収したと発表した(8/22)。
 
<中国・台湾関係>
 
 ロシアを訪問した中国の胡錦濤国家主席とプーチン大統領がクレムリンで会談した(→7/1。米国の一極支配などをけん制、日本などの国連改革案に慎重な姿勢を示すなどの内容の共同宣言)。ロシアと中国の初めての大規模な合同軍事演習が行われた(→8/18-25。ウラジオストクで始まり、中国・山東半島と周辺海域に移して上陸作戦などを実施(8/24))。
 
 中国を訪問した米国のライス国務長官は胡錦濤国家主席、温家宝首相、李肇星外相らと北京で会談した(→7/10。北朝鮮の核問題などを協議する6カ国協議について)。中国海洋石油は米石油大手ユノカル買収を断念することを発表した(8/2)。

 経済産業省は東シナ海の天然ガス田開発で帝国石油に試掘権設定を許可した(→7/14。日本が主張する日中中間線付近の試掘権。中国側は日本側の中止要求にもかかわらず開発を進め、データの提供も拒んでいる)。
 中国・遼寧省大連市の税関当局が中国の出版管理条例違反などの理由で大連日本人学校が日本から取り寄せた社会の副教材を差し押さえて罰金を科していたことがなど明らかになった(→6/28。中国大陸と台湾を別の色で示した地図が含まれていたという)。
 台湾の最大野党・国民党の主席選挙で馬英九・台北市長が当選(7/16)した。
 
 中国人民銀行(中央銀行に相当)が人民元切り上げを発表した(→7/21。1ドル=8.2765元から1ドル=8.11元に。ドルだけではなくユーロや円なども含めた複数通過の動きを参考に調整する「通貨バスケット制」も採用。米国などへの一定の配慮と国内での過剰投資対策か)。
 
<イラン関係>
 
 6/24に投票が行われたイラン大統領選の決選投票で保守強硬派のアフマディネジャド・テヘラン市長が有力と言われていた保守穏健派のラフサンジャニ前大統領を大差で破って当選し、新大統領に就任した(8/3)。
 イランが欧米の提案などを拒否して同国中部イスファハンのウラン転換施設を再稼働し、国際原子力機関(IAEA)に通告した(8/8)。そして国際原子力機関(IAEA)理事会はイランに転換作業の中止を求める非難決議を採択した(8/11)。
 
<イラク関係>
 
 イラク暫定政府への主権移譲から1年になった(6/28)。イラク新憲法草案策定は難航、延期を繰り返した(→8/15に1週間延期を決定。連邦制やイスラム教の位置づけなどで各派の意見が対立。さらに3日間延長(8/22)。3度目の延期(8/25))。
 イラク・サマワの陸上自衛隊宿営地周辺で複数の砲弾?が発射され、うち一発が宿営地内に着弾したが被害はなかった(→7/5。宿営地周辺には4発の着弾痕)。イラク・サマワで7/24深夜に脅迫を受けて解散を決めたばかりの日本友好協会の前会長経営の宝飾店が爆破された(7/25)。サマワで不十分な電力供給や失業対策などに抗議するデモが発生、警察と衝突した(→8/7、1人が死亡、50人以上がけが)。陸上自衛隊第7次イラク復興支援群の第1陣が宿営地入りした(8/12)。
 
<サミット、同時テロ>
 
 シンガポールで開かれていた国際オリンピック委員会(IOC)総会で2012年の夏季五輪開催地がロンドンに決まった(→7/6。パリ、マドリード、ニューヨーク、モスクワを破る。4回目の投票(決選投票)はロンドン54票、パリ50票。サミット直前のブレア英首相もシンガポール入りして熱心に招致活動)。
 主要国(G8)首脳会議(グレンイーグルズ・サミット、7/6-7/8)の最中にロンドンで同時多発テロが発生した(→7/7朝(9:00頃、日本時間同日夕(17:00頃))。約1時間の間に地下鉄・バス合計4カ所で爆発(→7/9。当初の発表とは違って地下鉄の爆発がほぼ同時(7/7,AM8:50頃)だったことが明らかに)、死者は50人以上、700人以上がけが。サミット議長のブレア首相はG8首脳らと共にテロ非難声明を発表後、スコットランド・グレンイーグルズからロンドンに戻る(→国民向けテレビ演説も。サミットは続行)。英捜査当局は実行犯と見られる4人を特定した(→7/12、全員が自爆死か?)。
 ロンドンで再び同時爆破テロが発生した(→7/21(13時前、日本時間同日21:00前)。7/7の同時多発テロと同じ「地下鉄3カ所とバス」で軽い爆発と爆発未遂。けが人は少数。模倣犯の可能性も)。ロンドン警視庁はテロ容疑者4人の監視カメラの映像を公開した(7/22)。そして警察は追跡していたテロ容疑者と見られる男性1人を地下鉄内の一般客の目の前で射殺(7/22)したが、事件とは無関係だったことが明らかになった(→7/23。射殺されたのはブラジル国籍の男性)。
 パキスタンのムシャラフ大統領はロンドン同時多発テロ事件などの捜査への国民の協力をラジオ演説で呼びかけた(→7/21、なおパキスタンではイスラム神学校の取り締まりなどが強化されている)。
 
<その他>
 
 フィリピンのアロヨ大統領は2004年5月の大統領選開票時に選挙管理委員会幹部に電話をかけていたことをテレビで認めて国民に謝罪した(→6/27。ただし不正疑惑は否定)。
 ミャンマーが2006年から就任予定だった東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を辞退したことが明らかになった(7/26)。
 約30年続いたインドネシア・ナングロアチェ州の独立紛争をめぐってインドネシア政府と「自由アチェ運動(GAM)」が和平案に暫定合意(7/17)、和平協定が調印された(→8/15。フィンランド・ヘルシンキで調印式。GAMの武装解除、国際監視団の受け入れ、地方政党設立を認めるなどの内容)。
 
 ドイツ連邦議会はシュレーダー首相の信任決議案を否決、首相は大統領に解散を要請(→7/1。総選挙を実現するためシュレーダー首相の与党側があえて棄権して否決)し、9月に総選挙が行われることになった(→9/18投・開票に)。
 欧州連合(EU)憲法条約批准の是非を問うルクセンブルクの国民投票の投・開票が行われて賛成多数で批准を承認した(7/10)。ボスニア・ヘルツェゴビナ東部のスレブレニツァでイスラム教徒の男性約8000人がセルビア人武装勢力に虐殺された事件から10年になった(7/11)。
 
 米国のブッシュ大統領は連邦最高裁判事に保守派のロバーツ氏を指名した(7/20)。中東訪問中のライス米国務長官がイスラエルのシャロン首相と会談(7/22)、急きょレバノンを訪問してシニオラ新首相らと会談(7/22)、さらにヨルダン川西岸でパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談(7/23)した。またブッシュ大統領は国連大使にボルトン前国務次官を任命した(→8/1、閉会中は上院の承認を必要としない規定を利用した異例の暫定的任命。国連批判を繰り返したネオコンのボルトン氏の起用には民主にも共和にも反対が少なくない)。
 
 7/10に投・開票が行われたアカエフ政権崩壊を受けたキルギス大統領選でバキエフ大統領代行兼首相が当選することが確実になった(7/11)。
 
 スーダン暫定政府発足した(→7/9。20年以上続いたスーダン南部の内戦終結を受けたバシル政権と南部の元反政府勢力・スーダン人民解放軍(SPLA)による暫定政府)。
 エチオピア・アディスアベパで開かれたアフリカ連合(AU)臨時首脳会議で国連安全保障理事国拡大での日本など4カ国との決議案一本化に向けた合意は得られなかった(8/4)。
 
 エジプト・シャルムエルシェイク(シナイ半島のリゾート地)で同時爆破テロが発生した(→7/23未明(日本時間同日朝)。ホテル、駐車場、市場の3カ所でほぼ同時に車が爆発。ホテルには車が突っ込んで爆発したという(自爆テロ?) 。88人が死亡)。
 サウジアラビアのファハド国王が死去、新国王にはアブドラ皇太子が就任した(8/1)。
 イスラエルはパレスチナ・ガザ地区からの撤退を開始(8/15)し、イスラエル人入植地の強制退去を完了した(8/22)。


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