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 最近の日本の政治情勢について(2003/6/29更新)

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あえて何度でも同じ主張を繰り返す(2003/6/29)

「出口」は未来にはあるはず(2003/6/1)

核放棄と体制保証の交換は最低・最悪の結果を招く(2003/4/30)

まだ諦めてはいけない(2003/3/22)

「優先順位」と「本質」を決して見誤ってはならない(2003/3/10)

「言葉遊び」ではなく具体的に物事を成し遂げていくことが必要(2003/2/11)

誤った「処方箋」と「コンプレックス」は破局を招くだけ(2003/1/13)

北朝鮮は「谷底」に落ちる以外の選択肢を自ら捨て去るつもりなのか?(2003/1/5)

 最近の日本の政治情勢について(2002年)

▽参考:日本の政治


あえて何度でも同じ主張を繰り返す(2003/6/29)

 この約1カ月の間もパッとしたことは何もなかった。相変わらず日本の政治についても国際社会についても論じるに値すると心から思えるような出来事は起こっておらず、「今という時代」における「爆発」の危険度は高まり続けているように思える。「起爆剤」や「口火」が「爆発」を引き起こす可能性が高まっていく一方、有効な「風穴」が開いたかどうかも十分に確認できないような状態で劇的な変化が起こるまで何度でも同じ主張を繰り返していくということは想像以上に非生産的な活動だということを実感している(→参考:2003/6/1号)。しかし、使命感が希薄でしかも十分な見識と能力を持たない政治家たちや既存のマスコミを見れば見るほど、例えば、「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である。もしこの世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは、およそ可能なことの達成もおぼつかないというのは、まったく正しく、あらゆる歴史上の経験がこれを証明している」(「職業としての政治」、マックス・ヴェーバー著、脇圭平訳、岩波文庫)などという表現がなぜか力強くよみがえってくるから不思議なものである。

 今回も引き続き有効な「風穴」を開けることによって「今という時代」における「爆発」の危険度を少しでも下げることを目指すことにする。従って以下の記述では、前回(→参考:2003/6/1号)用いた「出口」という言葉をあえて「入口」とか「きっかけ」と言い換えて目先を変えたいくつかの新しい具体的な提案などを行っている以外には基本的に新しい内容はなく、ただ単にこれまでに何度も繰り返してきた一連の主張をくどいことを十分に承知の上でそれでもあえて繰り返しているだけにすぎないということをまず最初に断っておくことにする。

国際的な北朝鮮包囲網

 北朝鮮による核兵器開発・保有・拡散などの実態は不明のままであるし、その他の一連の北朝鮮問題でも事態の性質を大きく変化させるような本質的な動きは何も起こっていないが、米国を中心とする外交などを駆使した国際的な北朝鮮包囲網を構築する動きが活発になってきているし、北朝鮮による拉致などの人道上の問題の重要性についても徐々に国際社会の理解が深まってきている。具体的な表現には多少の違いはあるが、エビアン・サミットの議長総括(6/3)、東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)の議長声明(6/18、ちなみに北朝鮮も出席)などで北朝鮮の核兵器開発放棄を求めたり、北朝鮮による日本人拉致問題の解決を目指す日本の立場を支持するなどの表現が盛り込まれた。さらに米国は北朝鮮の核兵器開発を非難する国連安保理の議長声明の採択に向けて他の常任理事国に草案を示すなどの動きを示しているし(→北朝鮮は白南淳(ペクナムスン)外相名で6/27に国連安保理に書簡を提出)、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が北朝鮮に建設している軽水炉建設事業の中止を求める方針を固めたと伝えられたり、大量破壊兵器などの輸出を阻止するための国際的な臨検での連携の実現を目指すなど、外交などを駆使した国際的な北朝鮮包囲網の構築を進めているようである。

 また北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が新潟西港への入港を突然中止(6/9)したり、日本側による船舶の安全検査「ポート・ステート・コントロール」(PSC)の厳格な実施を含めた条約や現行法を駆使した検査・監視態勢が強化されたために北朝鮮の貨物船などが安全面の不備を指摘されて改善を求められたり入港を拒否される事例も相次いでいる。ちなみに北朝鮮側は日本側の検査態勢の強化を「圧力」などと批判しているようだが、安全面に問題のある船舶が領海内や港湾内で座礁事故を繰り返し起こし、撤去費用の支払いや損害賠償に一切応じないなどというとんでもない事例も相次いでいることから日本側が検査態勢を強化せざるを得ないという事実を北朝鮮にはまずしっかりと理解してもらいたいものである。

 その他の北朝鮮問題に関連する動きについても簡単に触れておく。韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が来日(6/6)、小泉純一郎首相と首脳会談(6/7)を行った(→北朝鮮の核兵器開発問題の平和的解決、日米韓3カ国などの連携で一致。また北朝鮮に対しては対話と圧力が共に必要なことでも一致するが、韓国は対話に重きを置きたいと)。北朝鮮の核兵器開発問題を協議する日米韓3カ国調整グループ会合(TCOG)が行われていた同じ日(6/14)に韓国と北朝鮮は軍事境界線上で鉄道の連結式を行った(→京義線と東海線。ただし北朝鮮側の工事が大幅に遅れているために開通は当分先の話)。そして金大中前大統領が南北首脳会談の共同宣言発表3周年を記念するインタビュー番組の中で北朝鮮の金正日総書記が2000年11月にクリントン前米大統領から米国訪問を求められたが断っていたことを明らかにした(6/15)直後に韓国の特別検察チームは2000年の南北首脳会談前後に行われた現代グループの北朝鮮への不正送金事件に絡んで金大中前大統領の側近・朴智元(パク・チウォン)元文化観光相(前大統領秘書室長)を逮捕(6/18)、5億ドルの送金のうち1億ドルは金大中前政権が首脳会談の見返り(?)として北朝鮮に送ることを約束していた肩代わり分だったことを明らかにして捜査を終結した(6/25)。なお韓国を訪問した北朝鮮による日本人拉致被害者の家族らがソウル市内で1997年に北朝鮮から亡命した黄(→ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記、金泳三・元大統領と面会(6/25)した。

あのソ連はなぜ崩壊したのか?

 北朝鮮の核兵器開発問題を考える場合には、かつて北朝鮮を強力に支援し続けたあのソ連がなぜ崩壊したのかということもしっかりと思い出してみる必要があるだろう。ソ連は米国と激しく競争して核兵器を含めた軍事的な均衡を維持し続けようとしたあげくに経済的な破たんに追い込まれたのではなかったのか。まじめに冷静に考えてみれば、あのソ連にも不可能だったことが北朝鮮なんかにできるわけがないということにほとんどの人たちはすぐに気付くはずである。歴史的に見ても米国は自らの脅威ではないことにはかなり寛容だが、自らの脅威に対しては寛容さのかけらもなく、より大きな脅威になる前に場合によっては問答無用で阻止しようとしてきたはずである。特にブッシュ現政権は「悪い芽」は早めにあらゆる手段を駆使して徹底的に摘み取ろうとするはずである。そしていかなる国も軍事的な手段だけで米国が間違っても手出しができないような状態を維持することは事実上不可能である。

 あえて繰り返すが、北朝鮮が核兵器開発放棄と体制保証を交換しようなどと米国に求めるような無茶苦茶なことは国際社会が断じて認めないし、仮に米国から体制保証の約束を取り付けるようなことができたとしても、実際に体制保証をするかどうかを決めるのは独裁政権に人権を蹂躙されている北朝鮮の人たち自身だから彼らから心からの約束でも取り付けない限り体制保証は全く何の意味も持たないはずである。さらにもしも核兵器を保有したとしても北朝鮮は米国と競争して軍事的な均衡を維持し続けるようなことはとうてい不可能なので核保有によっても体制が保証されることは絶対にあり得ない。何がどうなろうとも北朝鮮が核兵器開発・保有・拡散を検証可能かつ不可逆的な方法で即時・完全に放棄しない限り北朝鮮が進もうとするすべての道は破滅につながっているということは明らかである。どうして北朝鮮はこんな当たり前すぎるぐらい当たり前のことが理解できないのだろうか…。核兵器開発・保有・拡散を検証可能かつ不可逆的な方法で即時・完全に放棄しない限り破滅するということを気付かせるためには北朝鮮の目を覚まさせる「きっかけ」になると考えられるすべての非軍事的な手段を駆使する必要があるが、あまり過激なものを使わないうちに目を覚ましてもらいたいというのが国際社会の大多数の本音だと思っている。とにかく北朝鮮は一刻も早く目を覚まして国際社会の責任のある一員になろうとすべきである。

 北朝鮮が目を覚まして国際社会の責任のある一員になるためには、もしかしたら国際社会への「入口」とか、国際社会の責任のある一員になる「きっかけ」といったような「アメ」のようなものが必要なのかもしれない。ここで現時点では実現性の乏しい北朝鮮にとって「入口」や「きっかけ」になるかもしれない2つの提案をしておくことにする。

 (1)2008年の北京五輪時に一部の競技をすべての観客や選手が北京以上の待遇を受けられることを条件にして北朝鮮・平壌で行うことによって事実上の「共催」にすること(→例えば、日本、米国、韓国で人気のある野球を「共催」にすれば、北朝鮮は2008年までの体制保証が事実上約束され、また国際社会の一員になるメリットを実感してもしかしたら核兵器開発を放棄したり拉致などの人道上の問題も解消することを含めて生まれ変われるかもしれない。ちなみに「共催」が不可能ならば五輪の時期に合わせて親善試合を行えばいい)、(2)北朝鮮の金正日総書記が「お忍び」で韓国と日本を訪問して民主主義社会の現状を「一市民」としてじっくりと目に焼き付けた後で小泉首相と盧大統領と共に「一市民」として映画好きにはたまらないハリウッドにでも旅行に出かけること(→金総書記は韓国訪問の約束を守るべきだし、日本にもお返しに最低でも日帰りぐらいではやって来るべきである。ちなみに上手くいけば、大親友の小泉首相に会いに来た「一市民」のブッシュ大統領にも会えるかもしれない)。胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席をはじめとする中国の指導部、韓国の盧大統領、米国のブッシュ大統領、そして日本の小泉首相らの決断と柔軟な発想に強く期待してあえて荒唐無稽な2つの提案をしておくことにする。

「民主主義の素晴らしさ」と「結果責任」

 イラクなど中東情勢でもうんざりするような膠着状態が続いている。現時点(6/29)においても、相次ぐ米英軍などに対する攻撃も含めてイラク国内の治安・秩序等の回復は十分ではないし、またフセイン前大統領らは行方不明のまま、そして戦争開始の最大の理由となった大量破壊兵器等も発見されないままである。特にいまだにイラクの大量破壊兵器等が発見されないことについては米英両国内でも徐々に批判が強まり、政権が戦争を正当化するために情報操作等を行ったのではないかという疑惑に発展するなどという形でブッシュ米大統領とブレア英首相が日増しに厳しい立場に追い込まれて重大な政治問題になりつつある。

 また大量破壊兵器等の未発見と共に「爆発」の「口火」になりかねないと考えているイスラエルとパレスチナの問題では危険な綱渡りの状態が続いている。ブッシュ大統領、イスラエルのシャロン首相、パレスチナ自治政府のアッバス首相がヨルダンで初めて会談して新しい中東和平プロセスが始動(6/4)したが、イスラエル軍がイスラム過激派「ハマス」幹部らをミサイル攻撃(6/10)したことをきっかけにイスラエルとパレスチナの間で再び暴力の応酬が活発化した。そして米国などの仲介によってハマスがイスラエルへの攻撃を停止、イスラエル軍もガザ地区から撤退する方向(6/27)になったが、まだまだ安心できない目の離せない状態が続いている。いずれにしてもイスラエルとパレスチナの問題では米国が「えこひいき」を続けてもさじを投げても悪夢が続くということだけは歴史がハッキリと示していることである。

 さらに国際原子力機関(IAEA)の理事会がイランに核計画の全容についての情報提供と抜き打ち査察などを可能にする追加議定書の即時・無条件の締結を求める議長総括を発表(6/19)するなど、イランの核兵器開発疑惑が米国に限らず国際社会全体の新たな懸念材料としてクローズアップされてきている。

 イラクの大量破壊兵器の問題の真相や今後の展開、イスラエルとパレスチナの問題の行方については現時点ではあえて詳細にまで触れる意味はないと私は考えているが、ブッシュ大統領やブレア首相には「民主主義社会の素晴らしさ」と「政治は結果責任であるということ」を国際社会を強く意識しながらハッキリと示してもらいたいものである。念のために言っておくが、どこかの唯一の超大国の大統領のように「大量破壊兵器の疑惑施設は略奪にあった」などと言ったり、イラク戦争で米国をいち早く支持したどこかの国の首相のように「フセイン前大統領が行方不明だからと言っても戦争前に大統領が存在しなかったことにはならない」などと言ったりしても、ユーモアのセンスはそれなりにあると感じられるかもしれないが、民主主義社会の指導者としてのセンスは強く疑われるばかりである。民主主義社会の有力な指導者であるブッシュ大統領やブレア首相、そして小泉首相も何らかの間違いがあったのならばその間違いや責任の所在などについて可能な限り国民や国際社会に納得できる形で詳細に説明しなければならないし、間違いがあったのかなかったのかは別にしても、自らの決断がイラクなどにいったい何をもたらしたのかという「結果」についての責任からは決して逃れることはできないはずである。間違いや「結果」がやむを得ないものだと国民や国際社会から理解されることもあればそうでない場合もあるだろうから彼らの具体的な責任の取り方については現時点では触れることはできないが、民主主義社会の有力な指導者たちの姿勢は国際社会の責任ある一員になることが強く求められている「極東の非人道的な独裁国家の指導者」にとって国際社会の「入口」にも「きっかけ」にもなるということをあえて付け加えておくことにする。

やはり何度か選挙を繰り返すという正攻法以外にはない

 最後にどうしようもない日本の政治についてもやはり触れておくことにする。有事関連法が成立(6/6)後、通常国会の会期が7/28まで40日間延長(6/17)され、焦点は新たに提出(6/13)されて審議入り(6/24)したイラク支援法案などに移っている。例によって例のごとく自民党と民主党の修正協議がどうのこうのという話になっているが、非常に乱暴な言い方をすれば修正協議があってもなくても、あるいは協議で合意が成立してもしなくても大した意味はないのかもしれない。私に言わせるとイラク支援法案は修正協議のための「のりしろ」だらけの法案どころか、法案の骨子は「旗」と「ブーツ」だけでできているような法案だから、小泉首相らがとにかく日本が「旗」を見せながら「ブーツ」でイラクの地面を踏みしめることができさえすればそれで良いと開き直るのならば修正の余地は非常に多いのだろうと見ている。大多数の国民や国際社会の理解が得られるかどうかはともかくとしても、小泉首相が突出して米国支持を表明した以上、筋を通して米国を徹底的に支持して日本も戦後のイラクに責任を持つというのもそれはそれで一つの考え方であることは確かではある。

 その他にも経済財政諮問会議が経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(→「骨太の方針・第三弾」)を決定したり、共産党の筆坂秀世参院議員(政策委員長)の酒席での性的嫌がらせが明らかに(6/24)なって引責辞職(6/27)したりするなどの詳細になればなるほどどんどん不明になっていくものとか、愚かな政治家たちの問題発言や不祥事、自民党総裁選絡みのくだらない動きや相変わらずの野党の愚かな動きなどがいくつかあったようだが、すべて論じるに値しない出来事として「黙殺」することにする。

 あえて繰り返すが(→参考:2003/6/1号)、現時点においては「ポスト小泉」は事実上存在しないし、また政権交代、特に既存の野党による政権交代も不可能な状態だと断言しても構わない。「マニフェスト」(→有権者と契約した政策。政権公約、など)を作ったとしても作らなかったとしても、どうやら指導者として疑問符が付いていても菅直人代表を首相候補に掲げるらしい民主党という主義・主張が完全にバラバラな野党第一党では単独でも、あるいは既存の野党間で政策的な一致を後回しにした「談合」による選挙協力を進めて事実上の細川連立政権の再現を目指したとしても、政権交代はまず不可能である。政策の一致を後回しにしたいかなる戦略も敗北と破滅しか導き出さないことは歴史が示している。政策の一致を後回しにした勢力が万一間違って一時的に勝利したとしてもすぐにバラバラになり、選挙の洗礼を受けずに自社さ連立政権が発足したようなある意味で国民に対する「クーデター」のような事態が繰り返されるだけだろう。やはり何度か選挙を繰り返して無能な政治家たち、政策の一致をないがしろにするいいかげんな政治家や政党を淘汰していくしかない。

 ちなみに未婚経験がそれなりに長くなっている筆者としては、他人からいくらプロポーズをする「勇気」がないなどと言われても「集団レイプ」をするような「元気」は全く出てこないし、さらに言えば、「美人局」を仕掛けたり巻き込まれるような「情熱」も全く持ち合わせていないが、将来に対して無責任な政治家たちや無能な政治家たちなどを永田町周辺から追放するために必要な「勇気」や「元気」や「情熱」はあり余るほど持っているから実に不思議なものである。別に特定政治家に限った話ではないが、発言が事実だとすれば政治家として不適格どころか社会人としても失格な人間たちが永田町周辺にはゴロゴロいるということは多くの人たちにとってはもはや「常識」になっているのではないか。政治家として不適格だったり、社会人としても失格だったりする人間たちを一人でも多く永田町周辺から追放する意味でも衆参同日選は望ましい選択であると考えている。参議院から職員や議員によるセクハラを根絶することにどれだけ貢献できるかは定かでないが、衆参同日選になれば少なくとも総選挙で落選した元代議士が「衆議院の二軍」として参議院議員にくら替えして復活するなどというおかしなことが大幅に減少することだけはほぼ間違いない。やはり「爆発」寸前の日本の政治における「風穴」は、有権者にとって魅力的な候補者が存在する状態で何度か選挙を繰り返すという正攻法以外にはないのかもしれない(→参考:2003/6/1号)。時間はかかるかもしれないが、正攻法でしか日本の政治をまともなものに変えていくことはできないのかもしれない。

 日本でただ一人解散の時期を決めることができる小泉首相には最低でも日本の政治における「爆発」の危険性ぐらいは十分に意識してもらいたいものである。有権者にとって魅力的な候補者が存在する状態で何度か選挙を繰り返すことができなければ、「やはり選挙でも政治は変わらない」とそう遠くない将来に何らかの形で「爆発」が起こるという最悪の事態にまた一歩近づくことになってしまうはずである。


「出口」は未来にはあるはず(2003/6/1)

 前回から約1カ月が経過したが、北朝鮮とイラクの問題を含めた国際社会でも、日本の政治でも論じるに値すると心から思えるような出来事はまだ起こっていない。どんなに多くの人たちが様々な深刻な問題の早期解決を強く望んだとしても、膠着状態が続き…、いや、客観的に見れば、むしろ悪化していると言うべきだろう。実はかなり多くの人たちが現時点では無力感と失望感を感じてストレスを溜めながらも何もできずにただ黙って見ているだけなのかもしれない。このままではいつかどこかで大きな「爆発」が起こっても何の不思議もないと私は感じている。もちろんすべての問題で解決に向けた試みがことごとく失敗に終わり、もはや打つべき手が完全になくなっている状態ではまだない。問題解決の方向に向けて着実に進んでいると考えられるものもあるが、その一歩一歩は非常に微々たるものであるし、全体的に見ればやはりほとんどすべての問題で時間の経過とともにジリジリと後退を余儀なくされていると私は見ている。実際にどうなるかはおそらく誰にも分からないのだろうが、現時点でもいつかどこかで大きな「爆発」が起こっても何の不思議もないという危機意識ぐらいは持っていた方が良いと私は思っている。

 北朝鮮やイラクの問題でも、日本の政治でも、私の主張と現実の間のギャップも時間の経過と共にどんどん大きくなっているが、それでもこれまでの私の主張の根幹部分は変わらない。北朝鮮とイラクの問題、日本の政治におけるこれまでの私の主張を現実とのギャップを含めて整理しながら、可能性のある大きな「爆発」とは何か、その「口火」や「起爆剤」となるの何か、「爆発」を回避したり被害を最小限に抑えるために必要な「風穴」となるのは何か、「風穴」を開けるためには何が必要かなどということについて今回は論じることにする。

 今現在がもはや打つべき手が何もない「出口」が全く見えない完全な閉塞状態だと感じる人たちが増えていき、社会全体が短絡的な思考に基づいて爆発する、もしくは「キレる」ことだけは断固阻止したいと私は強く思っている。後からまた触れることになるが、たとえどんなに「出口」が見えない閉塞状態になったとしても、現時点でやれることをしっかりとやっておきさえすれば、ほとんどの場合には未来に「出口」が見えてくると私は考えている。もちろんただ単に物事を先送りするだけでは「出口」が未来に見つかるわけがないが、現時点でやれることをしっかりとやっていれば未来に「出口」を発見することができるはずなのである。もちろんこのことは確たる根拠のない単なる私の個人的な経験に裏付けられた主観的な事実あるいは思い込みに過ぎないことは十分に良く理解しているが、社会全体が短絡的な思考に基づいて爆発する、もしくは「キレる」ことよりもずっとましなことだと私は考えている。だからこそこれまでも私は多くの問題で未来にあるはずの「出口」を完全に消し去ってしまう未来や将来世代に対して無責任極まりないことを厳しく批判し続け、そうした未来や将来世代に対して無責任極まりない動きを断固阻止するために必要な様々な主張を何度も繰り返してきているのである。

新たな有効な「風穴」は米国の民主主義

 まずは前回以降のイラク関連の動きについて触れておく。米国沖の空母上でブッシュ大統領がイラク戦争の戦闘終結を宣言(5/2)した。国連安保理は米英による占領・暫定統治機構設立主導を事後承認すると共に国連が特別代表任命や活動調整で関与するなどの内容の対イラク経済制裁解除決議を採択(5/22)した。現時点(6/1)においてもイラク国内の治安・秩序等の回復は十分ではないし、相変わらずフセイン大統領らの行方も不明のまま、そして戦争のそもそもの原因となった大量破壊兵器もいまだに発見されていない。なおサウジアラビア・リヤドの外国人居住地で連続爆弾テロ(5/13)、モロッコ・カサブランカの中心部で連続爆弾テロ(5/17)がそれぞれ発生し、国際テロ組織「アルカイダ」との関連が指摘されている。

 イラク問題において考えられる最悪・最大の「爆発」は国際社会の秩序の完全崩壊、世界規模での反米テロの続発とそれらに対する報復を含む様々な混乱だと私は考えている。そして「爆発」の「起爆剤」としては、世界中を自分たちが気に入る形に変えてしまおうとするような「民主化」を実現しようとしているどこかの超大国の「ネオコン」(→ネオコンサーバティブ(新保守主義))とかいう勢力の無視できない影響力、二重基準と呼ばれても仕方がない伝統的な米国のイスラエルに対する姿勢への積もりに積もった反発、そして解消が非常に困難な大きな貧富の格差と様々な社会的制約に対する中東の人たちの絶望感などが考えられる。また治安回復すら満足にできていない米国などによるイラクの占領・統治に決定的な不信感を抱かれるような何らかの事件が起こったり、何らかのきっかけにイラクには大量破壊兵器が存在しなかったのではないかと世界中の大多数の人たちが考えるような事態に至ったり、あるいは米国などに対する何らかの大規模なテロが続発する、イスラエルとパレスチナの中東和平交渉がまた失敗に終わってしまう、などといったことが「爆発」の「口火」になるだろうと私は考えている。

 いくら何でもそう簡単に国際社会の秩序が完全崩壊してしまうようなことはないだろうと私も楽観的に考えていたいが、もしも一気にすべてに火が付くようなことがあるのならば何かのはずみに国際社会の秩序が完全崩壊してしまう可能性もゼロではないだろう。「爆発」の危険性を少しでも減らすこと、そして万一「爆発」してしまった場合でも被害を最小限に食い止める「風穴」にすることを意識しながら私は国際社会の秩序の崩壊を避けるために、あくまでもイラク問題は「国際社会とイラクの間の問題」であって間違っても米国とイラクの間の問題などではないこと(→参考:2003/3/10号etc.)、米国などによるイラク攻撃開始後は国際社会の枠組みを守ることを何よりも優先して国際社会は米国などの行動を事後承認して「名」を捨てて「実」を取るべき(→参考:2003/3/22号etc.)などと繰り返し主張してきた。残念ながら現実は「爆発」の可能性が高い方向にどんどん進んで行き詰まってきているように見えるが、それでも絶望してしまうのはまだ早いと私は思っている。

 今もまだ諦めずに新たな「風穴」を開けるためには、国際社会全体、中でも特に米国が真の意味で早急に「国際化」する必要があると訴え続けることが必要ではないかと私は考えている(→参考:2003/3/22号)。念のために繰り返しておくが、ここで言う「国際化」とは、米国基準を世界標準として採用して地球上のすべてで徹底させるなどというようなことでは断じてなく、多様性を残しながらも地球上のすべての場所を「自分はちょっと嫌だけれども、もしかしたらそういう生活、そういう社会もあるのかもしれないな」と思うことができる程度にまで変えていくということを意味している。さらにあくまでも念のために言っておくと、国民からあらゆる自由を奪った上で飢えさせたり理不尽なことで虐待したり殺したりするようなアジアのどこかの非人道的な独裁国家とか、まさに報復が報復を呼んでいる終わりのない無差別な殺し合いが続いている中東のある地域とか、銃などを突き付けられて命を含めた持っているすべての物が簡単に奪われてしまうような略奪が横行する「純粋に力だけが支配する場所」になり果てた社会、などは間違いなく最優先で「国際化」されるべきであると私は考えている。

 賢明な大多数の米国民は世界には米国流とは違うたくさんの幸せな生活があるということにすぐに気付くだろうし、戦闘で圧倒的な勝利を収めた米国でさえもイラクの占領・統治では略奪の防止・治安回復という面で手痛い敗北を続けている現実を直視すれば、致命的な勘違いに基づいて世界中のあちこちで「銅像」を倒したがっている人たちの言うことをまともに受け止めてとにかく「銅像」を倒しさえすれば「民主化」されて多くの人々は幸せになれるなどとは間違っても考えないだろうと私は信じている。新たな有効な「風穴」を開けることができるかどうかは偉大な米国の民主主義が十分に機能するかどうかにかかっていると私は見ている。新たな有効な「風穴」は米国の民主主義だと言い換えた方がいいのかもしれない。そして以前から繰り返しているが、イラクの問題を考えるときはイラクのことだけを考えず、国際社会全体の利益を考えていかなくてはならないはずである。今こそあたかも頭の中で地球儀を回すように思考を「国際化」する必要があると私は考えている。

国際社会は北朝鮮の人道上の問題を看過できないはず

 次に北朝鮮情勢についてである。北朝鮮による核兵器開発・保有・拡散などの実態は相変わらず不明であり、前回から現時点(6/1)までの間に事態の性質を大きく変化させるような本質的な動きはまだ何も起こっていない。ただ北朝鮮に対する国際社会の対応についてはやや変化があった。

 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が米国を訪問してホワイトハウスでブッシュ大統領と初の首脳会談(5/15)を行った。米韓両国は北朝鮮の核兵器開発問題を平和的に解決するという基本方針では一致したが、米国は武力行使の選択肢を排除しなかったという。韓国は10万トンごとに住民の手に渡っているかの確認作業をしつつ北朝鮮に対して合計40万トンのコメ支援を行うことを決定(5/23)した。また中国の胡錦濤・国家主席がロシアを訪問してプーチン大統領と首脳会談(5/27)を行い、北朝鮮の核兵器開発問題を平和的に解決することなどで一致した。なお米国の超党派の議員団が北朝鮮を訪問(5/30)したという。

 小泉純一郎首相も米国を訪問してテキサス州クロフォードの大統領の別荘でブッシュ大統領と首脳会談(5/23)を行った。日米両国は北朝鮮が核兵器開発問題をエスカレートさせた場合には脅迫に屈せずに強硬措置を講じることで一致した。ブッシュ大統領は首脳会談後の記者会見で北朝鮮による日本人拉致の完全解明まで支持し続けることを表明した。また北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が6/9にも新潟西港に入港することが明らかになり、日本政府は現行法の範囲内で同船に対する警戒・検査等を強化する方針である。さらに北朝鮮の重要な資金源となっている麻薬密輸などの取り締まりも国際的に強化される方向になっている。そして小泉首相はロシア・サンクトペテルブルクでプーチン大統領(5/30)、胡錦濤・国家主席(5/31)とそれぞれ首脳会談を行った(→日ロ首脳会談では北朝鮮問題に触れず?。日中首脳会談では北朝鮮の核兵器開発問題の平和的解決での連携を確認、中国も拉致事件での日本の立場を支持)。現時点(6/1)ではフランス・エビアンで6/1から始まる主要国首脳会議(エビアン・サミット)、そして6/7に予定されている日韓首脳会談で北朝鮮による核兵器開発問題や拉致問題などでどのような合意がなされるのかなされないのかは分からないが、残念ながら一連の北朝鮮問題の本質的な解決までにはまだまだ時間がかかりそうな情勢である。

 北朝鮮による核兵器開発・保有・拡散は断じて認められないということは国際社会の総意であると言い切ってもいいが、残念ながら国際社会はそうした望ましくない現実を阻止することができずにただ徒に時間だけが経過しているというのが客観的な状況である。また北朝鮮による日本人拉致問題の国際的な理解が広がり、北朝鮮による麻薬密輸などの各種の非合法活動に対する国際的な包囲網も強まる傾向になり始めているのは望ましい状況だし、日本政府が「対話か圧力か」ではなく「対話と圧力」によって北朝鮮問題の平和的な解決を目指しているという方向性も私は基本的に評価している(→参考:2003/4/30号etc.)が、それでも一連の北朝鮮問題の本質的な解決までにはまだまだ遠い。こうした状況をただ黙って見ているしかないことに無力感を感じているのは私だけではないはずである。このままではいつどんな形で「爆発」が起こるか分かったものではない。

 北朝鮮問題における最悪・最大の「爆発」は、北朝鮮が引き起こすかどうかはともかくとしても、とにかく戦争が起こって朝鮮半島や日本を含む極東に非常に大きな被害が生じること、そして北朝鮮の現体制の無秩序な「崩壊」であると私は考えている。また「口火」としては、北朝鮮による使用済み核燃料棒の再処理開始が確認されること、ミサイル実験や核実験が実施されること、あくまでも北朝鮮が核放棄と体制保証の交換に固執し続けること、など考えられることは非常にたくさんある。さらに「起爆剤」としては、北朝鮮を脱出した大量の「脱北者」の存在、飢餓を含めた様々な形で北朝鮮国内で抑圧されたり、人権を蹂躙され続けている多くの人たちの存在、などの数々の人道上の問題を挙げることができると私は考えている。北朝鮮の問題を「対話を通じて平和的に解決する」ことを目指していれば大丈夫だと楽観的に考えることは非常に危険だと私は考え始めている。仮に人道上の問題を背景にした予想外の形で北朝鮮が突然「崩壊」した場合には無政府状態になって略奪などが横行したイラクの悲劇よりもはるかに大きな悲劇が現実のものになるかもしれない。最悪の場合は、麻薬を含めた大量の各種非合法物質はもちろんのこと、北朝鮮に存在していることが確実な大量破壊兵器、核関連物質、さらには絶望して失う物は何もないと考えている人間たちも大量に流出・拡散する可能性がある。念のために言っておくと、北朝鮮に「体制保証」などをしても人道上の問題を背景にした突然「崩壊」を防ぐことはできないはずである。国際社会は北朝鮮における数々の人道上の問題にももっと大きな関心を持つべきではないかと私は考えている。

 こうした状況に有効な「風穴」を開けるためにも、日本は北朝鮮に対して「このままでは日朝平壌宣言を破棄せざるを得なくなる」と強く警告して北朝鮮が日本と急いで話し合わなくてはならない積極的な動機を作り出すべきだし(→参考:2003/4/30号)、拉致被害者とその家族を含めた北朝鮮国内にいるすべての日本人と日本にゆかりのある人たちの人権などを守るために「在北朝鮮日本人総連合会」(仮称、略称:「日本総連」)を設立し、「日本総連」の独自の検証手段とセットにした食糧支援を含めた北朝鮮国内での自由な活動を認めるように強く要求すべき(→参考:2002/12/11号etc.)であるということを改めて主張しておくことにする。そして日本国内で「日本総連日本支部」を先行して設立するなどし、決定から1-2日以内に実際に北朝鮮国内で各支部を設立して活動開始できるような十分な態勢を早急に整えておくべきではないかとも思っている。末端の一人ひとりに食糧が行き渡らないような食糧支援は有害無益だと私も考えているが、だからと言って人道上の問題を看過するようなことはできない。北朝鮮で人道上の問題を背景にした突然「崩壊」が起こらなかったとしても、このままでは最悪の場合には飢餓という形を利用して北朝鮮が金正日体制に不満を持つ人たちから順番に「粛正」を行うことを黙認するということにもなりかねない。今だからこそあえて日本人が北朝鮮各地でお粥や雑炊などを作りながら日本人ら探すための活動などを行うことに全面的な協力をするように北朝鮮側に強く要求すべきだと私は考えている。日本は(1)国際社会の秩序を維持し、(2)将来世代に対する責任を十分に果たし、(3)日本人らを守り、(4)日本人らを救い、(5)日本の国土を守るためにはできることはすべてやる覚悟を持ち、これらの目的を達成するために北朝鮮の対応に応じて「アメ」にも「ムチ」にもなる「両面政策」を採用すべき (→参考:2003/1/13号)などという私の主張の根幹部分は変わらないということも最後に改めて強調しておくことにする。

小泉降ろしは「口火」、民主党は「起爆剤」

 疑惑や不祥事以外の日本の政治情勢についても簡単に触れておく。今国会の重要法案である有事関連法案の審議は民主党の対案提出(4/30)後、自民党と民主党による電撃的な修正合意(5/13)、衆院通過(5/15)と電光石火のスピードで進み、会期内(6/18)の成立がほぼ確実視されている。もう一つの重要法案である政府が修正・再提出した個人情報保護関連法も昨年の状況(→参考:2002/4/21(2)号、2002/4/29号etc.)とは一変して混乱なくあっさりと成立(5/23)した。個人的にちょっとした因縁があるこの法律についてひとこと付け加えておく。何にしてもこれで民間部門の無法状態が解消されたことだけは間違いないということ、個人がその人らしく生きるために個人情報は実効性のある形で正しく保護されなければならないということをあえてここで強調しておくことにする。

 また金融危機かどうかは別にしても、政府が預金保険法に基づく金融危機対応会議を開いてりそな銀行に対する公的資金投入を決定(5/17)するなど経済情勢も相変わらず芳しくない。そして例によって例のごとく、経済政策の大転換や9月の自民党総裁選と絡めた「ポスト小泉」を模索する動き、白紙に戻った民主党と自由党の合流問題(5/26)の波紋、その他の解散・総選挙を視野に入れた動きなど、良く言えば「政局」、悪く言えば本質的な意味での問題解決とは全く無関係の「混乱」が今後もさらに強まっていく可能性が非常に高い情勢になっている。いくら難問が山積しても日本の政治はお世辞にも十分機能しているとは言えない状態のまま変わろうとする気配すらも感じられない。

 日本の政治での最悪・最大の「爆発」とは、異常な状態がすっかり定着してしまっている日本の政治がそう遠くないうちに完全な機能不全の状態に陥って日本国民がさらに不幸になることだと私は考えている。そして「口火」になるのは、例えば「小泉降ろし」の動きであり、ほぼ確実に「起爆剤」として作用するのは、相変わらず主義・主張が完全にバラバラである野党第一党の民主党であると考えている。さらに日本の政治における現時点で考えられる唯一の「風穴」は、有権者にとって魅力的な候補者が存在する状態で何度か選挙を繰り返すという正攻法以外にはないのかもしれない。

 もしもいわゆる抵抗勢力などが小泉首相を何らかの形で引きずり降ろす場合には、小泉首相にわずかな望みを繋いでいる無党派層と自民党を見限ることを一時保留してきた保守層が自民党を含む現在の与党から完全に離反することを覚悟しなくてはならない。そしてもしも小泉首相が改革を唱えて解散・総選挙などの形で徹底抗戦した場合には多くの国民の目には再び小泉首相が非常に輝いて見え、分裂か集団離党かはともかくとしても自民党も今の形を保てずに壊れていくだろう。さらに抵抗勢力と縁を切った小泉首相が再び輝いて見えるときには、主義・主張が完全にバラバラの民主党は完全に求心力を失い、空中分解してせいぜい政界再編などの「起爆剤」として作用することになるだけだろう。もちろん今の話は日本の政治が政界再編をきっかけに自力再建できるという最も楽観的な見通しに基づいたケースであり、現実的には日本の政治が今よりもずっとひどい混乱状態に陥る可能性の方が高いだろう。上手く政界再編などを進めれば日本の政治を正常に近い形に戻すことは不可能ではないのだろうが、最悪の場合に日本国民がどんな形でどの程度不幸になるのかを正確に予測することはできないのでリスクがあまりにも大きすぎると私は判断している。いずれにしても現時点においては「ポスト小泉」は事実上存在せず、また政権交代も不可能な状態だと断言しても構わない。

 主義・主張が完全にバラバラな野党第一党の民主党は相変わらず問題を先送りばかりしている。私は有事関連法案で民主党から造反が出なかったのは、対案の提出が大幅に遅れた一方であっという間に自民党との修正協議で合意し、造反の動きが出てくる前に超スピード可決されたからに過ぎないと見ている。有事関連法案では民主党は全く得点を挙げることができなかったとまでは言わないが、民主党が大きな実績を挙げたとはとても言えない状態であると私は考えている。もしも民主党の有事関連法案の対案がどんなに遅くとも予算案成立直後ぐらいに提出されていたのならば、分裂や造反はあったかもしれないが、もしかしたら有事関連法案は少なくとも民主党から見てもっとより良い形に修正されたかもしれないし、民主党に政権担当能力があるということを国民に実感させることができていたかもしれない。民主党は造反を封じ込めて主義・主張のバラバラさを覆い隠す代わりに大きなものを失ったのではないかと私は見ている。

 また期待していた国民がどれだけいたのかは定かではないが、民主党と自由党の合流構想はダラダラと結論を先送りしたあげく結局白紙に戻った。菅直人代表が熱心な政策合意を後回しにする野党共闘などと称したバカげた選挙協力にも、分裂を恐れずに政策の一致を含めた真の意味での一つの政党になろうという気が全くない民主党と自由党の合流構想にも私は全く意味がないと考えている。やはり分裂を恐れずに政策の一致に基づいた真の意味での一つの政党を本気で作ろうという気がなければ話にならないと考えている。民主党はまさかこの調子で政権交代も先送りしたり、白紙に戻すというつもりではあるまいが、時間が経過すればするほど、民主党の日本の政治における役割は政界再編などの「起爆剤」だけに限定されていく。

 やはり日本の政治における現時点で考えられる唯一の「風穴」は、有権者にとって魅力的な候補者が存在する状態で何度か選挙を繰り返すという正攻法以外にはないのかもしれない。選挙を繰り返して無能な政治家たち、政策の一致をないがしろにするいいかげんな政治家や政党を淘汰していくしかない。ちなみに小選挙区制度の下では小泉首相を小選挙区で落選させることができる候補者を立てられるぐらいの勢いがある政党・勢力でなければ政権交代は不可能だろう。また与党が野党から政権を守るということを明確にするためにも、あるいは有力な新党が形だけの野党第一党を押しのけて政権交代を実現するためにも、野党第一党の党首である民主党の菅代表を小選挙区で落選させることができる有力な候補者を少なくとも一つの政党が擁立することも必要不可欠である。いくら何でも電撃的に都知事を擁立しない限り絶対に勝てないというわけでもあるまい。小選挙区での事実上の不戦敗は政党の本気さが疑われる。有権者にとって魅力的な候補者が存在する状態で何度か選挙を繰り返すことができなければ、選挙でもやはり政治は変わらないとそう遠くない将来に何らかの形で「爆発」が起こるという最悪の事態にまた一歩近づくことになってしまう。

「出口」は未来にはあるはず

 くどいようだが、現時点でやるべきことをきちんとやっていれば少なくとも未来には「出口」が見つかるはずだと私は考え続けている。この文章が無能な政治家たちが終わりのない迷走を続けているとしか思えない「日本の政治」、完全に行き詰まってしまったかに見える「今という時代」というどうしようもない現状を打破するための「起爆剤」ではなく、有効な「風穴」になることを心から望んでいる。「日本の政治」や「今という時代」に有効な「風穴」を開けることさえできるのならば、いわゆる「蟻の一穴」などにはさらさらなる必要はないと考えている。「密閉系」か「開放系」かで爆発の危険性が大きく異なるという基本的な科学的知識は「日本の政治」や「今という時代」にも十分に適用できると私は判断している。「日本の政治」や「今という時代」に有効な「風穴」を開けるためには、最低でもそれらの本質を見抜き、その部分だけを十分な力強さを持って鋭く突き続けることができなければならない。「そういうことは既存のマスコミではできない」などと一部の政治家たちのような胡散臭いことを言うつもりはないが、現時点では既存のマスコミには有効な「風穴」を開ける能力以前にそうした危機意識すらもないと私は見なしている。

 世間知らずのくせに社会のほとんどすべてのものに不満を感じていて周囲からいったい何を考えているのか分からないと言われ続けた変わり者の少年は約20年前に未来に唯一の「出口」を見つけ、それから時間の流れよりもずっと速く「出口」を追い求めて一分一秒でも早く大人になりたくてなりたくて仕方がなくなった。やがていつの間にか「出口」のことをあまり意識しなくなったが、でも決して忘れることはできなかった。そして今、もしも20年後の未来があるとしたら、社会全体を変えることはできなくてもせめて自分が通過したところぐらいはより良く変えることができる「花咲爺」のような人間にでもなれたらいいかなと思い始めている。国際社会から危険極まりない「いい歳をした困っただだっ子」と見なされつつある「極東の非人道的な独裁国家の独裁者」にも未来に「出口」を見つけてなんとか完全に新しく生まれ変わってもらいたいものだと心から思いながら私はこの文章を書いている。繰り返すが、現時点でやるべきことをきちんとやっていれば少なくとも未来には「出口」が見つかるはずだと今も私は考え続けている。


核放棄と体制保証の交換は最低・最悪の結果を招く(2003/4/30)

 イラク戦争は米英軍などによる圧倒的なスピード勝利という形で事実上終結した。開戦(3/20)直後の前号(→2003/3/22号)からの展開は非常に速かった。特にバグダッド近郊の国際空港を米軍が制圧(4/4)してからバグダッドの中心部で歓声を上げている一部の住民たちに取り囲まれながら米軍車両がフセイン大統領の銅像を引き倒す「あの有名な映像」が流れるまでは驚くほどのスピードで戦況は動いた。そしてバグダッド陥落・フセイン政権の事実上の崩壊(4/9)後に米軍などはフセイン大統領の故郷・ティクリートも制圧(4/14)し、イラクのほぼすべての主要都市を抑えて大規模かつ組織的な戦闘は終結した。

 ところが米英軍は治安の維持まではとても手が回らなかったので無政府状態になったバグダッドを含めたイラク各地では戦闘終結後に大規模な略奪などが横行した。政府機関や各国大使館はおろか病院や博物館までもが略奪の対象になり、イラク国立博物館からは古代メソポタミア文明時代などの非常に貴重な文化財が大量に盗まれた。そして現時点(4/30)でも開戦の最大の理由となった大量破壊兵器は発見されていないし、フセイン大統領を含めた多くの前イラク政府高官は行方不明のままである(→ちなみにアジズ副首相(4/24)らの身柄は拘束)。時間が経過するにつれてイラク国内の反米感情が高まってきている。なお国際社会の焦点は既に米国などの主導で動き始めている暫定統治機構設立や復興支援の問題などでの国連の役割や関与の度合いに移っている。日本政府は米国のイラク復興人道支援室(ORHA)に4-5人の要員を派遣することを決定(4/18)した。そういう状況の中で小泉純一郎首相は欧州5カ国を訪問している(→イギリス、スペイン、フランス、ドイツ、ギリシャの5カ国。4/26-5/3までの予定)。

小泉首相は「幸運」のお裾分けを

 前号(→2003/3/22号)で米国などによるイラク攻撃を「条件付きで事後承認する決議」を国連安保理で採択することによって国際社会は「名を捨てて実を取るべきだ」などと主張したが、その主張は今も基本的には変わっていない。ただイラク戦争が米軍などの圧倒的なスピード勝利という結果に終わったことで国際社会が得ることができる「実」はかなり小さくなってしまったことは否めない。なぜ国際社会はもっと早く「事後承認」することができなかったのかとは思っているが、何にしても米国などのすべての行動は国際社会の名の下に行われなければならないという「原則」までもがすっかり変わってしまったというわけではないと私は考えている。

 国際社会は現実を踏まえて初期におけるイラクの復興支援や暫定統治の問題で米国が主導的な役割を果たすところまでは容認せざるを得ないが、そう遠くないうちに国連が明確に関与し、しかもその役割が時間の経過につれてどんどん大きくなっていかなくてはならないと私は考えている。さらに言えば、前イラク政府要人などの「戦争犯罪人」は軍事法廷などではなく国際社会も認める「国際法廷」で裁かれるべきであるということにも全く何の変化もないし、米国などには国連などによる大量破壊兵器の査察・廃棄の検証の再開や一般市民の犠牲の原因究明などにも全面的に協力してもらわなくてはならないということも不変である。時間が経てば経つほど米国などの行動を国際社会の枠組みに戻すために国際社会は米国などに向かってどんどん「枠」を大きく動かさなくてはいけなくなってしまうし、最悪の場合には事態が複雑になりすぎて国際社会の「枠」をはめることができなくなってしまうかもしれない。米国などの行動に国際社会の「枠」をはめることが国際社会にとって必要不可欠なことであり続けるのならば、「枠」をはめるのは早ければ早い方が良いはずである。イラク戦争開戦直後よりも状況は悪化しているが、現時点でも私はまだ諦めてはいない。

 それにしても小泉首相はやはり幸運な人だった。イラク戦争が米軍などの圧倒的な勝利に終わったので大きく突出して「支持」を表明した小泉首相は結果的に勝ち馬に乗ることができた。もしかすると小泉首相の米国への影響力と米国の小泉首相に対する信頼感はイラク戦争前よりもずっと大きくなったのかもしれない。多くの具体的な成果を上げるところまではあえて期待はしないが、小泉首相にはイラク戦争で大きな打撃を受けた国連を中心とする国際社会の秩序の維持とか国際協調態勢の再構築に貢献するなどという形で世界中のできるだけ多くの人たちに「幸運」をお裾分けしてあげてもらいたいものである。このまま米国などの行動が国際社会の枠組みの外に置かれたままの不正常な状態が続くのならば、イラク戦争は破壊・混乱・分裂・略奪などの「不幸」しかもたらさなかったという最悪の事態に陥りかねない。

 もちろん早急に「幸運」のお裾分けが必要な人たちはイラク以外にも世界中にたくさんいるはずである。例えば、極東の「非人道的な独裁国家」にもそういう人たちがたくさんいるはずである。たとえ戦争が事実上終結したとしてもイラク問題はあくまでも国際社会とイラクの間の問題であり、問題解決に当たってはイラクのことばかり考えていてはいけないということはやはり変わらないと私は考えている。最近の北朝鮮情勢だけを見ても今度こそ北朝鮮問題は国際社会全体にとって待ったなしの最優先課題になったはずだと私は思っている。

核放棄と体制保証の交換は最低・最悪の結果を招く

 北朝鮮の核兵器開発問題のその後についても触れておくことにする。日本は1998年の北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けて導入が決まった初の情報収集衛星の打ち上げに成功(3/28)した。北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)脱退が4/10で形式的には有効になることを受けて国連安保理が協議を行ったが北朝鮮を非難する議長声明などは見送り(4/9)になった(→北朝鮮のNPT脱退はまだ正式には確認されていないらしい)。そして日本と韓国を除いた米国、中国、北朝鮮の3カ国による協議が北京で開かれることが明らかに(4/16)なり、国連人権委は欧州連合(EU)の提出した北朝鮮の人権状況を厳しく非難して日本人などの拉致事件の解決を求めるなどの決議を採択(4/16)した。北朝鮮外務省による使用済み核燃料棒の再処理作業を既に開始したと受け取れる内容の談話が一時発表(4/18)されたことで開催が危ぶまれたが、米中朝3カ国の協議は予定通り行われ(4/23-4/25)、協議を終えた米国のケリー国務次官補が韓国(4/25)と日本(4/26)を訪問して内容を伝えた。現時点(4/30)では3カ国協議の詳細は不明だが、米国は北朝鮮に対して検証可能かつ不可逆的な方法での核兵器開発計画の放棄などを求めると共に日韓両国の協議参加や日本人拉致問題についても言及、一方の北朝鮮側は核放棄などの見返りに米国による体制保証などを求めることを基本にした「新提案」を行ったという。さらに北朝鮮が協議の場で核兵器保有を認める発言をしたことを受けて米国などは実際に保有しているかどうかを含めて情報の分析などをしているという。そうした新たな状況の中で盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領就任後初となる韓国と北朝鮮による南北閣僚級会談がピョンヤンで開かれた (4/27-4/29)が、核問題での韓国と北朝鮮の溝は埋まらなかった。

 北朝鮮の核兵器開発問題が深刻な状態になって久しい。そして北朝鮮が核兵器保有を認めてからは新たな段階に入ったと言えるだろう。いま非軍事的な手段を駆使して本気でこの問題の解決を目指さなければもはや手遅れになってしまうかもしれない。まさか国際社会は話し合いや交渉のための話し合いをしている間ならば北朝鮮による核兵器の開発・保有を容認するとでも言うのだろうか。私はそのようなことは断じて認められない。あらやる非軍事的な手段を駆使して少なくとも現状よりも悪化させない凍結した状態にしておかなくては話し合いや交渉は全く無意味なものになってしまいかねない。

 北朝鮮問題を論じる前に改めて確認しておかなければいけないことがいくつかある。まず最初に日本はもちろんのこと国際社会にとっても北朝鮮による核兵器の保有・開発は断じて認められず、そうした動きは躊躇することなく断固阻止しなくてはならない。もちろん北朝鮮によるミサイルや生物・化学兵器などのその他の大量破壊兵器の開発・保有、軍事独裁国家やテロリストへの大量破壊兵器の拡散は日本を含む国際社会にとって非常に大きな脅威である。そして念のために言っておくと、「国家テロ」とでも呼ぶべき各種の特殊工作や非合法活動と北朝鮮自身が完全に決別しなくてはならない。さらに北朝鮮による日本人などの拉致問題、北朝鮮国内の人権抑圧・蹂躙と食糧不足・飢餓の問題など、すべての人道上の問題も国際社会にとっては看過できない問題のはずである。北朝鮮の問題を考える場合には、核兵器など大量破壊兵器の放棄やテロとの完全決別だけではなく、特に人道上の問題の解消も見過ごされてはならないはずであると私は考えている。

 以上のようなことをしっかりと確認した上で、現在焦点になっている北朝鮮の核兵器などの放棄の見返りとして現在の金正日政権に体制保証を与えるなどという考え方を交渉や話し合いの場で採用することに私は強く反対する。そういう核放棄と体制保証の交換などという基本的な枠組みは結局のところは最低・最悪の結果を招くだけであると私は考えている。そう考える大きな理由は2つある。1つ目の大きな理由は、以前から主張しているように、もしも北朝鮮の要求を認めれば核兵器などをちらつかせて国際社会を脅迫して自らの主張・要求を受け入れさせようなどという新たな「勢力」の出現を助長しかねない悪しき先例になってしまうからである(→参考:2003/1/5号etc.)。2つ目の大きな理由は、核放棄などと体制保証などの交換という考え方は根本的な問題解決とか恒久的な平和の創造という観点から見れば「誤った処方箋」でしかないからである。そもそも「テロ」や「人道上の問題」で大きな懸念がある国家や体制を「保証」するなどという行為は、今まさに人権を蹂躙されている人たちを見捨てて将来も人権を蹂躙・抑圧される人たちが出てくることを容認するということを意味し、将来の世代に対してあまりにも無責任な行為であると私は考えている。

 核放棄と体制保証の交換などが「誤った処方箋」であるということはちょっと考えてみれば誰にでもすぐに分かることのはずである。つい最近も核兵器を持たなくても大量破壊兵器を持っている疑いが濃厚だった国家が大量破壊兵器を「大義名分」にして圧倒的な軍事力で攻撃されたばかりだし、テロと完全に決別しない国家や人権蹂躙などの人道上の問題のある国家も国際社会の承認を得るか得ないかは別にしても「歴史」を振り返れば「テロ」や「人道上の問題」という「大義名分」の下に圧倒的な軍事力で攻撃される可能性が高いことに気付くだろう。もしも核放棄などの見返りに体制保証などを与えてテロとの完全決別や人道上の問題の解消がどこかに飛んでいってしまったり軽視されたりするのならば、世界中で「北朝鮮でも銅像を倒す場面を見てみたい」などと言い出す人たちの数はますます増えて行き、万一彼らが軍事行動に踏み切る場合には「大義名分」を探すのに苦労はしないことだろう。核放棄などの見返りに体制保証などを与えるなどという考え方を採用することは、米国も北朝鮮もそう遠くない将来の「危機」に全く気付かないまま「危機」に向かってまっしぐらに突き進んでいくという航空機などの「コリジョンコース」(衝突経路)のような最悪の道を選択することになってしまうのではないかと私は考えている。

 北朝鮮には絶対に核放棄などをさせなければならないが、それに対しては何らの見返りも与えてはならない。どうしてもその一線だけは譲ってはならないと私は考えている。もちろん北朝鮮が核兵器など大量破壊兵器を放棄し、テロと完全に決別し、しかも人道上の問題を解消するために必要な行動を具体的な形で示すのならば、国際社会は北朝鮮を「国際社会の責任のある一員」として温かく迎えて必要な支援を惜しまないことだろう(→参考:2002/11/3号etc.)。北朝鮮が金正日総書記を中心とした体制の保証を望むのならば、最低でも核兵器など大量破壊兵器を完全に放棄し、テロと完全に決別し、しかも人道上の問題も解消された新しい国家に生まれ変わるしか選択肢はないはずである。

 いまだに「禁句」になっているのかもしれないが(→参考:2002/1/211号)、北朝鮮は荒唐無稽さや不可解さにおいて日本のカルト宗教のオウム真理教に非常に似ていると私は思っている。仮に「オウムのような」という表現に問題があると言うのならば、中国の作家・魯迅の「阿Q正伝」に出てくる阿Qをはるかに上回る「訳の分からない屁理屈が得意な困った国家」だと思っている、と言い換えてもいい。いずれにしても金正日総書記を頂点とする北朝鮮は国際社会では通用しない荒唐無稽さや不可解さと決別した完全な別人に生まれ変わらなければ体制が保証されてもされなくても国際社会の中で生き残ることは不可能であると私は考えている。

「このままでは日朝平壌宣言を破棄せざるを得なくなる」

 北朝鮮の核兵器開発・保有問題の緊迫化を受けても、日本は(1)国際社会の秩序を維持し、(2)将来世代に対する責任を十分に果たし、(3)日本人らを守り、(4)日本人らを救い、(5)日本の国土を守るためにはできることはすべてやる覚悟を持ち、これらの目的を達成するために北朝鮮の対応に応じて「アメ」にも「ムチ」にもなる「両面政策」を採用すべき (→参考:2003/1/13号)だという私の主張は基本的には変わらない。今あえて日本人が北朝鮮各地でお粥や雑炊などを作りながら日本人拉致被害者を含めた日本人ら探すための活動などを行うことに全面的な協力をするように北朝鮮側に要求すべき(→参考:2002/12/11号,2003/1/5号,2003/3/10号)だという主張も変わらない。ただ今こそ日本は新たに大きな決断をしなければならないとも私は考えている。あくまでも念のために言っておくと、いかなる事態になっても日本の「本音」は北朝鮮を国際社会の責任のある一員にして国際社会に迎え入れることを強く望んでいるということである。

 小泉純一郎首相、日本政府は北朝鮮の金正日総書記に対して、北朝鮮による核兵器開発・保有問題や拉致被害者家族の帰国問題を含めた日本人拉致問題での一連の不誠実かつ挑発的な対応は一方的に日本及び日本人の安全を脅かすものであり、日朝平壌宣言の効力は既に「凍結」された状態にあるという現状をあえて「確認」し、「このままでは日朝平壌宣言を破棄せざるを得なくなる」などと警告を発して北朝鮮に対応の変化を強く求める声明を早急に出すべきである。金正日総書記自身が署名して北朝鮮のマスコミでも大々的に取り上げられて切手にまでなった日朝平壌宣言が今まさに暴走を続ける北朝鮮自身の責任によって葬り去られようとしているという現状をしっかりと「確認」しておく必要はあるが、現時点で日本側から「破棄」する必要はないだろう。「このままでは日朝平壌宣言を破棄せざるを得なくなる」ということを日本が声明という明確な形で「確認」すれば、北朝鮮には日本と話し合わなくてはならない差し迫った大きな動機ができるはずである。念のために言っておくと、日朝平壌宣言がひとたび「凍結」されたり、「破棄」されたとしても、将来「再確認」されることも含めて日本と北朝鮮の交渉の「土台」となる外交文書としての重要性は不変である。そして万一「再確認」などがされる場合には北朝鮮による日本人拉致や工作船の問題を明記することも容易になるはずである。

 日朝平壌宣言の「凍結」確認声明以外にも、北朝鮮を日本の方に振り向かせるために必要なこと、日本人らと日本の国土を守るために必要なことは何でも積極的に検討し、できることはすぐにやっておくべきである。北朝鮮の核兵器保有発言によって核疑惑自体は言い逃れの許されない確固たる「疑惑」になったわけだから、日本は北朝鮮に対して国際原子力機関(IAEA)などによる強力な権限を持った十分な査察を即刻受け入れることを強く要求すべきである。査察によって核兵器保有の有無をハッキリさせた上で北朝鮮が核兵器の開発・保有を検証可能かつ不可逆的な形で完全に放棄しない限り日朝平壌宣言は破棄せざるを得なくなる。また工作船や工作員などの潜入をけん制・阻止する目的で十分な量の最新鋭の無人偵察機とその運用ノウハウ、ミサイル攻撃をけん制・阻止する目的で最新鋭の迎撃ミサイルシステムを必要なときにすぐに「リース」するという形で在日米軍から提供を受けることができるように日本は本気で米国と交渉を進めておくべきだし(→参考:2003/3/10号)、北朝鮮へのすべての人、物、カネ、船などの流れを止めるために必要な法整備も積極的に進めておくべきである。さらに日朝平壌宣言の「凍結」確認声明を出さざるを得なくなった日本の立場を米国、韓国、中国、ロシアなどを含む国際社会に十分に説明しておくことも必要である。特に韓国とは「米・中朝」協議なのか「米中・朝」協議なのかはよく分からないが、日韓両国が場外から米国を側面支援したり、現在の米中朝3カ国の協議に日韓両国が早期に加わるためにも、日朝平壌宣言の「凍結」確認声明後の両国の緊密な連携、さらにやむを得ず「破棄」に至った後の対応などについて十分に協議をしておく必要があると私は考えている(→参考:2003/1/12号etc.)。日本はやるべきことをしっかりとやった上で北朝鮮に対して話し合いの窓口を大きく開けて待っていればいいと私は考えている。

 ちなみに国際社会に日本の「本音」が十分に理解されれば、日本などが北朝鮮に対して経済制裁などを行う場合には、たとえ事前の約束などがなくても、中国が麻薬密輸対策の徹底とか新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ)の感染防止対策などを名目に「以心伝心」で何らかの行動を起こす可能性が非常に高いと私は見ている。今年3月にパイプライン修理の名目で中国が北朝鮮への原油提供を3日間ストップしたらしいことや瀋陽の日本総領事館事件(→参考:2002/5/19号)以降の中国の姿勢を見れば十分にあり得る話である。

 今回具体的に挙げた対策が必ずしも「強硬策」だとは私は考えていないが、中にはこれらの対策に非常に慎重な意見を持つ人たちもいることだろう。しかし改めて考えてみるまでもなくどんな「強硬策」も戦争という最低・最悪の事態と比べたらはるかにましである。そしてもちろん「強硬策」には北朝鮮を国際社会の責任のある一員にして国際社会に迎え入れる、そのために支援が必要ならばそれも惜しまないという「本音」もセットで示しておく必要がある。主張すべきことを主張しなかったとしても、主張すべきことを主張したとしても、問題が解決するとは限らないのならば、相手の考えを変えることを目指してあくまでも最後まで主張すべきことを主張すべきであると私は考えている。今回の主張は核兵器の開発・保有を含めた数々の北朝鮮についての問題の根本的な解決と恒久的な平和の創造に向けた私なりの強い意思表示だということも付け加えておくことにする。

 どこかの超大国にいる「ネオコン」(→ネオコンサーバティブ(新保守主義))とかいう人たちの考える「民主化」は私や世界の多くの人たちの考えるものとはかなり違うようだし、民主主義はおろか人権も保障されていないような「非人道的な独裁国家」までもが「民主主義人民共和国」と名乗っているようなこともあるから安易に「民主主義」とか「民主化」とか「人権」という言葉を使うのは避けようと私は思っている。日本は日本の国土を守り、日本人の生命を守るために必要なことは何でもやる覚悟を持たなくてはいけないし、そういうことはどの国でも同じはずである。そういう国々が共存を目指すことが国際化であり、共存を目指した国々の集まりが国際社会であると私は考えている。断じて世界中を自分たちの気に入るようなものだけにすることが国際化ではない(→参考:2003/3/10号)。

「敗北」した民主党には「総括」が必要

 最後に前回以降の永田町関係の動きについても簡単に触れておくことにする。2003年度予算が成立(3/28)した後、数々の秘書の問題を受けて大島理森農水相が辞任(3/31)、後任には亀井善之氏が就任した。保守新党の松浪健四郎代議士(大阪19区選出)が暴力団関係者の実質的に経営する会社に私設秘書給与を肩代わりさせていたことなどが明らかに(4/15)なり、進退問題が注目されている。そして統一地方選の前半戦(→4/13投・開票。東京・神奈川・北海道など11知事選(うち鳥取は無投票)、札幌・静岡市長選、茨城・東京・沖縄を除いた44道府県議選・12政令市長選など。なお札幌市長選は有効得票総数の1/4(25%)の法定得票数を獲得する候補がなく再選挙に)、衆参統一補選(→4/27投・開票。衆院東京6区・茨城7区・山梨3区補選、参院茨城選挙区補選)と統一地方選後半戦(→多くは4/27投・開票。東京特別区長・区議選、市長・市議選、町村長・町村議選)がようやく終わった。「結論」が分かりきっているいつものスキャンダルなどのくだらない話は全く論じるに値しないが、自分たちが小泉首相や自民党などに行った厳しい批判が次々と自分たち自身に具体的な形で跳ね返ってきている野党第一党・民主党についてはある程度触れておく必要がある。

 菅直人代表が地元で独自候補擁立の「公約」を守れなかった東京都知事選では樋口恵子氏を推したものの約308万票を獲得して再選された石原慎太郎知事に大敗(→参考:2003/3/10号)、また民主党の勢力が強い地域の一つである北海道知事選でも与党側の推す高橋はるみ氏に前民主党代議士の鉢呂吉雄氏が競り負け、さらに政権交代を占うとされている衆参統一補選も1勝3敗(→故・石井紘基民主党代議士の死去に伴う東京6区補選の小宮山洋子氏(前民主党参院議員)だけ。残りは不戦敗。ちなみに与党側候補は3勝1敗)という客観的に見れば「無惨な結果」に終わった。旧社会党のような政権交代が名実共に不可能であった野党第一党ならば「公認候補はすべて当選したから全勝。決して負け越しではない」などという類の「屁理屈」も通用したのかもしれないが、仮にも民主党が政権交代を目指す政党だというのならばいかなる言い訳も「屁理屈」も全く通用しない完全な敗北であると私は考えている。ちなみに鳩山由紀夫代表当時の昨年秋の衆参統一補選(10/27投・開票)では野党側の1勝6敗(→与党側の5勝2敗、その他の勢力の1勝)という選挙結果だった(→参考:2002/11/3号)。代表選直後の昨年秋と比べれば十二分すぎるほどの準備期間もあったわけだから代表を鳩山氏から菅氏に交代させるときに用いられた「選挙で勝てる」などという最大の「大義名分」は完全に失われたことは明白であろう。「敗北」した民主党には「総括」が必要である。

 また民主党のもう一つの大きな「公約」である政府・与党の有事関連法案の対案として緊急事態基本法案と政府・与党案の修正案がようやく4/30に衆院に提出された(→参考:2003/2/11号)。本来ならば言うまでもないことだが、単なる対案の提出ではなく、有事関連法案の審議・採決で主義・主張が完全にバラバラではない本当の意味での一つの政党としての一致した具体的な行動などが伴わなければ国民に対して「公約」を守ったことにはならないはずである。

 さらに統一地方選も終わったのだから民主党は自由党との合流問題の結論も出さなければならないはずである。合流問題の結論が今の野党同士の「談合」である「野党共闘」のような単なる選挙協力程度のものに終わるのならば全く意味はなく、政権交代は不可能であるということは以前から私は繰り返し主張している(→参考:2003/2/11号etc.)。

 いずれにしても民主党には待ったなしで「総括」しなければならないことがこれから次々と出てくることになる。現状では野党第一党・民主党の存在こそが政権交代の最大の障害になっており、日本の政治の現状を大きく打開したり、政権交代を実現するためには、与党内の「抵抗勢力」の中の現在に対しても将来に対しても全く無責任な政治家たち、菅直人民主党代表と彼を「首相候補」として担いでいる政治家たちを言論と選挙という民主的なプロセスを通じて永田町周辺から追放することから始めなくてはならないという私が以前から主張し続けていることが永田町の常識になっていくのかどうかということについて引き続き注目している(→参考:2003/3/22号etc.)。


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